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31 断罪⑦
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キャロラインが連れ出された後、アーノルド、バーナード、クリストファーの三人は虚ろな目をして呟いた。
「キャロライン……キャロラインはどこだ……」
「今すぐ彼女に会わなければ……」
「私はキャロラインを愛するために生まれてきたんだ……」
そう口にした三人の目は焦点が合っておらず、呂律も回っていない。
「まずいな、完全に正気を失っている」
「これが魅了魔法の力なんですね……何て恐ろしい……」
それでも床を這いつくばりながらキャロラインを探すその姿は異常としか言いようがなかった。
(どうしてここまで落ちぶれてしまったのかしら……)
かつて貴族令嬢たちが憧れ、結婚を夢見た人たちだった。
今ではもうその面影も無いが。
そんな三人の姿を見た殿下が呆れたように口を開いた。
「あの三人には治療を受けさせるつもりだ。完治は難しいだろうが、このままにしておくわけにはいかない」
「それが良いですね」
殿下の提案にビアンカ様が頷いた。
(私たちに心の傷を与えたとはいえ、彼らもまた被害者……何だか複雑な気持ちだわ)
その後すぐに騎士たちが三人を捕らえ、強制的に連行していく。
「おい、放せ……!私はキャロラインに会わなければいけないんだ……!キャロラインを連れて来い……!」
「ああ、キャロライン……ここにいたのか……探していたよ……」
「何もかもどうでもいい……キャロラインがいない世界なんて……」
ブツブツ何かを言いながらも抵抗する気力は無かったようで、三人は大人しく外へ連れ出された。
「おい、アーノルド!バーナード!クリストファー!一体何が起きているんだ!」
王太子殿下が騎士たちに連れて行かれる三人に向かって叫んだ。
あの五人の中で魅了魔法にかかっていないのは王太子だけだった。
(つまり、王太子殿下だけはキャロラインを本気で愛していたということ……)
最初から王太子殿下だけを見つめていればよかったものを。
全てを捧げて愛したというのにこうもあっさりと裏切られては、少し可哀相にも感じる。
声を荒らげる王太子に、第二王子殿下がゆっくりと近付いた。
「兄上……いえ、殿下。貴方には私と一緒に来てもらいます」
「グレイ……」
床に座り込んでいた王太子が腹違いの弟を見上げた。
昔からどうしても相容れなかった二人。
父親から深く愛された兄と、無関心だった弟。
お世辞にも優秀とは言えない兄と、非の打ち所が無いほどに完璧だった弟。
かつては憎み合っていた二人だったが、今は何とも言えないような目でお互いを見つめ合っていた。
「どこへ行く気なんだ……」
「王宮です、そこで全てを終わらせる」
「……」
何かを決めたような弟の目を見た兄は、大人しくその後ろをついて行った。
「せっかく再会出来たところですがそれはまた後で……私たちも行きましょう」
「あ、はい!」
部屋に取り残されていた私たちも慌ててその後を追った。
「キャロライン……キャロラインはどこだ……」
「今すぐ彼女に会わなければ……」
「私はキャロラインを愛するために生まれてきたんだ……」
そう口にした三人の目は焦点が合っておらず、呂律も回っていない。
「まずいな、完全に正気を失っている」
「これが魅了魔法の力なんですね……何て恐ろしい……」
それでも床を這いつくばりながらキャロラインを探すその姿は異常としか言いようがなかった。
(どうしてここまで落ちぶれてしまったのかしら……)
かつて貴族令嬢たちが憧れ、結婚を夢見た人たちだった。
今ではもうその面影も無いが。
そんな三人の姿を見た殿下が呆れたように口を開いた。
「あの三人には治療を受けさせるつもりだ。完治は難しいだろうが、このままにしておくわけにはいかない」
「それが良いですね」
殿下の提案にビアンカ様が頷いた。
(私たちに心の傷を与えたとはいえ、彼らもまた被害者……何だか複雑な気持ちだわ)
その後すぐに騎士たちが三人を捕らえ、強制的に連行していく。
「おい、放せ……!私はキャロラインに会わなければいけないんだ……!キャロラインを連れて来い……!」
「ああ、キャロライン……ここにいたのか……探していたよ……」
「何もかもどうでもいい……キャロラインがいない世界なんて……」
ブツブツ何かを言いながらも抵抗する気力は無かったようで、三人は大人しく外へ連れ出された。
「おい、アーノルド!バーナード!クリストファー!一体何が起きているんだ!」
王太子殿下が騎士たちに連れて行かれる三人に向かって叫んだ。
あの五人の中で魅了魔法にかかっていないのは王太子だけだった。
(つまり、王太子殿下だけはキャロラインを本気で愛していたということ……)
最初から王太子殿下だけを見つめていればよかったものを。
全てを捧げて愛したというのにこうもあっさりと裏切られては、少し可哀相にも感じる。
声を荒らげる王太子に、第二王子殿下がゆっくりと近付いた。
「兄上……いえ、殿下。貴方には私と一緒に来てもらいます」
「グレイ……」
床に座り込んでいた王太子が腹違いの弟を見上げた。
昔からどうしても相容れなかった二人。
父親から深く愛された兄と、無関心だった弟。
お世辞にも優秀とは言えない兄と、非の打ち所が無いほどに完璧だった弟。
かつては憎み合っていた二人だったが、今は何とも言えないような目でお互いを見つめ合っていた。
「どこへ行く気なんだ……」
「王宮です、そこで全てを終わらせる」
「……」
何かを決めたような弟の目を見た兄は、大人しくその後ろをついて行った。
「せっかく再会出来たところですがそれはまた後で……私たちも行きましょう」
「あ、はい!」
部屋に取り残されていた私たちも慌ててその後を追った。
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