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一章
贈り物
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私は公爵邸に戻って早速マリアンヌ様からもらった箱を開けてみた。
(これは……)
箱の中に入っていたのはイヤリングだった。
二つのイヤリングにはめ込まれている石は私の瞳の色とよく似ており、箱の中でキラキラと光り輝いている。
(……もしかしたらずっと前から用意していてくれたのかしら)
私はヤリングを箱から取り出した。
(……自分で着けれるかな)
私は自室にあるドレッサーの前に座り、鏡を見ながらイヤリングを耳に着けてみる。
「……!」
私の瞳と似た色のそのイヤリングは驚くほど私に似合っていた。
(綺麗……)
不思議だった。
私が王太子妃として王宮に住んでいた頃によく身に着けていた高価な宝石たちよりもずっと美しく見えた。
私はそのまま鏡に映っている自分をじっと見つめた。
「……」
前世で最後に鏡を見たのはいつだっただろうか。
あの頃は自分の外見にあまり興味がなかった。
着る服も髪飾りも全てを侍女に任せていた。
だから自分の成長した姿はあまり覚えていない。
だけど、一つだけたしかなことがあった。
(…………前世の私は、いつも死にそうな顔をしていた)
勉強をするために睡眠時間をも削っていた。
そのせいか顔色が悪い日もあった。
いつも王妃教育で習った作り物の笑顔を浮かべていた。
もしかしたら心の底から笑ったことなど一度も無かったのではないだろうかと自分でも思う。
だが、今鏡に映っている自分は違った。
顔色も良く、目もキラキラしている。
どこからどう見ても普通の少女だ。
(…………マリアンヌ様にもう一度お礼を言わないとね。私からも何か贈り物をしよう。何がいいかしら?)
そんなことを考えていると、部屋の扉がノックされた。
「お嬢様、失礼します」
部屋に入ってきたのはミリアだった。
ミリアは私の顔を見て固まった。
「ミリア……?」
「お嬢様……そのイヤリングはどうなさったのですか……?」
どうやら私が珍しくイヤリングを着けていることに気付いたようだ。
「今日のお茶会でマリアンヌ様から頂いたものなのだけれど……変かしら?」
ミリアの固まった顔を見て似合わなかっただろうかと不安になった。
だが、次にミリアが発した言葉は私の予想の斜め上をいくものだった。
「…………お嬢様、美しすぎます!!!!!」
「え?」
ミリアは目を輝かせて私を見た。
「まるで女神様のようです!あ、まだ幼いから天使の方が合ってるかな?まあこの際どちらでもいいですよね!マリアンヌ様は本当にセンスが良いですね!お嬢様のことをよく分かっていらっしゃいます!」
「そ、そうかしら……?」
「はい!お嬢様はもっと自分に自信を持たれてください!お嬢様ほど素敵な方はこの世界にはいらっしゃらないのですから」
「ミリア……」
そのとき私の頭に浮かんだのは前世での記憶だった。
完璧な令嬢、淑女の鑑、未来の王妃。
これらはどれも私を表す言葉だった。
しかし私はそう言われて嬉しいと思ったことは一度もなかった。
(……ありのままの私を見てくれる人なんて一人もいなかったもの)
それらは王太子の婚約者であるセシリア・フルール公爵令嬢への賛美だった。
セシリア・フルールは私であって私ではない。
社交界での私は常に仮面を着けて自分を偽っているのだから。
だけど、先ほどのミリアの言葉は紛れもなくありのままの私に対してのものだった。
その事実だけで、何だか嬉しくなる。
「…………ありがとう、ミリア」
二度目の人生が始まってから、彼女には助けられてばかりだ。
(これは……)
箱の中に入っていたのはイヤリングだった。
二つのイヤリングにはめ込まれている石は私の瞳の色とよく似ており、箱の中でキラキラと光り輝いている。
(……もしかしたらずっと前から用意していてくれたのかしら)
私はヤリングを箱から取り出した。
(……自分で着けれるかな)
私は自室にあるドレッサーの前に座り、鏡を見ながらイヤリングを耳に着けてみる。
「……!」
私の瞳と似た色のそのイヤリングは驚くほど私に似合っていた。
(綺麗……)
不思議だった。
私が王太子妃として王宮に住んでいた頃によく身に着けていた高価な宝石たちよりもずっと美しく見えた。
私はそのまま鏡に映っている自分をじっと見つめた。
「……」
前世で最後に鏡を見たのはいつだっただろうか。
あの頃は自分の外見にあまり興味がなかった。
着る服も髪飾りも全てを侍女に任せていた。
だから自分の成長した姿はあまり覚えていない。
だけど、一つだけたしかなことがあった。
(…………前世の私は、いつも死にそうな顔をしていた)
勉強をするために睡眠時間をも削っていた。
そのせいか顔色が悪い日もあった。
いつも王妃教育で習った作り物の笑顔を浮かべていた。
もしかしたら心の底から笑ったことなど一度も無かったのではないだろうかと自分でも思う。
だが、今鏡に映っている自分は違った。
顔色も良く、目もキラキラしている。
どこからどう見ても普通の少女だ。
(…………マリアンヌ様にもう一度お礼を言わないとね。私からも何か贈り物をしよう。何がいいかしら?)
そんなことを考えていると、部屋の扉がノックされた。
「お嬢様、失礼します」
部屋に入ってきたのはミリアだった。
ミリアは私の顔を見て固まった。
「ミリア……?」
「お嬢様……そのイヤリングはどうなさったのですか……?」
どうやら私が珍しくイヤリングを着けていることに気付いたようだ。
「今日のお茶会でマリアンヌ様から頂いたものなのだけれど……変かしら?」
ミリアの固まった顔を見て似合わなかっただろうかと不安になった。
だが、次にミリアが発した言葉は私の予想の斜め上をいくものだった。
「…………お嬢様、美しすぎます!!!!!」
「え?」
ミリアは目を輝かせて私を見た。
「まるで女神様のようです!あ、まだ幼いから天使の方が合ってるかな?まあこの際どちらでもいいですよね!マリアンヌ様は本当にセンスが良いですね!お嬢様のことをよく分かっていらっしゃいます!」
「そ、そうかしら……?」
「はい!お嬢様はもっと自分に自信を持たれてください!お嬢様ほど素敵な方はこの世界にはいらっしゃらないのですから」
「ミリア……」
そのとき私の頭に浮かんだのは前世での記憶だった。
完璧な令嬢、淑女の鑑、未来の王妃。
これらはどれも私を表す言葉だった。
しかし私はそう言われて嬉しいと思ったことは一度もなかった。
(……ありのままの私を見てくれる人なんて一人もいなかったもの)
それらは王太子の婚約者であるセシリア・フルール公爵令嬢への賛美だった。
セシリア・フルールは私であって私ではない。
社交界での私は常に仮面を着けて自分を偽っているのだから。
だけど、先ほどのミリアの言葉は紛れもなくありのままの私に対してのものだった。
その事実だけで、何だか嬉しくなる。
「…………ありがとう、ミリア」
二度目の人生が始まってから、彼女には助けられてばかりだ。
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