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二度目の訪問
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学園の帰り、私はまたしてもカイルの家へと向かった。
「お、お嬢様!?またフォース公爵邸へですか!?」
「ええ、用事があるの。お願いできるかしら?」
「いけません!旦那様と奥様が何て言うか……」
私は懐からそっと金貨の入った小包を取り出して御者の手に握らせた。
「これはせめてものお礼よ。――フォース公爵邸までお願い出来るかしら?」
「はい!行きます!」
チップを受け取った御者は最速のスピードで公爵邸へと馬車を走らせた。
それから約数十分後――
「エルシア嬢か」
「あら、またカイルに会いに来てくれたのかしら?」
「閣下……!夫人……!」
カイルの両親であるフォース公爵夫妻は、先触れも無く訪問したにもかかわらず快く私を邸へと入れてくれた。
(あれからカイルは両親とは話せたかしら……)
ご両親の顔が朝見たときよりも少しだけ明るくなっているような気がする。
ということはきっと話すことが出来たのだろう。
彼のためになったようで本当に良かった。
(私はカイルに恩返しがしたい……)
私だってカイルに救われたのだから。
彼には感謝してもしきれないほどの大恩がある。
「カイル!また会いに来たわよ!」
「エルシア……!」
私はドアを開けて、彼の部屋へと入った。
「こんなに頻繁に来て、大丈夫なのか?」
「平気よ!それほど長居はしないつもりだから」
「そうか……」
そう言うと、何故かカイルは悲しそうな顔をした。
(……あら?)
普段滅多に見ることの出来ないカイルのその姿が面白くて、私はつい彼をからかった。
「もしかして、私が帰っちゃうのが寂しいのかしら?」
「な……!?そ、そんなわけないだろう!」
案の定、カイルは顔を真っ赤にして反論してきた。
(うふふ、そんなに赤くなっちゃって)
何だか可愛らしい。
まさかカイルのことを可愛いと思う日が来るとは。
自分でも想像していなかったことだ。
「もう、照れなくていいのに」
「照れてない!」
そうは言っても、赤くなった顔は未だに戻っていない。
(何を話すべきかしら……?レオンハルトとのこと……?)
カイルの部屋にあった椅子に彼と向かい合わせで座った私は、何から話すべきかを悩んだ。
「あ、あのね……カイル……」
「どうした?」
カイルは優しい目で私が話すのを待ってくれた。
(カイル……)
私はずっとカイルのことを嫌な奴だと思っていた。
性格が悪くて、意地悪で、いっつも嫌味ばっかり言ってくる最低な奴だと。
だけどそれは間違いだった。
彼は人のために行動することの出来る、素晴らしい人間だ。
「カイル、話長くなりそうなんだけど、最後まで聞いてくれる?」
「……?当たり前だろう?」
当然だと、そう言ってくれる彼に胸が温かくなった。
貴族たちの間であまりにも長い話は嫌がられることも多いというのに。
「……ありがとう、カイル」
私は素直に礼を言い、ポツポツと学園でレオンハルトから聞いたことや、近況などを話し始めた。
「お、お嬢様!?またフォース公爵邸へですか!?」
「ええ、用事があるの。お願いできるかしら?」
「いけません!旦那様と奥様が何て言うか……」
私は懐からそっと金貨の入った小包を取り出して御者の手に握らせた。
「これはせめてものお礼よ。――フォース公爵邸までお願い出来るかしら?」
「はい!行きます!」
チップを受け取った御者は最速のスピードで公爵邸へと馬車を走らせた。
それから約数十分後――
「エルシア嬢か」
「あら、またカイルに会いに来てくれたのかしら?」
「閣下……!夫人……!」
カイルの両親であるフォース公爵夫妻は、先触れも無く訪問したにもかかわらず快く私を邸へと入れてくれた。
(あれからカイルは両親とは話せたかしら……)
ご両親の顔が朝見たときよりも少しだけ明るくなっているような気がする。
ということはきっと話すことが出来たのだろう。
彼のためになったようで本当に良かった。
(私はカイルに恩返しがしたい……)
私だってカイルに救われたのだから。
彼には感謝してもしきれないほどの大恩がある。
「カイル!また会いに来たわよ!」
「エルシア……!」
私はドアを開けて、彼の部屋へと入った。
「こんなに頻繁に来て、大丈夫なのか?」
「平気よ!それほど長居はしないつもりだから」
「そうか……」
そう言うと、何故かカイルは悲しそうな顔をした。
(……あら?)
普段滅多に見ることの出来ないカイルのその姿が面白くて、私はつい彼をからかった。
「もしかして、私が帰っちゃうのが寂しいのかしら?」
「な……!?そ、そんなわけないだろう!」
案の定、カイルは顔を真っ赤にして反論してきた。
(うふふ、そんなに赤くなっちゃって)
何だか可愛らしい。
まさかカイルのことを可愛いと思う日が来るとは。
自分でも想像していなかったことだ。
「もう、照れなくていいのに」
「照れてない!」
そうは言っても、赤くなった顔は未だに戻っていない。
(何を話すべきかしら……?レオンハルトとのこと……?)
カイルの部屋にあった椅子に彼と向かい合わせで座った私は、何から話すべきかを悩んだ。
「あ、あのね……カイル……」
「どうした?」
カイルは優しい目で私が話すのを待ってくれた。
(カイル……)
私はずっとカイルのことを嫌な奴だと思っていた。
性格が悪くて、意地悪で、いっつも嫌味ばっかり言ってくる最低な奴だと。
だけどそれは間違いだった。
彼は人のために行動することの出来る、素晴らしい人間だ。
「カイル、話長くなりそうなんだけど、最後まで聞いてくれる?」
「……?当たり前だろう?」
当然だと、そう言ってくれる彼に胸が温かくなった。
貴族たちの間であまりにも長い話は嫌がられることも多いというのに。
「……ありがとう、カイル」
私は素直に礼を言い、ポツポツと学園でレオンハルトから聞いたことや、近況などを話し始めた。
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