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本編
47 恋?
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『私が、君を気に入っているから。舞踏会で君を隣に連れて歩きたいから。だから君をパートナーに誘ったんだ』
「・・・」
「聖女様」
「・・・」
「聖女様、聞いているのですか?」
「・・・」
「聖女様ッ!!!」
「ハッ!!!」
私は講師の怒鳴り声で我に返った。気付けば講師は私の目の前まで来て不快そうな顔で私を見下ろしていた。
「まさか、聞いていなかったんですか?」
「あ、も、申し訳ありません・・・」
私が正直にそう言うと講師はため息をついた。
「ハァ・・・貴方はいつもそうですね。何度言ったら分かるのですか」
「い、以後気を付けます・・・」
(私ったら・・・授業中に他のことを考えてしまうだなんて・・・)
こんなのは初めてだ。王太子殿下に舞踏会の誘いを受けてから、いつまで経っても彼のことが頭から離れなかった。
「・・・今日の授業はこれで終わりにしましょう。今の貴方は見ているだけで不愉快ですから」
「あ、はい・・・分かりました・・・」
それだけ言うと講師は不機嫌そうに部屋を出て行った。今回ばかりは私に落ち度があるので仕方がない。
しかし今の私にとってはそんなこと気にもならなかった。
「・・・フィリクス王太子殿下」
誰もいなくなった部屋で私は彼の名前を呼んだ。思えば、こうやって殿下の名前を声に出したことはあまり無かったかもしれない。いつも殿下と呼んでいたから。
彼はこの国の王太子で私とは身分の違う人。私は聖女ではあるが平民出身だし、絶対に関わることなんてないって思ってた。
だけどアレックスとの婚約を解消してからというもの、私はかなり殿下と関わりを持つようになった。それから彼と深く関わっていくうちに私の中である疑問が浮かび上がった。
殿下は何故ここまで私に優しくしてくれるのか。
その答えは既に出ていた。
(もしかして・・・殿下は・・・)
―私のことが好きなのだろうか。
考えるだけで胸が高鳴った。
思えば彼は最初から私に優しかった。公の場で見る殿下はいつも冷たい雰囲気を持つ方だった。その美しすぎる容姿も相まって人間らしさをまるで感じられないほどだった。それが、私の前でだけは―
『―さっき、嬉しそうな顔してた』
『もっと自分に自信を持ってくれ。君は素敵な人だ』
『よければ私と一曲踊ってはくれないだろうか』
「・・・」
私の記憶の中にいる彼はいつも優しい笑みを浮かべていた。王太子殿下は誰とでもそんな風に接するような人ではない。そのことは私も分かっていた。
私は今までずっと王太子殿下が自分に優しくしてくれるのは妹のやったことを気にしているからだと思っていた。だけど前に彼がそれは違うと言っていた。
あの日から、王太子殿下のことを考えるだけで変になる自分がいた。何だか落ち着かない気持ちになるのだ。
(もしかしたら・・・私も・・・)
―コンコン
「!」
そのとき、部屋の扉がノックされた。
「聖女様、失礼します」
中に入って来たのは一人の侍女だった。
「夕食のご用意が出来ました」
「あ・・・すぐに行きます」
どうやら考え込んでいるうちに夕方になっていたようだ。私は机の上に広げたままにしてあった勉強用具を片付けて部屋を出た。
そして私はこの日からしばらくの間、自分でもよく分からないこの感情に悩まされ続けることとなった。
「・・・」
「聖女様」
「・・・」
「聖女様、聞いているのですか?」
「・・・」
「聖女様ッ!!!」
「ハッ!!!」
私は講師の怒鳴り声で我に返った。気付けば講師は私の目の前まで来て不快そうな顔で私を見下ろしていた。
「まさか、聞いていなかったんですか?」
「あ、も、申し訳ありません・・・」
私が正直にそう言うと講師はため息をついた。
「ハァ・・・貴方はいつもそうですね。何度言ったら分かるのですか」
「い、以後気を付けます・・・」
(私ったら・・・授業中に他のことを考えてしまうだなんて・・・)
こんなのは初めてだ。王太子殿下に舞踏会の誘いを受けてから、いつまで経っても彼のことが頭から離れなかった。
「・・・今日の授業はこれで終わりにしましょう。今の貴方は見ているだけで不愉快ですから」
「あ、はい・・・分かりました・・・」
それだけ言うと講師は不機嫌そうに部屋を出て行った。今回ばかりは私に落ち度があるので仕方がない。
しかし今の私にとってはそんなこと気にもならなかった。
「・・・フィリクス王太子殿下」
誰もいなくなった部屋で私は彼の名前を呼んだ。思えば、こうやって殿下の名前を声に出したことはあまり無かったかもしれない。いつも殿下と呼んでいたから。
彼はこの国の王太子で私とは身分の違う人。私は聖女ではあるが平民出身だし、絶対に関わることなんてないって思ってた。
だけどアレックスとの婚約を解消してからというもの、私はかなり殿下と関わりを持つようになった。それから彼と深く関わっていくうちに私の中である疑問が浮かび上がった。
殿下は何故ここまで私に優しくしてくれるのか。
その答えは既に出ていた。
(もしかして・・・殿下は・・・)
―私のことが好きなのだろうか。
考えるだけで胸が高鳴った。
思えば彼は最初から私に優しかった。公の場で見る殿下はいつも冷たい雰囲気を持つ方だった。その美しすぎる容姿も相まって人間らしさをまるで感じられないほどだった。それが、私の前でだけは―
『―さっき、嬉しそうな顔してた』
『もっと自分に自信を持ってくれ。君は素敵な人だ』
『よければ私と一曲踊ってはくれないだろうか』
「・・・」
私の記憶の中にいる彼はいつも優しい笑みを浮かべていた。王太子殿下は誰とでもそんな風に接するような人ではない。そのことは私も分かっていた。
私は今までずっと王太子殿下が自分に優しくしてくれるのは妹のやったことを気にしているからだと思っていた。だけど前に彼がそれは違うと言っていた。
あの日から、王太子殿下のことを考えるだけで変になる自分がいた。何だか落ち着かない気持ちになるのだ。
(もしかしたら・・・私も・・・)
―コンコン
「!」
そのとき、部屋の扉がノックされた。
「聖女様、失礼します」
中に入って来たのは一人の侍女だった。
「夕食のご用意が出来ました」
「あ・・・すぐに行きます」
どうやら考え込んでいるうちに夕方になっていたようだ。私は机の上に広げたままにしてあった勉強用具を片付けて部屋を出た。
そして私はこの日からしばらくの間、自分でもよく分からないこの感情に悩まされ続けることとなった。
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