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24 公爵家へ
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「奥様、第二王子殿下がいらっしゃっています」
「今行くわ」
エイミーが外へ連れ出された後。
しばらくして第二王子殿下が公爵邸へやって来た。
「――公爵夫人」
「殿下」
ついさっきまでエイミーが暴れていたエントランスで彼を出迎える。
入れ違いになって良かった。
王子殿下に危害を加えでもしたら大変だ。
侍女たちを下がらせた私は、小声で殿下に尋ねた。
「王太子殿下は……」
「ああ、ちょうどヴォーチェ公爵家へ着いて全てを知っている頃だろう。心配する必要は無い。きっと計画は上手くいくはずだ」
「はい、殿下」
第二王子殿下の優しい言葉にほっと胸を撫で下ろすと同時に、王太子殿下の絶望している顔が自然と頭に浮かんできた。
今回の一件でアーノルドたちは間違いなく今の地位を追われることになるだろう。
彼をそんな風に追い込んだのは妻である私だ。
(……でも後悔はしていないわ)
彼に対する気持ちなんて既に残っていない。
こうなるのは当然のことだ。
そうやって自分を納得させていた私に、殿下が声をかけた。
「――ヴォーチェ公爵家へ行こう、公爵夫人。きっと面白いものが見れるはずだ」
「……はい、殿下」
そう返事をして、先に邸を出て行った殿下の後をついて公爵家へ向かう馬車に乗り込んだ。
***
久しぶりに訪れる公爵邸は、普段と違ってひっそりと静まり返っていた。
「……やけに静かだな」
隣を歩いていた殿下が懐かしそうに目を細めながらポツリと呟いた。
(ビアンカ様と過ごした日々を思い出しているのかしら)
後になって知ったことだが、ビアンカ様の婚約者は元々第二王子殿下になる予定だった。
幼馴染だった二人はとても仲が良く、誰もが結ばれると信じて疑わなかったそうだ。
しかし、殿下の母親の前王妃が亡くなった後、ヴォーチェ公爵家の力を欲しがった現王妃がナイゼル王子との婚約を勝手に決めてしまったのだという。
元々想い合っていた二人はそうやって引き裂かれた。
第二王子殿下がずっと婚約者を作らなかったのはビアンカ様を密かに想い続けていたからだったのだ。
(思えば、ビアンカ様と王子殿下は境遇がとても似ているわ)
父親が自分に無関心で、継母にキツく当たられていること。
どうしても相容れない腹違いの兄弟がいること。
あの二人にとって家に居場所なんて無かったのかもしれない。
だからこそ、お互いの傷を誰よりも分かっていたのだろう。
「ダイアナ様たちがきっと上手くやってくれているのでしょう、誰一人として死なせるわけにはいきませんから」
「ああ、断罪劇はこれから始まるからな」
そう口にした殿下の表情は、気のせいかいつもよりも沈んで見えた。
「はい、殿下……――行きましょう」
私たちは二人揃って戦場へと足を踏み入れた。
「今行くわ」
エイミーが外へ連れ出された後。
しばらくして第二王子殿下が公爵邸へやって来た。
「――公爵夫人」
「殿下」
ついさっきまでエイミーが暴れていたエントランスで彼を出迎える。
入れ違いになって良かった。
王子殿下に危害を加えでもしたら大変だ。
侍女たちを下がらせた私は、小声で殿下に尋ねた。
「王太子殿下は……」
「ああ、ちょうどヴォーチェ公爵家へ着いて全てを知っている頃だろう。心配する必要は無い。きっと計画は上手くいくはずだ」
「はい、殿下」
第二王子殿下の優しい言葉にほっと胸を撫で下ろすと同時に、王太子殿下の絶望している顔が自然と頭に浮かんできた。
今回の一件でアーノルドたちは間違いなく今の地位を追われることになるだろう。
彼をそんな風に追い込んだのは妻である私だ。
(……でも後悔はしていないわ)
彼に対する気持ちなんて既に残っていない。
こうなるのは当然のことだ。
そうやって自分を納得させていた私に、殿下が声をかけた。
「――ヴォーチェ公爵家へ行こう、公爵夫人。きっと面白いものが見れるはずだ」
「……はい、殿下」
そう返事をして、先に邸を出て行った殿下の後をついて公爵家へ向かう馬車に乗り込んだ。
***
久しぶりに訪れる公爵邸は、普段と違ってひっそりと静まり返っていた。
「……やけに静かだな」
隣を歩いていた殿下が懐かしそうに目を細めながらポツリと呟いた。
(ビアンカ様と過ごした日々を思い出しているのかしら)
後になって知ったことだが、ビアンカ様の婚約者は元々第二王子殿下になる予定だった。
幼馴染だった二人はとても仲が良く、誰もが結ばれると信じて疑わなかったそうだ。
しかし、殿下の母親の前王妃が亡くなった後、ヴォーチェ公爵家の力を欲しがった現王妃がナイゼル王子との婚約を勝手に決めてしまったのだという。
元々想い合っていた二人はそうやって引き裂かれた。
第二王子殿下がずっと婚約者を作らなかったのはビアンカ様を密かに想い続けていたからだったのだ。
(思えば、ビアンカ様と王子殿下は境遇がとても似ているわ)
父親が自分に無関心で、継母にキツく当たられていること。
どうしても相容れない腹違いの兄弟がいること。
あの二人にとって家に居場所なんて無かったのかもしれない。
だからこそ、お互いの傷を誰よりも分かっていたのだろう。
「ダイアナ様たちがきっと上手くやってくれているのでしょう、誰一人として死なせるわけにはいきませんから」
「ああ、断罪劇はこれから始まるからな」
そう口にした殿下の表情は、気のせいかいつもよりも沈んで見えた。
「はい、殿下……――行きましょう」
私たちは二人揃って戦場へと足を踏み入れた。
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「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
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