20 / 37
疑い
しおりを挟む
それから数日後、お兄様が王宮へとやって来た。
「―王妃陛下」
お兄様が部屋に入ってくるのを見て私は侍女たちに部屋から出るように命じた。
それから彼らが部屋から出て行き、お兄様と二人きりになったタイミングで口を開いた。
「お兄様、第一側妃のリリア様がつい最近クリスティーナ様に嫌がらせをしたとして追放されたのをご存知ですか?」
「ああ、知っているさ。社交界ではその話で持ち切りだからな」
私の向かいに座ったお兄様は軽く頷きながらそう言った。
やはりもう既に貴族たちにも広まっていたようだ。驚きを隠せない者も多いだろう。リリア様は五人の側妃と愛妾たちの中で最も陛下のお気に入りであると言われていた人物なのだから。
「俺も最初陛下があの側妃を追放したと聞いたときは驚いた」
「私もです」
「分かりきっていたことだが、陛下は相当あの新しい愛妾に惚れ込んでいるようだな」
「ええ、そうですね・・・」
お兄様の言う通りだ。かつては愛した女を容赦なく追放するだなんて。それほどに陛下はクリスティーナ様に骨抜きにされているようだ。
「お兄様、私がお兄様をここへ呼んだのはあることを調べてほしかったからです」
それを聞いたお兄様はニヤリと口の端を上げた。
「ああ、分かっているさ。第一側妃が起こした事件の真相だろ?それならもう既に俺の方で調べが済んでいる」
「・・・!」
さすがはお兄様だ。私のことなら何でも分かっているらしい。
「ありがとうございます、お兄様。それで、どうだったのですか?」
「ああ・・・それがだな・・・残念だが・・・」
私が尋ねると、お兄様は言いづらそうに視線を逸らした。
「―第一側妃の愛妾クリスティーナに対しての嫌がらせは全て紛れもない事実だった」
「そんな・・・!」
実はほんの少しだけリリア様を信じていた気持ちがあった私はそのことを聞いて落胆した。
(本当だったなんて・・・)
何故私がここまで彼女を気にかけているのかというと、私にはリリア様の気持ちが分からなくもないからだ。三年前からずっと陛下を傍で支え続けてきたのに、それをポッと出の平民女に取られたのである。プライドの高いリリア様にとっては耐えられない屈辱だろう。しかもクリスティーナ様に関しては今まで側妃や愛妾として迎えられたどの女よりも陛下の寵愛が深いのだからそうなるのも無理はない。まぁ、そうだったとしてもやっていいことといけないことがあるが。
「では、冤罪の線は・・・」
「ああ、それは俺も無いと思う。あの側妃の性格からして普通にやりそうだ」
お兄様はそう言いながら調査結果が書かれた紙を机の上に置いた。
そこにはリリア様がクリスティーナ様にした嫌がらせが事細かに記載されていた。
(ドレスを切り裂く・・・陰口を叩く・・・紅茶をかける・・・)
どれもリリア様が本当にやりそうなことばかりだった。それからお兄様はハァとため息をついて言った。
「俺も裏に何かあると思ってたんだがな・・・どれだけ調べても出てくるのは側妃が犯した罪だけだった。カテリーナ、どうやら今回の件は本当に第一側妃がやらかしただけのようだ」
「ええ、そうですね・・・」
お兄様はそう言ったが、このときの私には何かが引っ掛かって仕方が無かった。
「―王妃陛下」
お兄様が部屋に入ってくるのを見て私は侍女たちに部屋から出るように命じた。
それから彼らが部屋から出て行き、お兄様と二人きりになったタイミングで口を開いた。
「お兄様、第一側妃のリリア様がつい最近クリスティーナ様に嫌がらせをしたとして追放されたのをご存知ですか?」
「ああ、知っているさ。社交界ではその話で持ち切りだからな」
私の向かいに座ったお兄様は軽く頷きながらそう言った。
やはりもう既に貴族たちにも広まっていたようだ。驚きを隠せない者も多いだろう。リリア様は五人の側妃と愛妾たちの中で最も陛下のお気に入りであると言われていた人物なのだから。
「俺も最初陛下があの側妃を追放したと聞いたときは驚いた」
「私もです」
「分かりきっていたことだが、陛下は相当あの新しい愛妾に惚れ込んでいるようだな」
「ええ、そうですね・・・」
お兄様の言う通りだ。かつては愛した女を容赦なく追放するだなんて。それほどに陛下はクリスティーナ様に骨抜きにされているようだ。
「お兄様、私がお兄様をここへ呼んだのはあることを調べてほしかったからです」
それを聞いたお兄様はニヤリと口の端を上げた。
「ああ、分かっているさ。第一側妃が起こした事件の真相だろ?それならもう既に俺の方で調べが済んでいる」
「・・・!」
さすがはお兄様だ。私のことなら何でも分かっているらしい。
「ありがとうございます、お兄様。それで、どうだったのですか?」
「ああ・・・それがだな・・・残念だが・・・」
私が尋ねると、お兄様は言いづらそうに視線を逸らした。
「―第一側妃の愛妾クリスティーナに対しての嫌がらせは全て紛れもない事実だった」
「そんな・・・!」
実はほんの少しだけリリア様を信じていた気持ちがあった私はそのことを聞いて落胆した。
(本当だったなんて・・・)
何故私がここまで彼女を気にかけているのかというと、私にはリリア様の気持ちが分からなくもないからだ。三年前からずっと陛下を傍で支え続けてきたのに、それをポッと出の平民女に取られたのである。プライドの高いリリア様にとっては耐えられない屈辱だろう。しかもクリスティーナ様に関しては今まで側妃や愛妾として迎えられたどの女よりも陛下の寵愛が深いのだからそうなるのも無理はない。まぁ、そうだったとしてもやっていいことといけないことがあるが。
「では、冤罪の線は・・・」
「ああ、それは俺も無いと思う。あの側妃の性格からして普通にやりそうだ」
お兄様はそう言いながら調査結果が書かれた紙を机の上に置いた。
そこにはリリア様がクリスティーナ様にした嫌がらせが事細かに記載されていた。
(ドレスを切り裂く・・・陰口を叩く・・・紅茶をかける・・・)
どれもリリア様が本当にやりそうなことばかりだった。それからお兄様はハァとため息をついて言った。
「俺も裏に何かあると思ってたんだがな・・・どれだけ調べても出てくるのは側妃が犯した罪だけだった。カテリーナ、どうやら今回の件は本当に第一側妃がやらかしただけのようだ」
「ええ、そうですね・・・」
お兄様はそう言ったが、このときの私には何かが引っ掛かって仕方が無かった。
51
お気に入りに追加
678
あなたにおすすめの小説
自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。
Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。
二人から見下される正妃クローディア。
正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。
国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。
クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。
大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる