目が覚めたらクソ小説の世界のモブに転生していました。~悪役令嬢・その他救済計画!~

ましゅぺちーの

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最悪の未来

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「ハァ……ハァ……」


目が覚めたとき、まだ外は真っ暗だった。
こんな夜中に起きたのは初めてかもしれない。


額に汗が滲んでいる。
ついさっき見た夢が忘れられない。
あの記憶は一体何なのだろうか。
どう考えても私が憑依する前のエルシアの記憶では無さそうだ。


考えを巡らせた結果、私はある一つの結論に辿り着いた。


(……もしかして)


「あの小説の本当の結末は……バッドエンドだったの……?」


前は曖昧だったのに、今日の夢は何故だか鮮明に思い出せる。


炎に包まれていた王宮。
怒声を上げる民衆たち。
逃げ出す家臣。


(まさか……本当にそんなことが……)


小説の中の結末は誰から見てもハッピーエンドだった。
侵略者を倒した王子と男爵令嬢は真実の愛で結ばれて。
私はきっとその後も幸せに暮らしたのだろうなと思った。
しかし、実際は違ったのだ。


(だとしたら……なおさら何もしないわけにはいかないわ……!)


誰も幸せにならない世界。
そんなことが起きてはならない。


私は拳をギュッと握り締めてベッドから起き上がった。





***





「――君から会いに来るだなんて珍しいな、エルシア嬢」
「王太子殿下、無礼をお許しください」
「いや、かまわないよ。何が大事な用があったんだろう」


翌日の朝、私はすぐにレオンハルトのいる王宮へと向かった。
今日は学園が休みの日だった。


「それで、何か分かったことでもあったのか?」
「あ、いえ……今日私がここへ来たのには少々別の意味があって……」
「別の意味?」


レオンハルトが不思議そうな顔をした。


(今のところ、おかしくなっている様子はないわね……)


小説の中でのレオンハルトは誰から見ても異常なくらいヒロインを盲目的に愛していた。
最初の頃は私もそれほどヒロインに魅力があったのだろうと考えたが、今ではどうもそれが疑わしい。


(レオンハルトは元々賢い人よ……いくら恋に落ちたとしてもあんなのはおかしいわ……)


「――殿下、グレイス男爵令嬢に気を付けてください」
「……グレイス男爵令嬢?」


ヒロインに良いイメージを抱いていないのか、その名を聞いたレオンハルトが眉をひそめた。
実際、ヒロインは未だにレオンハルトにアプローチを続けている。
それも、婚約者であるシャルロッテが隣にいるときでもお構いなしにだ。
レオンハルト自身はそれを疎ましく思っているみたいだが。


「……君がそんな風に言うということは、何か理由があるんだろう?」
「……はい」


レオンハルトが”言ってみろ”という視線を向けた。


「……その前に、殿下に一つお願いがあります」
「……お願い?」


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