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悪夢の始まり レイチェルside

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ついに断罪劇が始まってしまった。
周囲の生徒たちが一斉に私たちに注目している。
主に私たちへの冷たい目。
当然だ、私が学園で何をしていたか全員が知っているのだ。


(ああ……私どうなっちゃうんだろう……)


絶望の表情をする私とは打って変わって、取り巻きたちはどこか自慢げである。
どのような考えをすればそのようにポジティブに考えることが出来るのだろうか。
そのメンタルを私に授けてほしい。


そのとき、シャルロッテ皇女を守るようにレオンハルト様が前に出た。
まるで愛するお姫様を守る王子様みたいだった。
私が憧れているシチュエーションはまさにこれだ。


(私の入る隙なんてどこにも無いじゃない……仲悪いって嘘だったの?)


貴族の噂話なんてあてにならないなと今になって思った。


そこで一歩前に出たのはエルシア・ハワンズ公爵令嬢だった。


「一体何でしょうか?申し上げたいことならこんな風に公衆の面前で言わずともよろしいのではなくって?」
「いいえ、私が申し上げたいのは貴方がたの罪に関してです」
「……罪?」


(ああ、やめて!お願いだからその先は言わないで!)


会場にいる全員が私たちを冷めた目で見ている。
何故そのことに気付かないんだ。


「シャルロッテ皇女とハワンズ嬢、そしてカイル・フォース公爵令息は寄ってたかってここにいるレイチェルに嫌がらせをしていたのです!!!」


取り巻きの一人が自信満々にそう言った。


(……本当にやめて。みんな冷たい顔してるから)


案の定シャルロッテ皇女とハワンズ嬢は顔をしかめた。
そうなるのも無理はない、彼女たちは何もしていないのだから。


「……嫌がらせとは一体何のことでしょうか?私はそもそもその方とは入学式以来関わっておりません」
「嘘をついても無駄ですよ。貴方がたがレイチェルに嫌がらせをしていることは既に分かっているのですから」
「証拠はあるのですか?」
「レイチェルの証言だけで十分です。こんなに愛らしい彼女が嘘を付くわけがないでしょう」


(ちょっと!断罪するなら証拠くらい用意しときなさいよ!)


仮に嫌がらせが事実だったとして、証拠が無ければ虚言として片付けられてしまう可能性がある。
そんなのは当たり前のことだ。


ハワンズ嬢は呆れて言葉も出ないというように、ハァとため息をついた。


(呆れられてるわよ、あなた)


そして取り巻きたちはそれに全く気付いていない。
何故そこまで自信を持てるのだろう。
私はさっきからハラハラしているというのに。


「それが貴方の答え、ということでよろしいですわね?」
「……どういう意味ですか?」
「もう一度だけ聞きます。それが貴方がたの答え、ということでよろしいのですわね!?」
「は、はいッ!」
「……そうですか」


ハワンズ嬢は開いていた扇子をパタリと閉じた。


「――なら、わたくしからも申し上げたいことがございます」
「……?」


そのとき、ハワンズ嬢が私を見て不敵な笑みを浮かべた。


(な、何……?)


その姿はまるで物語に出てくる悪役令嬢のようだった。
そしてこの後すぐ、どん底に落とされてしまうことになるだなんてこのときの私は知る由も無かった。


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