目が覚めたらクソ小説の世界のモブに転生していました。~悪役令嬢・その他救済計画!~

ましゅぺちーの

文字の大きさ
上 下
28 / 58

疑問

しおりを挟む
それから私は、カイルとフォース公爵夫妻と共に夕食を摂った後に湯浴みをした。


(ハワンズ公爵邸に負けないくらい大きいわね……)


私に割り当てられたのはカイルの隣にある部屋だった。
直々に部屋の案内をしてくれた公爵夫人の話によると、ここは代々フォース公爵家の令嬢が使ってきた部屋らしい。
ちなみにカイルの部屋はもちろん公爵家の嫡男が使うところだ。


(そんな部屋を私に使わせてくれるだなんて……)


公爵夫人の配慮に驚いた。
いくらカイルの友人だからって、ここまでしてもらっていいのだろうか。
フォース公爵夫人が若い頃に着ていた室内用のワンピースを借りた私は、ひとまずカイルに会いに行った。


彼がいるのは隣の部屋なのですぐに着いた。


「――カイル、いる?」
「エルシア?」


部屋の中にいたカイルは入って来た私を見て目をぱちくりさせた。


「どうしたんだ?急にここへ来て」
「暇だったから……カイルと少し話そうかなって」
「そうか」


私から顔を背けたカイルは少しだけ口角が上がったように見えた。


(もしかして、嬉しいの?)


あの事件が起きた日から長らく不思議に思っていたことがあった。


何故カイルが私のためにここまでしてくれるのかがどうしても分からない。
少し前までは、彼は私のことを嫌っているのだとずっと思っていた。
だからこそあんな風に冷たく当たって何かと嫌味を言ってくるのだと。
だけど、今の彼を見る限り――


(…………どうして?)


以前の彼と別人のように見えるのは気のせいだろうか。
どうしてそんなに優しくしてくれるのだろう。


私の中でそんな疑問が膨れ上がっていく。
カイルの考えがまるで分からない。


「ねぇ、カイル……」
「何だ?」


私の声に反応したカイルがこちらを向いた。
燃えるような赤い瞳が、私を映している。


「カイルは……どうして……」
「……」


一瞬迷ったが、私は思い切って聞いてみることにした。


「どうして……私のためにそこまでしてくれるの?」
「……」


ずっと気になっていたことだった。
聞く機会が無くて聞けていなかったけれど、どうしても理由を知りたかった。


私の質問に、カイルは目を見開いた後言いづらそうな顔をしながらも口を開いた。


「それは……お前が……」
「私が?」
「……」


きょとんとした顔になる私を見て、カイルは言葉を詰まらせた。
何故だかとても悲しそうな顔だ。


(……どうしたんだろう?)


何か言いづらいことでもあるのだろうか。
カイルの答えには全く見当がつかない。


「お前は……本当に……何も覚えていないのか……」
「覚えていない?一体何を?」
「……ッ」


とうとう彼が俯いてしまった。


(覚えていないってどういうこと……?私の知らない何かがあるの?)


彼の言っていることが上手く理解出来なかった。
私たち、前に何かあっただろうか。


(もしかして、私が忘れているだけ?)


私は彼の顔をじっと見つめた。


「カイル……私たち、以前会ったことがあったかしら?」
「……」
「カイル?」
「……悪い、今日はもうお前と話せそうにない」
「え、どうして……?」


私は慌てて理由を尋ねたが、彼はそんな私から背を向けてしまった。


「悪い、今日はもう部屋に戻って休んでくれ」
「カイル……!」


結局、私は何かを言う暇もなく部屋を追い出されたのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です> 【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】 今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?

ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる

mios
恋愛
ヒロインの味方をずっとしておりました。前世の推しであり、やっと出会えたのですから。でもね、ちょっとゲームと雰囲気が違います。 どうやらヒロインに利用されていただけのようです。婚約者?熨斗つけてお渡ししますわ。 金の切れ目は縁の切れ目。私、鞍替え致します。 ヒロインの味方のモブ令嬢が、ヒロインにいいように利用されて、悪役令嬢に助けを求めたら、幸せが待っていた話。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...