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医務室
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「リオン様、大丈夫ですか?」
「ああ、ありがとうエルシア嬢」
あの後私はモーク伯爵令息を医務室へと運び、治療を受けさせた。
どうやら伯爵令息は何回も殴られたようで、顔に貼られたガーゼは直視出来ないほどに痛々しい。
(本当に、何てことしてくれるのよ……)
こんなことをしたカイルはもちろん最低だと思う。
しかし、私にはどうしても腑に落ちないことがあった。
(……カイルって、何の理由もなく手を挙げるような人だったかな?)
小説の中で見たカイルはたしかに脳筋男ではあったものの、何の理由もなく暴力を振るうほど性格が悪かったわけではなかった。
だけどカイルがこれをやったことに違いはない。
しばらくして、モーク伯爵令息の治療が終了した。
「エルシア嬢、間に入ってくれて助かったよ。あのままだとどうなっていたか……」
「いえいえ、これくらい当然のことです」
今回の一件を引き起こしたカイルには遅かれ早かれ学園から処罰が下ることになるだろう。
何故彼がこんなことをしたのかは分からないが、しっかりと反省してほしいものだ。
「私はそろそろ帰ろうと思います。リオン様は?」
「ああ、私はもう少しここで休んでいくことにするよ」
「分かりました。ではゆっくりお休みください」
「ああ、ありがとう」
私はモーク伯爵令息に見送られて医務室を出た。
***
「ふぅ……」
モーク伯爵令息と別れた私は、一人馬車までの道のりを歩いていた。
(本当に……とんでもない現場を見ちゃったなぁ……)
まさかカイルがあんな事件を起こすだなんて。
全く予想していなかったことだ。
(ちゃんと反省してよね、カイル)
もしかすると、もう彼と会うこともなくなるかもしれない。
暴力沙汰は学園を退学になる可能性も十分にあったから。
「――エルシアお嬢様!」
馬車に着くと、公爵家の御者が笑顔で私を出迎えた。
「お帰りなさいませ!お嬢様!」
「ただいま、いつもありがとうね」
「いえいえ、当然のことですよお嬢様」
私は御者の手を借りて馬車に乗り込んだ。
「あ!」
「お嬢様、どうかなさったのですか?」
「大変、忘れ物しちゃった!」
馬車の中に入った私は、医務室に忘れ物をしたことに気が付いた。
「ごめん!ちょっと取りに行ってくるね!」
「あ、お嬢様!それなら私が……」
「ううん、平気!すぐに戻ってくるからちょっと待ってて!」
私は一度馬車から降りて再び医務室へと向かった。
***
「ハァ……ハァ……」
御者を待たせてはいけないと思った私は、はしたないと分かっていながらも学園の廊下を走っていた。
元々体力が無い私は、案の定すぐに息が切れてしまった。
しかし医務室までの道はそう遠くはない。
走ればすぐに着く。
(着いた!)
医務室に着いた私は、すぐにドアを開けようとした。
その瞬間、部屋の中から男性の怒鳴り声が聞こえた。
「――おい!お前、何てことをしてくれたんだ!」
(誰だろう……?)
不思議に思った私は、扉を少しだけ開けて中を覗いた。
(あれって……)
中には二人の男性がいた。
どうやら医師は不在のようである。
医務室の椅子に座っているのは私がついさっきまで話していたモーク伯爵令息だ。
そして、もう一人は……
「…………ごめんって、――兄上」
モーク伯爵令息の実兄だった。
「ああ、ありがとうエルシア嬢」
あの後私はモーク伯爵令息を医務室へと運び、治療を受けさせた。
どうやら伯爵令息は何回も殴られたようで、顔に貼られたガーゼは直視出来ないほどに痛々しい。
(本当に、何てことしてくれるのよ……)
こんなことをしたカイルはもちろん最低だと思う。
しかし、私にはどうしても腑に落ちないことがあった。
(……カイルって、何の理由もなく手を挙げるような人だったかな?)
小説の中で見たカイルはたしかに脳筋男ではあったものの、何の理由もなく暴力を振るうほど性格が悪かったわけではなかった。
だけどカイルがこれをやったことに違いはない。
しばらくして、モーク伯爵令息の治療が終了した。
「エルシア嬢、間に入ってくれて助かったよ。あのままだとどうなっていたか……」
「いえいえ、これくらい当然のことです」
今回の一件を引き起こしたカイルには遅かれ早かれ学園から処罰が下ることになるだろう。
何故彼がこんなことをしたのかは分からないが、しっかりと反省してほしいものだ。
「私はそろそろ帰ろうと思います。リオン様は?」
「ああ、私はもう少しここで休んでいくことにするよ」
「分かりました。ではゆっくりお休みください」
「ああ、ありがとう」
私はモーク伯爵令息に見送られて医務室を出た。
***
「ふぅ……」
モーク伯爵令息と別れた私は、一人馬車までの道のりを歩いていた。
(本当に……とんでもない現場を見ちゃったなぁ……)
まさかカイルがあんな事件を起こすだなんて。
全く予想していなかったことだ。
(ちゃんと反省してよね、カイル)
もしかすると、もう彼と会うこともなくなるかもしれない。
暴力沙汰は学園を退学になる可能性も十分にあったから。
「――エルシアお嬢様!」
馬車に着くと、公爵家の御者が笑顔で私を出迎えた。
「お帰りなさいませ!お嬢様!」
「ただいま、いつもありがとうね」
「いえいえ、当然のことですよお嬢様」
私は御者の手を借りて馬車に乗り込んだ。
「あ!」
「お嬢様、どうかなさったのですか?」
「大変、忘れ物しちゃった!」
馬車の中に入った私は、医務室に忘れ物をしたことに気が付いた。
「ごめん!ちょっと取りに行ってくるね!」
「あ、お嬢様!それなら私が……」
「ううん、平気!すぐに戻ってくるからちょっと待ってて!」
私は一度馬車から降りて再び医務室へと向かった。
***
「ハァ……ハァ……」
御者を待たせてはいけないと思った私は、はしたないと分かっていながらも学園の廊下を走っていた。
元々体力が無い私は、案の定すぐに息が切れてしまった。
しかし医務室までの道はそう遠くはない。
走ればすぐに着く。
(着いた!)
医務室に着いた私は、すぐにドアを開けようとした。
その瞬間、部屋の中から男性の怒鳴り声が聞こえた。
「――おい!お前、何てことをしてくれたんだ!」
(誰だろう……?)
不思議に思った私は、扉を少しだけ開けて中を覗いた。
(あれって……)
中には二人の男性がいた。
どうやら医師は不在のようである。
医務室の椅子に座っているのは私がついさっきまで話していたモーク伯爵令息だ。
そして、もう一人は……
「…………ごめんって、――兄上」
モーク伯爵令息の実兄だった。
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