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本編
49 前夜
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そして、時が過ぎ舞踏会が開催される前日となった。明日の舞踏会では他国の貴賓も招待されるからか王宮はかなり慌ただしくなっている。私はいつも通りの日々を送っていたが。
私の部屋にある机の上には明日の舞踏会で着るドレスと宝飾品一式が置かれていた。
(まさかドレスまで用意してくれるだなんて・・・)
王太子殿下は明日の舞踏会のためのドレスを私に贈ってくれたのだ。
ドレスが入っていた箱の中には王太子殿下からのメッセージカードも同封されていた。
『明日、部屋まで迎えに行くからこれを着て待っていてくれ』
私はメッセージカードを机の上に置き、箱からドレスを出した。
私の瞳と同じ空色のドレス。もしかしたら王太子殿下が直接選んでくれたのだろうか。正直に言うと殿下に直接聞いてみたいが、明日の舞踏会になるまで彼とは会えそうもない。
殿下にパートナーとしてのお誘いを受けたあの日から、彼とは一度も会っていない。王太子付きの侍女の話によると彼は最近忙しいようで、なかなか時間が取れないのだという。このドレスも人づてに届いたものだ。
もう何日も王太子殿下の姿を見ていないからか、どうも落ち着かない。授業を受けていてもまるで集中出来ないし、食事をしている最中でさえ彼のことを考えてしまう自分がいる。
どうやら私の人生で殿下の存在というのはそれほどに大きなものだったらしい。そのことに今ようやく気付いた。いつからそんな風になったのかは自分でも分からないが。
(フローレス公爵閣下が最近よく王太子殿下の元へ訪れているみたいだけど、それと何か関係があるのかな・・・)
あれからフローレス公女とは王宮でよくお会いするようになった。どうやら公女の父君であるフローレス公爵閣下が頻繁に王太子殿下に会いに来ているようで、フローレス公女はその付き添いとして毎回来ているのだという。
そのことについてももちろん気になるが、今はそれ以上に―
(・・・・・何だろう、何だかよく分からないけど・・・嫌な予感がする)
王女殿下と口論になったあの日からずっとしているこの胸騒ぎは一体何なのだろうか。確信なんてどこにも無いのに、明日の舞踏会で何か良くないことが起きるような気がするのだ。
もしかすると聖女の勘というやつなのかもしれない。聖女にはそんな予知能力があるのだろうか。
「うーん・・・」
結局、どれだけ考えてもその胸騒ぎの正体は分からずじまいだった。ずっと考え込んでいたせいで頭が痛くなってしまった私はそこで考えるのをやめた。
(・・・・・・今日はもう寝よう)
そして、明日に備えて早めにベッドに入った。
私の部屋にある机の上には明日の舞踏会で着るドレスと宝飾品一式が置かれていた。
(まさかドレスまで用意してくれるだなんて・・・)
王太子殿下は明日の舞踏会のためのドレスを私に贈ってくれたのだ。
ドレスが入っていた箱の中には王太子殿下からのメッセージカードも同封されていた。
『明日、部屋まで迎えに行くからこれを着て待っていてくれ』
私はメッセージカードを机の上に置き、箱からドレスを出した。
私の瞳と同じ空色のドレス。もしかしたら王太子殿下が直接選んでくれたのだろうか。正直に言うと殿下に直接聞いてみたいが、明日の舞踏会になるまで彼とは会えそうもない。
殿下にパートナーとしてのお誘いを受けたあの日から、彼とは一度も会っていない。王太子付きの侍女の話によると彼は最近忙しいようで、なかなか時間が取れないのだという。このドレスも人づてに届いたものだ。
もう何日も王太子殿下の姿を見ていないからか、どうも落ち着かない。授業を受けていてもまるで集中出来ないし、食事をしている最中でさえ彼のことを考えてしまう自分がいる。
どうやら私の人生で殿下の存在というのはそれほどに大きなものだったらしい。そのことに今ようやく気付いた。いつからそんな風になったのかは自分でも分からないが。
(フローレス公爵閣下が最近よく王太子殿下の元へ訪れているみたいだけど、それと何か関係があるのかな・・・)
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そのことについてももちろん気になるが、今はそれ以上に―
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もしかすると聖女の勘というやつなのかもしれない。聖女にはそんな予知能力があるのだろうか。
「うーん・・・」
結局、どれだけ考えてもその胸騒ぎの正体は分からずじまいだった。ずっと考え込んでいたせいで頭が痛くなってしまった私はそこで考えるのをやめた。
(・・・・・・今日はもう寝よう)
そして、明日に備えて早めにベッドに入った。
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