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一度目の人生③
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それから少しして、何とカイルとレオンハルトの決闘が行われるという話を聞いた。
(レオンハルト殿下とカイルが……!?)
これを聞いた女子生徒たちは例の男爵令嬢を巡っての男の戦いだと盛り上がった。
しかし、私だけは真実を知っていた。
(きっとカイルは……レオンハルト殿下の目を覚まさせようとしているんだわ)
彼がこのような強硬手段に出るとは正直思わなかったが、それほどに事態が深刻であるということだろう。
(そうよね……シャルロッテ皇女殿下も学園にいるのだし、なるべく早く解決するべきだわ)
何も出来ない自分が情けない。
カイルは今でも大変なのに。
(だけど……これで殿下が目を覚ましてくれたら何よりだわ)
少々強引ではあるが、カイルの決断を信じよう。
私はそう思い、あえて決闘を見に行くことは無かった。
***
「ウ……ソ……」
数日後、カイルとレオンハルトの決闘が行われたその日、学園の生徒から話を聞いた私は持っていたティーカップを思わず落としてしまいそうになった。
「そ……それは本当なんですか……?」
「はい……王太子殿下とフォース公爵令息の決闘で……――フォース公爵令息が敗北したと」
「……ッ!!!」
言葉が出なかった。
とてもじゃないけれど信じられない。
(ウソ……カイルが負けた……?そんなのありえない、だって彼は同年代の誰よりも強かったのに!)
彼の剣術の練習に何度か差し入れを持って見学しに行ったことがあったが、カイルだけ他の騎士たちよりも頭一つ飛び抜けていたくらいだ。
そんな彼が他の人に負けてしまうだなんて。
「どうして……」
「エ、エルシア様……私も信じられません……あのフォース令息が負けるだなんて」
「そうよね……」
カイルの強さは学園内でも有名で、あの騎士団長からも一目置かれるほどだった。
「……カイルは無事なの?怪我したりは……」
「あ、それが……頭を負傷したと聞いております」
「……!!!」
気付けば私は、医務室へと走り出していた。
「エ、エルシア様!?」
「すみません!私、カイルの元に行ってきます!」
貴族令嬢が走るだなんてみっともないことだが、このときの私は彼が心配で仕方が無かった。
「――カイル!!!」
「……エルシア?」
医務室の扉を強引に開けた私に、中にいたカイルが驚いたような顔をした。
そして彼の頭には包帯が巻かれていた。
「カイル!無事で良かった!」
「エルシア……」
安心した私は、カイルに抱き着いていた。
「ああ……本当に……無事で良かった……」
「エルシア……」
彼の胸でわんわん泣き喚く私を、彼は優しく抱き締め返した。
(レオンハルト殿下とカイルが……!?)
これを聞いた女子生徒たちは例の男爵令嬢を巡っての男の戦いだと盛り上がった。
しかし、私だけは真実を知っていた。
(きっとカイルは……レオンハルト殿下の目を覚まさせようとしているんだわ)
彼がこのような強硬手段に出るとは正直思わなかったが、それほどに事態が深刻であるということだろう。
(そうよね……シャルロッテ皇女殿下も学園にいるのだし、なるべく早く解決するべきだわ)
何も出来ない自分が情けない。
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(だけど……これで殿下が目を覚ましてくれたら何よりだわ)
少々強引ではあるが、カイルの決断を信じよう。
私はそう思い、あえて決闘を見に行くことは無かった。
***
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「……ッ!!!」
言葉が出なかった。
とてもじゃないけれど信じられない。
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彼の剣術の練習に何度か差し入れを持って見学しに行ったことがあったが、カイルだけ他の騎士たちよりも頭一つ飛び抜けていたくらいだ。
そんな彼が他の人に負けてしまうだなんて。
「どうして……」
「エ、エルシア様……私も信じられません……あのフォース令息が負けるだなんて」
「そうよね……」
カイルの強さは学園内でも有名で、あの騎士団長からも一目置かれるほどだった。
「……カイルは無事なの?怪我したりは……」
「あ、それが……頭を負傷したと聞いております」
「……!!!」
気付けば私は、医務室へと走り出していた。
「エ、エルシア様!?」
「すみません!私、カイルの元に行ってきます!」
貴族令嬢が走るだなんてみっともないことだが、このときの私は彼が心配で仕方が無かった。
「――カイル!!!」
「……エルシア?」
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そして彼の頭には包帯が巻かれていた。
「カイル!無事で良かった!」
「エルシア……」
安心した私は、カイルに抱き着いていた。
「ああ……本当に……無事で良かった……」
「エルシア……」
彼の胸でわんわん泣き喚く私を、彼は優しく抱き締め返した。
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