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二章
変化
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それからというもの、私は色々な種類の花を王妃陛下の元へ持って行った。
陛下は毎回のようにツンケンした態度ではあるが、なんだかんだ受け取ってくれる。
(もしかすると、本当はそれほど悪い人ではないのかもしれない……)
それに何だか以前より私を見る目に冷たさが無くなったような気もする。
ほんの少しだけ、私の勘違いかもしれないが。
(まぁ、それだけでも大きな変化よね!)
前世での王妃陛下の私に対する姿を知っているからか、未だに信じられない自分がいる。
どれだけ歩み寄っても冷たくあしらわれるだけだったから。
(何だか今世は仲良くなれそうな気がするわ!)
そして私は今日も花束を手に、王宮へと向かう。
あれから一週間に一回は王妃陛下の元へ行っている。
元々お父様が私のやることに口出しすることはほとんど無いし、嬉しいことに使用人たちも応援してくれている。
「行ってくるわ、みんな!」
「いってらっしゃいませ、お嬢様」
「今日こそは王妃陛下が御心を開いてくれるといいですね」
「ええ、そうね」
私は花束を片手にフルール公爵家の馬車へと乗り込んだ。
(そういえば、これどういう花なんだろう……ミリアに聞いてくるの忘れちゃった)
私が今手に持っている花は綺麗な薄い紫色の花だが、名前は知らない。
王妃陛下の瞳の色に何だか似ている気がして、パッと見で選んできたのだ。
(でも見れば見るほど本当にそっくりだわ……)
王妃陛下は元々美しい人だ。
国王陛下との婚約が決まる前は国内外の貴公子たちから縁談を申し込まれていたという。
輝く金髪も、美しい紫色の瞳も陛下の美しさを際立たせている。
(貴方の瞳の色に似ていたので贈りたいと思いました……って何だか愛の告白してるみたいね)
私は馬車の中で一人クスクスと笑った。
***
「フルール公爵令嬢、お久しぶりです」
「まぁ、お久しぶりです。マルクさん」
王宮に着くと、殿下の侍従であるマルクさんが出迎えてくれた。
「本日は殿下が執務でいらっしゃれないので、代わりに私が王妃陛下の元までご案内いたします」
「ありがとうございます、助かります」
殿下はどうやら執務に追われているらしい。
彼に会えないのは残念だったが、こればかりは仕方が無い。
そのことで私が落ち込んでいることに気付いたのか、マルクさんがそっと耳打ちした。
「ご安心を。殿下もフルール公爵令嬢に会えなくて寂しがっておりますよ」
「まぁ、そんな……」
からかうのはやめてほしい。
殿下からの愛が重いということは十分知っているが、他者にそんなことを言われると何だか恥ずかしくなる。
「さぁ、王妃陛下の元へ行きましょう」
「はい、よろしくお願いします」
冗談を言った後、私たちは気を取り直して陛下の元へと向かった。
***
「王妃陛下!お久しぶりでございます!」
「……」
こうして定期的にやって来る私を見た陛下が呆れたような顔をした。
「いつまでそんなことをしているつもりなの。妃教育はどうしているのかしら?」
「ついこの間のテスト満点だったのでご心配なく!」
「……」
妃教育は既に前世で終えているため、今世ではわざわざ勉強する必要が無い。
その分他のことに時間をかけれるため、あのとき勉強を頑張って良かったなと今になって思った。
「えへへ、今日の花束は特別ですよ!」
「……特別?」
王妃陛下が怪訝そうに眉をひそめた。
(ふふふ、陛下どんな反応してくれるかしら)
私は背中に隠していた花束を前に出した。
「このお花、王妃陛下の瞳の色に似ていると思いませんか?私はこの花を見たら王妃陛下の姿が浮かんできて……」
そう言いながらチラリと陛下の反応を見た私は、思わず言葉を止めた。
「……」
王妃陛下の目が、丸く見開かれていたのだ。
差し出した花と同じ色の瞳は大きく揺れていて、今にも涙が零れてきそうなほどに潤んでいた。
(……動揺してる?)
ティーカップを持つ指先は僅かに震えていて、明らかにいつもと様子が違った。
「……あの、陛下?」
気に障っただろうかと不安になり、声を掛けたそのとき、王妃陛下がボソリと呟いた。
「……マーク」
陛下は毎回のようにツンケンした態度ではあるが、なんだかんだ受け取ってくれる。
(もしかすると、本当はそれほど悪い人ではないのかもしれない……)
それに何だか以前より私を見る目に冷たさが無くなったような気もする。
ほんの少しだけ、私の勘違いかもしれないが。
(まぁ、それだけでも大きな変化よね!)
前世での王妃陛下の私に対する姿を知っているからか、未だに信じられない自分がいる。
どれだけ歩み寄っても冷たくあしらわれるだけだったから。
(何だか今世は仲良くなれそうな気がするわ!)
そして私は今日も花束を手に、王宮へと向かう。
あれから一週間に一回は王妃陛下の元へ行っている。
元々お父様が私のやることに口出しすることはほとんど無いし、嬉しいことに使用人たちも応援してくれている。
「行ってくるわ、みんな!」
「いってらっしゃいませ、お嬢様」
「今日こそは王妃陛下が御心を開いてくれるといいですね」
「ええ、そうね」
私は花束を片手にフルール公爵家の馬車へと乗り込んだ。
(そういえば、これどういう花なんだろう……ミリアに聞いてくるの忘れちゃった)
私が今手に持っている花は綺麗な薄い紫色の花だが、名前は知らない。
王妃陛下の瞳の色に何だか似ている気がして、パッと見で選んできたのだ。
(でも見れば見るほど本当にそっくりだわ……)
王妃陛下は元々美しい人だ。
国王陛下との婚約が決まる前は国内外の貴公子たちから縁談を申し込まれていたという。
輝く金髪も、美しい紫色の瞳も陛下の美しさを際立たせている。
(貴方の瞳の色に似ていたので贈りたいと思いました……って何だか愛の告白してるみたいね)
私は馬車の中で一人クスクスと笑った。
***
「フルール公爵令嬢、お久しぶりです」
「まぁ、お久しぶりです。マルクさん」
王宮に着くと、殿下の侍従であるマルクさんが出迎えてくれた。
「本日は殿下が執務でいらっしゃれないので、代わりに私が王妃陛下の元までご案内いたします」
「ありがとうございます、助かります」
殿下はどうやら執務に追われているらしい。
彼に会えないのは残念だったが、こればかりは仕方が無い。
そのことで私が落ち込んでいることに気付いたのか、マルクさんがそっと耳打ちした。
「ご安心を。殿下もフルール公爵令嬢に会えなくて寂しがっておりますよ」
「まぁ、そんな……」
からかうのはやめてほしい。
殿下からの愛が重いということは十分知っているが、他者にそんなことを言われると何だか恥ずかしくなる。
「さぁ、王妃陛下の元へ行きましょう」
「はい、よろしくお願いします」
冗談を言った後、私たちは気を取り直して陛下の元へと向かった。
***
「王妃陛下!お久しぶりでございます!」
「……」
こうして定期的にやって来る私を見た陛下が呆れたような顔をした。
「いつまでそんなことをしているつもりなの。妃教育はどうしているのかしら?」
「ついこの間のテスト満点だったのでご心配なく!」
「……」
妃教育は既に前世で終えているため、今世ではわざわざ勉強する必要が無い。
その分他のことに時間をかけれるため、あのとき勉強を頑張って良かったなと今になって思った。
「えへへ、今日の花束は特別ですよ!」
「……特別?」
王妃陛下が怪訝そうに眉をひそめた。
(ふふふ、陛下どんな反応してくれるかしら)
私は背中に隠していた花束を前に出した。
「このお花、王妃陛下の瞳の色に似ていると思いませんか?私はこの花を見たら王妃陛下の姿が浮かんできて……」
そう言いながらチラリと陛下の反応を見た私は、思わず言葉を止めた。
「……」
王妃陛下の目が、丸く見開かれていたのだ。
差し出した花と同じ色の瞳は大きく揺れていて、今にも涙が零れてきそうなほどに潤んでいた。
(……動揺してる?)
ティーカップを持つ指先は僅かに震えていて、明らかにいつもと様子が違った。
「……あの、陛下?」
気に障っただろうかと不安になり、声を掛けたそのとき、王妃陛下がボソリと呟いた。
「……マーク」
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