16 / 127
一章
精神魔法
しおりを挟む
それから数日後。
「本屋さんなんて初めて来たわ!」
「公爵邸の書庫には置いてないような本がたくさんあって、それがなかなか面白いんですよ!」
私はミリアと再び王都へと来ていた。
もちろんお父様には内緒である。
この間の王都が本当に楽しかったからお父様の帰ってこない日を狙ってまた来たのだ。
ちなみにあれからミリア以外の使用人たちとも打ち解けることが出来た。
皆ミリアと同じことを思っていたらしく、私に話しかけられてとても嬉しそうにしていた。
勇気を出して話しかけてよかったなと思う。
公爵邸の使用人たちはグルだ。
彼らは私をほったらかしにしているお父様をあまり良く思っていないらしく、積極的に私に協力してくれている。
(……本当に、恵まれた境遇だわ)
あれほど公爵邸を居心地の良い場所だと思ったことはなかった。
前世では王宮はもちろん公爵邸にも居心地の悪さを感じていたから。
「色んな本があるのね……」
私たちが今いるのは王都にある書店だ。
私は書店の中に置いてある本を眺めていた。
本なら公爵邸にいくらでもあるが、私はどうしてもここへ来たかった。
それには理由があった。
どうやら最近平民たちの間で恋愛の物語を描いた書物が人気らしい。
実際、恋愛関連の書物は飛ぶように売れているという。
それで私たちも気になって来てみたというわけだ。
「お嬢様、これが最近平民の間で人気な小説ですよ」
そう言ってミリアが手に持ったのは平民と王子の恋物語だ。
私はミリアから本を受け取りページをめくってみる。
「……」
どうやらこの話は市井に住むごく普通な平民の少女が自国の王子と恋に落ち、色々な障害を乗り越えて最終的には王妃になるという話のようだ。
ミリアによると最近平民たちの間でこの手の物語が物凄く人気なのだという。
平民が身分の高い男性と恋に落ち、最終的には結ばれる感動的な話。
しかし私は、それ以上にこの作品に登場する王子の婚約者であった令嬢のことが気になった。
このご令嬢は王子にゾッコンであらゆる手を使って平民の少女と王子の仲を引き裂こうとするが全て失敗に終わる。
そして最後は悪事が全てバレ、愛する王子の手で処刑されてしまうのだ。
(…………何だか、誰かさんを見ているみたい)
本の表紙にはピンク髪の少女と黒髪の青年が描かれている。
おそらくこれがこの作品のヒロインとヒーローなのだろう。
この国の王族は基本的に黒い髪をしている。
現に殿下も国王陛下も黒髪である。
平民の少女をピンク色の髪にしたことに特別な意味はないのだろうが、私からしたらあの二人にしか見えなかった。
私は挿絵に描かれていた悪役令嬢の絵姿を見た。
そこに描かれていた令嬢は、見事な金髪だった。
しかも高位貴族で幼い頃からの許嫁だという。
(……なるほどね)
どうやら私は悪役令嬢だったらしい。
ここが小説の中の世界なら私は悪役令嬢でグレイフォード殿下がヒーロー。
そしてヒロインはあの男爵令嬢。
『私はただ、貴方を愛しただけなのに――』
これは物語の中で悪役令嬢が処刑時に言っていたセリフだ。
決して愛する人と結ばれることのない悪役。
愛する人は自分を見てくれない。
それでもただただ愛し続け、結局は愛する人の手で処刑されてしまった。
ただ表に出していなかっただけで彼女は物凄く苦しかったはずだ。
(…………これ以上読むのはやめよう)
私はそこで本を閉じ、棚に戻した。
読んでも辛い記憶を思い出してしまうだけだ。
(……真実の愛、か)
憧れはあった。
小説の中のヒロインのように一途にヒーローに想われる、そんな恋をしてみたかった。
私はそう思いながらも別の棚に視線をやった。
たくさんの恋愛書物が並んでいる中、私はその中にあった一冊の本に目をひかれた。
(これは……)
私は棚からその本を手に取った。
その小説は国王と王妃の恋物語だった。
一人の女が国王に精神魔法を使って自分に寵愛が向けられるように仕向けるが結局最後は悪事がバレ、処刑されてしまい国王と王妃は愛を取り戻すという話だった。
「……」
「お嬢様、その本が気になるのですか?」
近くにいたミリアが私の手元を覗き込む。
「まったく、さっきの小説といいこれといい恋愛小説って本当に現実味がないですよね。平民が王妃になるとかありえないし、この本に出てくる精神魔法なんてのも存在するわけがないし」
ミリアはやれやれというふうにそう言った。
(……違う)
精神魔法は実在する――
ミリアについそう言ってしまいそうになり慌てて口を閉じた。
これはオルレリアン王国の王族と前世で王妃教育を受けた私しか知らないことだから言ってはダメだ。
――精神魔法
数代前に平民の女が国王相手に使い、大変なことになった。
そのとき使われた精神魔法は「魅了」という類のものだ。
魅了にかけられた国王はたちまちその女の言いなりになり高い宝石やドレスを貢ぎ国の財政が傾いた。
最終的に国王は魅了が解け、怒り狂って女を拷問の末火炙りにした。
(……危険すぎてその存在自体が秘匿されたのよね)
精神魔法の存在は王族となる人間しか知らない。
だけど確かに存在した。
ちなみに現時点で確認されている精神魔法は「魅了」のみだ。
(そんなものが今も存在していたら恐ろしいどころではない……)
精神魔法に関して存在自体は秘匿されているが隠された法がある。
「精神魔法を使用した者、またはそれに関わった者は身分を問わずに死刑にする」
というものだ。
数代前の国王が魅了にかかり、術が解けた後そう定めたらしい。
(まぁ、適切な処罰よね……)
私が考えこんでいると目をキラキラさせたミリアに声をかけられる。
「お嬢様、何冊か買っていきましょうか?」
「え?えぇ……そうね……」
結局私はミリアの圧に負けて、彼女の望み通り恋愛小説を数冊買っていった。
「本屋さんなんて初めて来たわ!」
「公爵邸の書庫には置いてないような本がたくさんあって、それがなかなか面白いんですよ!」
私はミリアと再び王都へと来ていた。
もちろんお父様には内緒である。
この間の王都が本当に楽しかったからお父様の帰ってこない日を狙ってまた来たのだ。
ちなみにあれからミリア以外の使用人たちとも打ち解けることが出来た。
皆ミリアと同じことを思っていたらしく、私に話しかけられてとても嬉しそうにしていた。
勇気を出して話しかけてよかったなと思う。
公爵邸の使用人たちはグルだ。
彼らは私をほったらかしにしているお父様をあまり良く思っていないらしく、積極的に私に協力してくれている。
(……本当に、恵まれた境遇だわ)
あれほど公爵邸を居心地の良い場所だと思ったことはなかった。
前世では王宮はもちろん公爵邸にも居心地の悪さを感じていたから。
「色んな本があるのね……」
私たちが今いるのは王都にある書店だ。
私は書店の中に置いてある本を眺めていた。
本なら公爵邸にいくらでもあるが、私はどうしてもここへ来たかった。
それには理由があった。
どうやら最近平民たちの間で恋愛の物語を描いた書物が人気らしい。
実際、恋愛関連の書物は飛ぶように売れているという。
それで私たちも気になって来てみたというわけだ。
「お嬢様、これが最近平民の間で人気な小説ですよ」
そう言ってミリアが手に持ったのは平民と王子の恋物語だ。
私はミリアから本を受け取りページをめくってみる。
「……」
どうやらこの話は市井に住むごく普通な平民の少女が自国の王子と恋に落ち、色々な障害を乗り越えて最終的には王妃になるという話のようだ。
ミリアによると最近平民たちの間でこの手の物語が物凄く人気なのだという。
平民が身分の高い男性と恋に落ち、最終的には結ばれる感動的な話。
しかし私は、それ以上にこの作品に登場する王子の婚約者であった令嬢のことが気になった。
このご令嬢は王子にゾッコンであらゆる手を使って平民の少女と王子の仲を引き裂こうとするが全て失敗に終わる。
そして最後は悪事が全てバレ、愛する王子の手で処刑されてしまうのだ。
(…………何だか、誰かさんを見ているみたい)
本の表紙にはピンク髪の少女と黒髪の青年が描かれている。
おそらくこれがこの作品のヒロインとヒーローなのだろう。
この国の王族は基本的に黒い髪をしている。
現に殿下も国王陛下も黒髪である。
平民の少女をピンク色の髪にしたことに特別な意味はないのだろうが、私からしたらあの二人にしか見えなかった。
私は挿絵に描かれていた悪役令嬢の絵姿を見た。
そこに描かれていた令嬢は、見事な金髪だった。
しかも高位貴族で幼い頃からの許嫁だという。
(……なるほどね)
どうやら私は悪役令嬢だったらしい。
ここが小説の中の世界なら私は悪役令嬢でグレイフォード殿下がヒーロー。
そしてヒロインはあの男爵令嬢。
『私はただ、貴方を愛しただけなのに――』
これは物語の中で悪役令嬢が処刑時に言っていたセリフだ。
決して愛する人と結ばれることのない悪役。
愛する人は自分を見てくれない。
それでもただただ愛し続け、結局は愛する人の手で処刑されてしまった。
ただ表に出していなかっただけで彼女は物凄く苦しかったはずだ。
(…………これ以上読むのはやめよう)
私はそこで本を閉じ、棚に戻した。
読んでも辛い記憶を思い出してしまうだけだ。
(……真実の愛、か)
憧れはあった。
小説の中のヒロインのように一途にヒーローに想われる、そんな恋をしてみたかった。
私はそう思いながらも別の棚に視線をやった。
たくさんの恋愛書物が並んでいる中、私はその中にあった一冊の本に目をひかれた。
(これは……)
私は棚からその本を手に取った。
その小説は国王と王妃の恋物語だった。
一人の女が国王に精神魔法を使って自分に寵愛が向けられるように仕向けるが結局最後は悪事がバレ、処刑されてしまい国王と王妃は愛を取り戻すという話だった。
「……」
「お嬢様、その本が気になるのですか?」
近くにいたミリアが私の手元を覗き込む。
「まったく、さっきの小説といいこれといい恋愛小説って本当に現実味がないですよね。平民が王妃になるとかありえないし、この本に出てくる精神魔法なんてのも存在するわけがないし」
ミリアはやれやれというふうにそう言った。
(……違う)
精神魔法は実在する――
ミリアについそう言ってしまいそうになり慌てて口を閉じた。
これはオルレリアン王国の王族と前世で王妃教育を受けた私しか知らないことだから言ってはダメだ。
――精神魔法
数代前に平民の女が国王相手に使い、大変なことになった。
そのとき使われた精神魔法は「魅了」という類のものだ。
魅了にかけられた国王はたちまちその女の言いなりになり高い宝石やドレスを貢ぎ国の財政が傾いた。
最終的に国王は魅了が解け、怒り狂って女を拷問の末火炙りにした。
(……危険すぎてその存在自体が秘匿されたのよね)
精神魔法の存在は王族となる人間しか知らない。
だけど確かに存在した。
ちなみに現時点で確認されている精神魔法は「魅了」のみだ。
(そんなものが今も存在していたら恐ろしいどころではない……)
精神魔法に関して存在自体は秘匿されているが隠された法がある。
「精神魔法を使用した者、またはそれに関わった者は身分を問わずに死刑にする」
というものだ。
数代前の国王が魅了にかかり、術が解けた後そう定めたらしい。
(まぁ、適切な処罰よね……)
私が考えこんでいると目をキラキラさせたミリアに声をかけられる。
「お嬢様、何冊か買っていきましょうか?」
「え?えぇ……そうね……」
結局私はミリアの圧に負けて、彼女の望み通り恋愛小説を数冊買っていった。
351
お気に入りに追加
5,913
あなたにおすすめの小説
【完結】内緒で死ぬことにした 〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜
たろ
恋愛
手術をしなければ助からないと言われました。
でもわたしは利用価値のない人間。
手術代など出してもらえるわけもなく……死ぬまで努力し続ければ、いつかわたしのことを、わたしの存在を思い出してくれるでしょうか?
少しでいいから誰かに愛されてみたい、死ぬまでに一度でいいから必要とされてみたい。
生きることを諦めた女の子の話です
★異世界のゆるい設定です
「私も新婚旅行に一緒に行きたい」彼を溺愛する幼馴染がお願いしてきた。彼は喜ぶが二人は喧嘩になり別れを選択する。
window
恋愛
イリス公爵令嬢とハリー王子は、お互いに惹かれ合い相思相愛になる。
「私と結婚していただけますか?」とハリーはプロポーズし、イリスはそれを受け入れた。
関係者を招待した結婚披露パーティーが開かれて、会場でエレナというハリーの幼馴染の子爵令嬢と出会う。
「新婚旅行に私も一緒に行きたい」エレナは結婚した二人の間に図々しく踏み込んでくる。エレナの厚かましいお願いに、イリスは怒るより驚き呆れていた。
「僕は構わないよ。エレナも一緒に行こう」ハリーは信じられないことを言い出す。エレナが同行することに乗り気になり、花嫁のイリスの面目をつぶし感情を傷つける。
とんでもない男と結婚したことが分かったイリスは、言葉を失うほかなく立ち尽くしていた。
【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。
たろ
恋愛
セレンは15歳の時に16歳のスティーブ・ロセスと結婚した。いわゆる政略的な結婚で、幼馴染でいつも喧嘩ばかりの二人は歩み寄りもなく一年で離縁した。
その一年間をなかったものにするため、お互い全く別のところへ移り住んだ。
スティーブはアルク国に留学してしまった。
セレンは国の文官の試験を受けて働くことになった。配属は何故か騎士団の事務員。
本人は全く気がついていないが騎士団員の間では
『可愛い子兎』と呼ばれ、何かと理由をつけては事務室にみんな足を運ぶこととなる。
そんな騎士団に入隊してきたのが、スティーブ。
お互い結婚していたことはなかったことにしようと、話すこともなく目も合わせないで過ごした。
本当はお互い好き合っているのに素直になれない二人。
そして、少しずつお互いの誤解が解けてもう一度……
始めの数話は幼い頃の出会い。
そして結婚1年間の話。
再会と続きます。
【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜
たろ
恋愛
この話は
『内緒で死ぬことにした 〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜』
の続編です。
アイシャが亡くなった後、リサはルビラ王国の公爵の息子であるハイド・レオンバルドと結婚した。
そして、アイシャを産んだ。
父であるカイザも、リサとハイドも、アイシャが前世のそのままの姿で転生して、自分たちの娘として生まれてきたことを知っていた。
ただアイシャには昔の記憶がない。
だからそのことは触れず、新しいアイシャとして慈しみ愛情を与えて育ててきた。
アイシャが家族に似ていない、自分は一体誰の子供なのだろうと悩んでいることも知らない。
親戚にあたる王子や妹に、意地悪を言われていることも両親は気が付いていない。
アイシャの心は、少しずつ壊れていくことに……
明るく振る舞っているとは知らずに可愛いアイシャを心から愛している両親と祖父。
アイシャを助け出して心を救ってくれるのは誰?
◆ ◆ ◆
今回もまた辛く悲しい話しが出てきます。
無理!またなんで!
と思われるかもしれませんが、アイシャは必ず幸せになります。
もし読んでもいいなと思う方のみ、読んで頂けたら嬉しいです。
多分かなりイライラします。
すみません、よろしくお願いします
★内緒で死ぬことにした の最終話
キリアン君15歳から14歳
アイシャ11歳から10歳
に変更しました。
申し訳ありません。
【完結】浮気された私は貴方の子どもを内緒で育てます 時々番外編
たろ
恋愛
朝目覚めたら隣に見慣れない女が裸で寝ていた。
レオは思わずガバッと起きた。
「おはよう〜」
欠伸をしながらこちらを見ているのは結婚前に、昔付き合っていたメアリーだった。
「なんでお前が裸でここにいるんだ!」
「あら、失礼しちゃうわ。昨日無理矢理連れ込んで抱いたのは貴方でしょう?」
レオの妻のルディアは事実を知ってしまう。
子どもが出来たことでルディアと別れてメアリーと再婚するが………。
ルディアはレオと別れた後に妊娠に気づきエイミーを産んで育てることになった。
そしてレオとメアリーの子どものアランとエイミーは13歳の時に学園で同級生となってしまう。
レオとルディアの誤解が解けて結ばれるのか?
エイミーが恋を知っていく
二つの恋のお話です
【完結】今日も女の香水の匂いをさせて朝帰りする夫が愛していると言ってくる。
たろ
恋愛
「ただいま」
朝早く小さな声でわたしの寝ているベッドにそっと声をかける夫。
そして、自分のベッドにもぐり込み、すぐに寝息を立てる夫。
わたしはそんな夫を見て溜息を吐きながら、朝目覚める。
そして、朝食用のパンを捏ねる。
「ったく、いっつも朝帰りして何しているの?朝から香水の匂いをプンプンさせて、臭いのよ!
バッカじゃないの!少しカッコいいからって女にモテると思って!調子に乗るんじゃないわ!」
パンを捏ねるのはストレス発散になる。
結婚して一年。
わたしは近くのレストランで昼間仕事をしている。
夫のアッシュは、伯爵家で料理人をしている。
なので勤務時間は不規則だ。
それでも早朝に帰ることは今までなかった。
早出、遅出はあっても、夜中に勤務して早朝帰ることなど料理人にはまずない。
それにこんな香水の匂いなど料理人はまずさせない。
だって料理人にとって匂いは大事だ。
なのに……
「そろそろ離婚かしら?」
夫をぎゃふんと言わせてから離婚しようと考えるユウナのお話です。
【完結】愛してました、たぶん
たろ
恋愛
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
嫌われ者の側妃はのんびり暮らしたい
風見ゆうみ
恋愛
「オレのタイプじゃないんだよ。地味過ぎて顔も見たくない。だから、お前は側妃だ」
顔だけは良い皇帝陛下は、自らが正妃にしたいと希望した私を側妃にして別宮に送り、正妃は私の妹にすると言う。
裏表のあるの妹のお世話はもううんざり!
側妃は私以外にもいるし、面倒なことは任せて、私はのんびり自由に暮らすわ!
そう思っていたのに、別宮には皇帝陛下の腹違いの弟や、他の側妃とのトラブルはあるし、それだけでなく皇帝陛下は私を妹の毒見役に指定してきて――
それって側妃がやることじゃないでしょう!?
※のんびり暮らしたかった側妃がなんだかんだあって、のんびりできなかったけれど幸せにはなるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる