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憂鬱 レイチェルside

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(と、とうとう来てしまったわ……!)


私はとても焦っていた。
今日は学園の生徒全員が参加するパーティーが開かれる日だったからだ。


私は前からこの日を本当に楽しみにしていた。
つい最近まで平民だった私にとってパーティーなんて初めてだったし、是非レオンハルト様とダンスをしたいと思っていたから。
一週間前から楽しみで夜も眠れないほどだった。
それも昨日までの話だが。


「レイチェル、アイツらを断罪する準備は出来ているよ」
「断罪劇、必ず成功させてみせるから。君は僕たちの後ろにいるだけでいい」
「そうだ、シャルロッテ皇女とエルシア・ハワンズ。そしてカイルフォース……必ず全員地獄に堕としてみせる」
「……」


(やめて!誰かに聞かれたらどうすんのよ!ああ、私の人生終わった……)


もう今から遠くへ逃げてしまおうか。
彼らの手が及ばない場所まで逃げれば、断罪は無くなるかもしれない。
昨日の夜、そんなことを考えたりもしたが、この先一人で生きていける自信が無かった。


(一番最悪なのは私が主犯にされてしまうことだわ……もしそうなったら処刑されちゃうかも……)


頼みの綱であるレオンハルト様は私に無関心だし、他の貴族令嬢たちは学園で逆ハーレムを築いている私を快く思っていない。
つまり、私を助けてくれる人は誰もいないのだ。


「僕がレイチェルをエスコートするんだ!」
「いや俺がする!」
「お前じゃレイチェルには相応しくない!俺の方が!」
「……」


目の前で醜い争いを繰り広げている取り巻きたちを見て心の中でまたため息をついた。


(どうすればいいの……私は……こんなの望んでないのに……)


ただ私は皇女からレオンハルト様を奪えればそれで良かった。
シャルロッテ皇女とレオンハルト様が不仲だということは貴族の中では有名な話だった。
皇女の方が王太子を嫌っていると。


だからこそ、別に大した問題にはならないと思ったのだ。


私は昔からお姫様というものに憧れていた。
両親にさえ愛されなかった私とは正反対な、誰からも愛される美しいお姫様。


レオンハルト様に一目惚れをしたのももしかすると、本物の王子様というフィルターがかかっていたからかもしれないと今なら思える。


(私は……調子に乗りすぎたのかな……?)


――私はただ、みんなから愛されるお姫様になりたかっただけなのに。


「――レイチェル」
「……!」


取り巻きの声でハッとなって我に返った。


「な、何……?」
「僕たちみんなで相談して決めたんだ」
「な、何を……?」


嫌な予感がする。
お願いだからこれ以上迷惑をかけないでほしい。


そんな私の願いは、結局叶うことは無かった。


「――今日のパーティーは全員でレイチェルをエスコートしようって」
「……」


――お願い、もうやめて。
そんな私の願いは、もう誰にも届かない。


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