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二人の王子

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私はあの後、侍女長に連れられて自室に戻った。


私と一緒にいるときの彼女は終始無表情で王弟殿下と会っていたことを良く思っていないのはたしかだった。


そのまま私は自室で一人溜息をついた。


(・・・よりによって侍女長に見つかるだなんて)


王宮の侍女長はただの侍女とは違う。


私の夫である陛下の母君の専属侍女だった方で、陛下からの信頼が最も厚い侍女だった。だからこそ、そのことを知っていた王弟殿下もあの場で強く出られなかったのだ。


おそらく先ほどの一件はすぐに陛下に報告が行くだろう。侍女長は国王陛下の忠臣だから。


(・・・いくらお飾りの王妃とはいえ、これは咎められそうだわ)


陛下は私を愛していない。しかし、彼にもプライドというものがある。正妃に浮気された、ともなれば当然怒るだろう。それに加えて、相手は彼の血の繋がった弟だ。


(陛下と殿下の仲は・・・決して良いとは言えなかった・・・)


母親の違う二人の王子。仲良くしろと言う方が無理な話だ。それでも幼い頃はまだ仲が良かった気がするが。


本来ならば王位を巡って戦争が起きてもおかしくはなかった。身分の低い愛妾が産んだ子で第一王子であるウィルフレッド殿下と、隣国の王女である王妃の子で第二王子のアルバート殿下。先王陛下はアルバート殿下を立太子させるべきだという貴族たちの声を無視して無理矢理ウィルフレッド殿下を王太子にした。


隣国から嫁いできた正妃を蔑ろにするだけではなく、愛妾の子供を王太子にしたのだ。そして、その正妃は愛妾とウィルフレッド殿下が原因で儚くなってしまった。


(・・・怒るのも無理はないわ)


先王陛下がこのような判断を下した時点で既に貴族たちからは猛反発の声が上がっていた。普通ならここで第一王子派と第二王子派に分かれて壮絶な戦いが起きるだろう。


しかし、騒ぐ貴族たちをよそにアルバート王弟殿下は王位に興味を示さなかった。


(王弟殿下が本気で王位を奪おうとしていたら、おそらく陛下は今国王という地位にはいなかったでしょうね)


王弟殿下は賢い人だ。彼が本気になれば、ウィルフレッド陛下はすぐにその椅子から引きずり下ろされるだろう。事実、隣国の王女の子供であるアルバート殿下を差し置いて王になったにも関わらず国王として決して優秀とは言えないウィルフレッド陛下に不満を抱いている貴族たちも多い。


(・・・まぁ、否定はしないけれどね)


クリスティーナ様を隣国からの刺客だと気付かずに王宮に召し上げた時点で王としては失格だ。


やはりウィルフレッド陛下は王の器ではない。アルバート王弟殿下の方が―


「・・・!」


無意識に彼のことばかり考えてしまっている自分に驚いた。私は首を横に振って一旦考えるのをやめた。今考えるべきなのはそのことではないからだ。


(ハァ・・・そろそろ陛下に報告が行っているかしらね・・・)


陛下は王弟殿下をあまり良く思っていない。それだけはたしかだ。


(これはまた面倒なことになりそうだわ・・・)


私はこれからのことを想像して自室で一人頭を抱えた。


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