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一章
友達
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と、思ったのに何故こうなった?
「セシリア様!!!このクッキーとっても美味しいですよ!」
「あ、このお菓子はあっちの紅茶に合いますよ!」
「私、セシリア様のことをもっと知りたいです!!!」
今、私の隣でそう言っているのは前世で私の婚約者の殿下と真実の愛で結ばれたはずのマリア・ヘレイス男爵令嬢だ。
ちなみにここはマリアンヌ様のお茶会である。
(そういえば前男爵令嬢も招待されてたわね……てっきり忘れてたわ……)
彼女は開始早々私の隣を陣取り、それからは私を見ては顔を輝かせながらお菓子や紅茶などを持ってくる。
私のご機嫌取りでもしたいのだろうか。
(何を考えているのか本当に分からないわ……)
そんな男爵令嬢を見た周りの令嬢がクスクスと笑う。
「マリア様、セシリア様のことが大好きですのね」
「本当にね、だけど分かる気もするわ」
「ええ、セシリア様はこんなにも美しいんですもの」
それを聞いた男爵令嬢が彼女たちに同調する。
「そうなんです!!!セシリア様は本当に美しくて可憐で綺麗で……もうとにかく完璧なんですよ!」
それから男爵令嬢は私がどれだけ素晴らしい人間であるかを令嬢たちに熱弁していた。
(この子こんな人間だったかしら……?)
私が見た前世でのマリア・ヘレイスとは随分違う姿に驚きを隠せない。
前世では、マリア・ヘレイスは貴族令嬢たちに眉をひそめられるほど「マナーのなっていない令嬢」だった。
(私のことも許可なく名前呼びしていたし……)
――だけど、今世では?
私は舞踏会で話したマリア・ヘレイスにマナーがなっていないという印象は抱かなかった。
それに、殿下とのことも気になった。
前世では心の底から二人は愛し合ってるように見えた。
あまり人を寄せ付けないことで有名な殿下がマリア・ヘレイスのことはいつも傍に置いていたのだから。
一緒に廊下を歩いていたり、お茶をしていたり、それを見るたびに何度私の胸が痛んだか。
前世では二人が出会うのはもう少し遅かったはずだが、当時の噂によると「二人はお互いを一目見た瞬間に惚れた」と言われていた。
それなのに、私が見る限り二人はお互いに興味が無さそうだった。
殿下に関しては名前すら覚えていないほどだ。
(もしかして私の知らない何かがあるのかな?)
「……リア様。セシリア様!」
「あっ」
男爵令嬢に突然声をかけられた。
「な、何かしら?」
「マリアンヌ様から聞きました。セシリア様はマリアンヌ様とご友人だそうですね。それで、迷惑でなければなのですが……」
男爵令嬢はそこまで言うと急にモジモジし始めた。
「わ、私とも友達になっていただけないでしょうか!?」
(…………え?と、友達?私とマリア・ヘレイス男爵令嬢が?)
衝撃の発言に私が黙っていると男爵令嬢が俯いた。
「やはり私のような者ではダメでしょうか・・・」
「い、いえそういうわけでは!」
男爵令嬢は愛くるしい容姿をしているからそんな風にされると断れない。
「それでは、友達になってくださるんですね!?」
ここは人の目もあるし、断ったら私の評判が悪くなる。
「は、はい……もちろんですわ……」
結局、私はその提案を受け入れざるを得なかった。
男爵令嬢はそれが理由なのか、お茶会が終わった後も何故かずっとウキウキしていた。
「セシリア様!!!このクッキーとっても美味しいですよ!」
「あ、このお菓子はあっちの紅茶に合いますよ!」
「私、セシリア様のことをもっと知りたいです!!!」
今、私の隣でそう言っているのは前世で私の婚約者の殿下と真実の愛で結ばれたはずのマリア・ヘレイス男爵令嬢だ。
ちなみにここはマリアンヌ様のお茶会である。
(そういえば前男爵令嬢も招待されてたわね……てっきり忘れてたわ……)
彼女は開始早々私の隣を陣取り、それからは私を見ては顔を輝かせながらお菓子や紅茶などを持ってくる。
私のご機嫌取りでもしたいのだろうか。
(何を考えているのか本当に分からないわ……)
そんな男爵令嬢を見た周りの令嬢がクスクスと笑う。
「マリア様、セシリア様のことが大好きですのね」
「本当にね、だけど分かる気もするわ」
「ええ、セシリア様はこんなにも美しいんですもの」
それを聞いた男爵令嬢が彼女たちに同調する。
「そうなんです!!!セシリア様は本当に美しくて可憐で綺麗で……もうとにかく完璧なんですよ!」
それから男爵令嬢は私がどれだけ素晴らしい人間であるかを令嬢たちに熱弁していた。
(この子こんな人間だったかしら……?)
私が見た前世でのマリア・ヘレイスとは随分違う姿に驚きを隠せない。
前世では、マリア・ヘレイスは貴族令嬢たちに眉をひそめられるほど「マナーのなっていない令嬢」だった。
(私のことも許可なく名前呼びしていたし……)
――だけど、今世では?
私は舞踏会で話したマリア・ヘレイスにマナーがなっていないという印象は抱かなかった。
それに、殿下とのことも気になった。
前世では心の底から二人は愛し合ってるように見えた。
あまり人を寄せ付けないことで有名な殿下がマリア・ヘレイスのことはいつも傍に置いていたのだから。
一緒に廊下を歩いていたり、お茶をしていたり、それを見るたびに何度私の胸が痛んだか。
前世では二人が出会うのはもう少し遅かったはずだが、当時の噂によると「二人はお互いを一目見た瞬間に惚れた」と言われていた。
それなのに、私が見る限り二人はお互いに興味が無さそうだった。
殿下に関しては名前すら覚えていないほどだ。
(もしかして私の知らない何かがあるのかな?)
「……リア様。セシリア様!」
「あっ」
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「それでは、友達になってくださるんですね!?」
ここは人の目もあるし、断ったら私の評判が悪くなる。
「は、はい……もちろんですわ……」
結局、私はその提案を受け入れざるを得なかった。
男爵令嬢はそれが理由なのか、お茶会が終わった後も何故かずっとウキウキしていた。
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