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二章

親睦

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「王妃陛下!今日も陛下に渡したいものがあってここまで来ました!」
「……貴方何回目よ。しつこいわね」


あの日からというもの、私は王宮へ訪れるたびに王妃陛下の元へ行き自らの手で選んだ花を贈っていた。
王妃陛下は当然不快そうな顔をするものの、最初のように受け取るのを拒否するということは無かった。
もしかすると、少しは心を開いてもらえているのかもしれない。


(今日の花はラッピングまで私がやったんだから!)


私は背に隠していた花を前に出した。


「陛下にプレゼントです」
「ふん、王宮へ来るたびにこんなものを持って来るだなんて相当暇なようね」
「お気に召されませんでしたか?それなら家に帰って捨てるしか……」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」


”捨てる”というワードを出した途端王妃陛下は慌てたように私を止めに入った。
やはり花が捨てられるというのは耐えられないらしい。


(間違いないわね、王妃陛下は花が好きよ。それも相当だわ)


私の憶測は間違っていなかったようだ。


「ほら、早くこっちに持ってきなさい」
「はい、陛下」


相変わらず棘のある言い方だが、その顔にはいつものような嫌悪感はなかった。
私は陛下の手にそっと花束を乗せた。


「あら、綺麗ね……これはカーネーションかしら……」


花を見た陛下の顔は一瞬で穏やかなものになった。
公の場では滅多に見ることの出来ない王妃陛下の優しい顔。


(殿下の前でも……そんな風にしてくれたらいいのにな……)


ふとそう思ったものの、当然のように口に出すことは出来なかった。
王妃陛下の本心を知りたいと思ってこうやって仲を深めようとしているものの、未だに殿下のことは聞けずじまいである。


「陛下、またここに来てもいいですか」
「どうやらよほど暇なようね」
「はい、ですから王妃陛下と一緒にいさせてほしいのです」
「……」


昔はこの嫌味に傷付いていたけれど、今ではすっかり平気だ。
王妃陛下はしばらく黙り込んだ後に、そっぽを向いて口を開いた。


「……好きにしなさい」
「……!」


それは紛れもなく”またここへ来てもいい”という意味だった。


(王妃陛下が……)


以前の私に対する接し方を考えると想像も出来ないことだった。
私は向こうを見る王妃陛下の後ろ姿にそっと声をかけた。


「ありがとうございます、陛下……」
「……」


陛下が振り返ったり、何かを返すことは無かった。


(ふふ、こういうところは親子そっくりなのね)


殿下も私がお礼を言ったりすると顔を背ける癖があった。
今ではだいぶ丸くなってはいるが。
一向にこちらを振り返ろうとしない陛下の後ろ姿に、ふと殿下の面影を感じた。


外見はそれほど似ているところの無い二人だが、やはり血の繋がった親子なんだなと私は改めて実感した。


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