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舞踏会⑤
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口から血を吐きながら後ろに倒れる陛下。
それを冷たい目で見下ろすクリスティーナ様のドレスには返り血がべっとりと付いている。
「キャーーーーーーー!!!」
突然の殺人事件に、会場にいる貴族たちがパニックになった。
クリスティーナ様から距離を取ろうとする貴族たち。
「み、皆!落ち着いて!」
「おい、落ち着け!」
私とお兄様はそんな彼らを落ち着かせようと声を出すが、騒然となっている会場にその声が届くことは無かった。
(と、とりあえずクリスティーナ様を捕まえないと!)
そう思った私は再びクリスティーナ様の方に目を向けた。
しかし――
(あれ、クリスティーナ様がいない!)
壇上にいた彼女はいつの間にか姿を消していた。
私は辺りを見回して必死で彼女を探した。
「――ぎゃああああ!!!」
すると、突然耳をつんざくような悲鳴が聞こえてきた。
「な、何!?」
声のした方に視線をやると、そこにいたのは血を流して倒れている女性だった。
そしてその傍らには血に染まった短剣を手にするクリスティーナ様が。
私は倒れている女性に見覚えがあった。
(あれって……まさか愛妾のリズ様!?)
そう、血を流している倒れている女性は陛下の一人目の愛妾であるリズ様だった。
会場に控えていた騎士がクリスティーナ様を捕らえようとするが、動きの速い彼女に付いて行くことが出来ない。
クリスティーナ様は随分人を殺すのに慣れているようだった。
(おそらく相当な手練れの暗殺者ね……)
そして彼女は再び姿を消した。
人混みのせいで彼女を見つけるのは困難だった。
いたるところに血が飛び散っていて、何も分からない。
しかしこの状況で私は一人、冷静に物事を考えていた。
(真っ先にリズ様が殺されたということは……次に狙われるのはきっと……)
あることを閃いた私は、すぐにとある人物を探した。
「いたわ!」
そして私は、その人物を守るようにして前に立った。
それからすぐに、短剣を持ったクリスティーナ様が私の前に現れた。
(やっぱりね……!)
彼女は自身の前に立ちはだかった私を見て眉をひそめた。
「そこ、どいてくれます?王妃陛下」
「嫌よ」
私の返事を聞いたクリスティーナ様は、持っていた短剣を私に向けた。
しかし、私も退くわけにはいかない。
「お、王妃陛下……!?何故……!?」
私の背に隠れるようにして守られている女性が驚きの声を上げた。
まぁ、そうなるのも無理はない。
私が今必死で守っている人は、今まで散々私を馬鹿にしてきた人物なのだから。
「死にたくないのならそこでじっとしてなさい。――第二側妃アンナ」
そう、私が探した人物とは第二側妃のアンナ様のことだった。
数多くいる貴族たちの中でリズ様が真っ先に殺されたという時点で私は、クリスティーナ様の狙いが陛下の側妃・愛妾たちであることに気付いたのだ。
だからこそ、こんな風にして彼女を守っている。
アンナ様のことは好きではないが、別に死を望んでいるほど嫌いなわけではなかった。
何より、これ以上犠牲者を出したら王弟殿下に合わせる顔が無い。
「どきなさいよ!私はその女を殺すのよ!」
「あら、それなら私を殺してからにするのね」
「くっ……」
私がそう言うと、彼女は何故か気が乗らないというような顔をした。
「王妃陛下!危険です!逃げてください!」
「黙りなさい。聞こえなかったの?」
後ろで泣きながら声を上げるアンナ様。
私の身を案じているとでもいうのだろうか。
あれほど嫌っていたのに。
そんな私たちの様子をしばらくじっと見つめていたクリスティーナ様が、突然口の端を上げた。
「ハッ……良いわ……計画には無かったけれど、私の邪魔をするというなら貴方も殺してあげる」
「……!」
その瞬間、クリスティーナ様の目に狂気が宿った。
あれは本当にやる人間の目だ。
(まずいわね……)
騎士が来るまでの時間稼ぎのつもりだったが、もしかすると私はここで死ぬかもしれない。
逃げようにも、私がここから立ち去ればアンナ様が危なくなる。
「ひ、ひぃ……」
彼女は恐怖で動けなくなっているようで、床に座り込んでいる。
「可哀相な王妃様……私がここで息の根を止めてあげるわ」
そうしているうちにも、クリスティーナ様が短剣を構えて私に向かってくる。
「!」
騎士たちは間に合わない。
避けようにも、私が彼女のスピードに敵うはずがない。
「王妃陛下!!!」
後ろでアンナ様の泣き叫ぶ声が聞こえてくる。
(あ……ごめんなさい……私もうダメみたい……)
そう思ったとき、王弟殿下との思い出が頭に浮かんだ。
王宮で彼と遊んだ記憶、二人で市井に行った記憶、本当に本当に大切な彼との思い出。
もう二度と殿下と会えないのだと思うと涙が出そうになってくる。
「殿下……」
――会いたいです
死を覚悟したそのとき――
突然体をグイッと抱き寄せられた。
「!?」
「間に合って良かった」
聞き覚えのあるその声に顔を上げると――
「王弟殿下……?」
泣きそうな顔で私をしっかりと抱き締めている王弟殿下の姿が目に入った。
それを冷たい目で見下ろすクリスティーナ様のドレスには返り血がべっとりと付いている。
「キャーーーーーーー!!!」
突然の殺人事件に、会場にいる貴族たちがパニックになった。
クリスティーナ様から距離を取ろうとする貴族たち。
「み、皆!落ち着いて!」
「おい、落ち着け!」
私とお兄様はそんな彼らを落ち着かせようと声を出すが、騒然となっている会場にその声が届くことは無かった。
(と、とりあえずクリスティーナ様を捕まえないと!)
そう思った私は再びクリスティーナ様の方に目を向けた。
しかし――
(あれ、クリスティーナ様がいない!)
壇上にいた彼女はいつの間にか姿を消していた。
私は辺りを見回して必死で彼女を探した。
「――ぎゃああああ!!!」
すると、突然耳をつんざくような悲鳴が聞こえてきた。
「な、何!?」
声のした方に視線をやると、そこにいたのは血を流して倒れている女性だった。
そしてその傍らには血に染まった短剣を手にするクリスティーナ様が。
私は倒れている女性に見覚えがあった。
(あれって……まさか愛妾のリズ様!?)
そう、血を流している倒れている女性は陛下の一人目の愛妾であるリズ様だった。
会場に控えていた騎士がクリスティーナ様を捕らえようとするが、動きの速い彼女に付いて行くことが出来ない。
クリスティーナ様は随分人を殺すのに慣れているようだった。
(おそらく相当な手練れの暗殺者ね……)
そして彼女は再び姿を消した。
人混みのせいで彼女を見つけるのは困難だった。
いたるところに血が飛び散っていて、何も分からない。
しかしこの状況で私は一人、冷静に物事を考えていた。
(真っ先にリズ様が殺されたということは……次に狙われるのはきっと……)
あることを閃いた私は、すぐにとある人物を探した。
「いたわ!」
そして私は、その人物を守るようにして前に立った。
それからすぐに、短剣を持ったクリスティーナ様が私の前に現れた。
(やっぱりね……!)
彼女は自身の前に立ちはだかった私を見て眉をひそめた。
「そこ、どいてくれます?王妃陛下」
「嫌よ」
私の返事を聞いたクリスティーナ様は、持っていた短剣を私に向けた。
しかし、私も退くわけにはいかない。
「お、王妃陛下……!?何故……!?」
私の背に隠れるようにして守られている女性が驚きの声を上げた。
まぁ、そうなるのも無理はない。
私が今必死で守っている人は、今まで散々私を馬鹿にしてきた人物なのだから。
「死にたくないのならそこでじっとしてなさい。――第二側妃アンナ」
そう、私が探した人物とは第二側妃のアンナ様のことだった。
数多くいる貴族たちの中でリズ様が真っ先に殺されたという時点で私は、クリスティーナ様の狙いが陛下の側妃・愛妾たちであることに気付いたのだ。
だからこそ、こんな風にして彼女を守っている。
アンナ様のことは好きではないが、別に死を望んでいるほど嫌いなわけではなかった。
何より、これ以上犠牲者を出したら王弟殿下に合わせる顔が無い。
「どきなさいよ!私はその女を殺すのよ!」
「あら、それなら私を殺してからにするのね」
「くっ……」
私がそう言うと、彼女は何故か気が乗らないというような顔をした。
「王妃陛下!危険です!逃げてください!」
「黙りなさい。聞こえなかったの?」
後ろで泣きながら声を上げるアンナ様。
私の身を案じているとでもいうのだろうか。
あれほど嫌っていたのに。
そんな私たちの様子をしばらくじっと見つめていたクリスティーナ様が、突然口の端を上げた。
「ハッ……良いわ……計画には無かったけれど、私の邪魔をするというなら貴方も殺してあげる」
「……!」
その瞬間、クリスティーナ様の目に狂気が宿った。
あれは本当にやる人間の目だ。
(まずいわね……)
騎士が来るまでの時間稼ぎのつもりだったが、もしかすると私はここで死ぬかもしれない。
逃げようにも、私がここから立ち去ればアンナ様が危なくなる。
「ひ、ひぃ……」
彼女は恐怖で動けなくなっているようで、床に座り込んでいる。
「可哀相な王妃様……私がここで息の根を止めてあげるわ」
そうしているうちにも、クリスティーナ様が短剣を構えて私に向かってくる。
「!」
騎士たちは間に合わない。
避けようにも、私が彼女のスピードに敵うはずがない。
「王妃陛下!!!」
後ろでアンナ様の泣き叫ぶ声が聞こえてくる。
(あ……ごめんなさい……私もうダメみたい……)
そう思ったとき、王弟殿下との思い出が頭に浮かんだ。
王宮で彼と遊んだ記憶、二人で市井に行った記憶、本当に本当に大切な彼との思い出。
もう二度と殿下と会えないのだと思うと涙が出そうになってくる。
「殿下……」
――会いたいです
死を覚悟したそのとき――
突然体をグイッと抱き寄せられた。
「!?」
「間に合って良かった」
聞き覚えのあるその声に顔を上げると――
「王弟殿下……?」
泣きそうな顔で私をしっかりと抱き締めている王弟殿下の姿が目に入った。
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