目が覚めたらクソ小説の世界のモブに転生していました。~悪役令嬢・その他救済計画!~

ましゅぺちーの

文字の大きさ
上 下
56 / 58

断罪劇④

しおりを挟む
私は目の前にオロオロする男爵令嬢をじっと見つめた。


「な、何……?」


その鋭い視線にヒロインは怖気づいているようだった。
肩をビクリと震わせて後ずさった。


「単刀直入に言わせてもらいますわ。――レイチェル様、貴方魅了をお使いでしょう?」


私の言葉に、会場中が騒然となった。
当然だ、魅了魔法なんてものはどの国でもタブーなのだから。


「魅了だって……!?そんなもの実在するのか!?」
「ありえない、現代でそんなことが……」
「しかし、もしグレイス男爵令嬢が魅了を使っていたのなら取り巻きたちのおかしな行動にも納得がいくな……」


もちろん、私だって最初はありえない話だと思っていた。
しかし証拠は揃っているのだ。
言い逃れは出来まい。


「な、何よ魅了って!そんなの使ってるわけないじゃない!知らないわ!言いがかりよ!」
「――こちらをご覧ください」


私は隣にいた仮面の男から受け取った紙を男爵令嬢の目の前に突き付けた。


「何よこれ……」
「――貴方が王太子殿下に渡した菓子から魅了の成分が検出されました」
「そんな……!」


男爵令嬢の顔がみるみるうちに青褪めていく。


「じゃあまさか本当に……!?」
「何て女なの……高位貴族を魔術で操っていただなんて!」
「あの女は魔女だ!早く投獄しろ!」


会場のいたるところからレイチェルに罵声が浴びせられた。


「ああ、違う!私は本当に知らなかったのよ!どうして、どうしてこんなことに!」


男爵令嬢はとうとう頭を抱えてその場にうずくまった。
絶望を悟ったのか、床にポタポタと涙が零れ落ちた。


「嘘だろう……レイチェル……」
「僕たちに薬を盛っていたのか……?」
「そんな……レイチェル……」


取り巻きたちも術にかけられているとはいえ、衝撃的な事実にかなり動揺しているようだった。


「――男爵令嬢とその取り巻きたちを捕縛しろ」


レオンハルトの一声で王家の騎士たちが一斉に周囲を取り囲んだ。


「は、放せ!僕を誰だと思っているんだ!」
「私の体に触らないでよ!汚らわしい!」


彼らは最後まで抵抗を続けていたが、結局は騎士たちによって会場の外に連れ出された。
レイチェルたちがいなくなったことで、会場は再び静まり返った。


(あの人たちがいなくなるだけでこんなに静かになるなんてね……)


嵐が過ぎ去ったとはまさにこのことを言うのかもしれない。
レイチェルたちの処遇も気になるが、今はそれ以上に優先しなければならないことがある。


「王太子殿下、パーティーを再開しましょう。殿下も、シャルロッテ様と踊りたいのでしょう?」
「エ、エルシア嬢……そう言われると何だか恥ずかしいな……」


図星だったのだろう、レオンハルトは顔を真っ赤にした。


「ほら、早く何かおっしゃってください。皆殿下の言葉を待っているのですよ」
「あ、ああ……そうだな……」


私の後押しでレオンハルトは一歩前に出た。


「皆の者、今日はこのような場で騒ぎを起こしてしまってすまなかった。今日は年に一度開かれるパーティーだ。存分に楽しんでいってくれ」


彼のその言葉に、生徒たちの顔に笑みが広がっていった。


「はい、殿下!」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です> 【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】 今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

処理中です...