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断罪の準備

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「来月開かれるパーティーで……ですか?」
「ああ、そこで彼を断罪するのが一番良いと思う」


授業が終わり、下校時刻となった。
他の生徒たちが次々と家へ帰るなかで私はレオンハルトと二人個室にいた。
話の内容はもちろんモーク伯爵家に関することだ。


「私としては、一刻も早くカイルを復学させたい。しかしまだ決定的な証拠が見つかっていないのだ」
「なかなか険しい道のりですね……」


私だってレオンハルトと同じ気持ちだ。
だが、モーク伯爵家がハワンズ公爵家を乗っ取ろうとしているという決定的な証拠が無い以上いくら王太子であるレオンハルトでも伯爵家を断罪するのは不可能に近かった。


「このことは陛下もご存知なのですか?」
「ああ、既に報告してある。モーク家がそれを企てているという決定的な証拠を見つけ出せと仰っていた」
「それが無い限りは進まないみたいですね……」


まずは証拠集めから、ということだ。


(ああ、私があのときのリオン様とお兄さんの会話を録音していればなぁ……)


後悔しても遅すぎた。


「ですが殿下、何故パーティーでの断罪を決めたのですか?」
「ああ、学園に通っている者たちにカイルの潔白を証明しなければいけないからな。パーティーでモーク伯爵令息の罪を明らかにすれば自然とカイルの名誉も戻るだろう」
「なるほど……」


学園では、未だにカイルを暴力男だと思っている生徒も多い。
彼は普段から無口で無愛想だったから、彼のことをよく知らない人が多いのだ。


「殿下、私もお手伝いしたいです」
「ありがとう、だが君は今まで通りカイルの心のサポートをしてほしい」
「……?分かりました」


不思議に思いながらも頷くと、レオンハルトは満足げな笑みを浮かべた。


(何だろう?嬉しそうだな)


もちろん私にとってもカイルと定期的に会えるのは嬉しいことだけれど。


「カイルの様子はどうだ?しっかり食事は摂っているか?」
「あ、はい。両親とも和解出来たようで……今はなんだかんだ元気にやっていますよ」
「そうか、それはよかった」


そしていつものように、レオンハルトは私にカイルについて尋ねた。
これで今日のところは解散かと思ったが、ここで普段と違うことが起きた。


「それで、その……エルシア嬢は……」
「はい?」


レオンハルトは続けて私に何かを尋ねようとしているみたいだった。


(何かしら……?)


「その……記憶は取り戻せたか……?」
「え?記憶?」


何を言っているのかが分からず、首をかしげた。


「あ、いや、何でもない。今のは忘れてくれ」
「あ、はい……分かりました……」


(何だろう?変なレオンハルト……)


彼はこんなキャラだっただろうか。
どうも私の記憶にあるレオンハルトとはだいぶ違うような気がする。


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