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断罪劇④

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私は目の前にオロオロする男爵令嬢をじっと見つめた。


「な、何……?」


その鋭い視線にヒロインは怖気づいているようだった。
肩をビクリと震わせて後ずさった。


「単刀直入に言わせてもらいますわ。――レイチェル様、貴方魅了をお使いでしょう?」


私の言葉に、会場中が騒然となった。
当然だ、魅了魔法なんてものはどの国でもタブーなのだから。


「魅了だって……!?そんなもの実在するのか!?」
「ありえない、現代でそんなことが……」
「しかし、もしグレイス男爵令嬢が魅了を使っていたのなら取り巻きたちのおかしな行動にも納得がいくな……」


もちろん、私だって最初はありえない話だと思っていた。
しかし証拠は揃っているのだ。
言い逃れは出来まい。


「な、何よ魅了って!そんなの使ってるわけないじゃない!知らないわ!言いがかりよ!」
「――こちらをご覧ください」


私は隣にいた仮面の男から受け取った紙を男爵令嬢の目の前に突き付けた。


「何よこれ……」
「――貴方が王太子殿下に渡した菓子から魅了の成分が検出されました」
「そんな……!」


男爵令嬢の顔がみるみるうちに青褪めていく。


「じゃあまさか本当に……!?」
「何て女なの……高位貴族を魔術で操っていただなんて!」
「あの女は魔女だ!早く投獄しろ!」


会場のいたるところからレイチェルに罵声が浴びせられた。


「ああ、違う!私は本当に知らなかったのよ!どうして、どうしてこんなことに!」


男爵令嬢はとうとう頭を抱えてその場にうずくまった。
絶望を悟ったのか、床にポタポタと涙が零れ落ちた。


「嘘だろう……レイチェル……」
「僕たちに薬を盛っていたのか……?」
「そんな……レイチェル……」


取り巻きたちも術にかけられているとはいえ、衝撃的な事実にかなり動揺しているようだった。


「――男爵令嬢とその取り巻きたちを捕縛しろ」


レオンハルトの一声で王家の騎士たちが一斉に周囲を取り囲んだ。


「は、放せ!僕を誰だと思っているんだ!」
「私の体に触らないでよ!汚らわしい!」


彼らは最後まで抵抗を続けていたが、結局は騎士たちによって会場の外に連れ出された。
レイチェルたちがいなくなったことで、会場は再び静まり返った。


(あの人たちがいなくなるだけでこんなに静かになるなんてね……)


嵐が過ぎ去ったとはまさにこのことを言うのかもしれない。
レイチェルたちの処遇も気になるが、今はそれ以上に優先しなければならないことがある。


「王太子殿下、パーティーを再開しましょう。殿下も、シャルロッテ様と踊りたいのでしょう?」
「エ、エルシア嬢……そう言われると何だか恥ずかしいな……」


図星だったのだろう、レオンハルトは顔を真っ赤にした。


「ほら、早く何かおっしゃってください。皆殿下の言葉を待っているのですよ」
「あ、ああ……そうだな……」


私の後押しでレオンハルトは一歩前に出た。


「皆の者、今日はこのような場で騒ぎを起こしてしまってすまなかった。今日は年に一度開かれるパーティーだ。存分に楽しんでいってくれ」


彼のその言葉に、生徒たちの顔に笑みが広がっていった。


「はい、殿下!」


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