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新しい出会い
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そんなときだった。
ある一人の男性と出会ったのは。
「ハワンズ公爵令嬢」
「……?」
学園の廊下を歩いていたとき、突然話しかけられた。
振り返ると、私と同じくらいの年齢の貴族子息が立っていた。
カイルやレオンハルトにも負けないくらいの美貌である。
(……誰だろう?多分、私と同じ学年の人だよね?)
しかし、私は愚かにも彼の名前を知らなかった。
「失礼ですが、どなたですか?」
「これは失礼しました。モーク伯爵家の次男、リオンと申します」
「まぁ、モーク伯爵家の方でしたか」
どうやら伯爵家の令息だったようだ。
そんな人の名前も知らなかっただなんて、何だか恥ずかしい。
(ちゃんと貴族たちの名前覚えておかないとな……)
穴があったら入りたい、とはこのことを言うのだろう。
「何か御用でしょうか」
「いえ、用は無いのですが……少し散歩でもしませんか?」
「え、散歩ですか……?」
突然の提案に驚いた。
それと同時に、私はモーク伯爵令息に対する警戒を強めた。
(もしかしたらこの人も……私の地位が目当てかもしれない)
私はあの日から、数多くの貴族令息に言い寄られる日々を送っていた。
ハワンズ公爵家は一人娘なので、唯一の後継者である私の結婚相手が次期公爵となる。
私は自分の地位にしか興味の無い男など死んでも御免だった。
「いけなかったでしょうか?」
「……分かりました、少し歩きましょう」
本当は断りたかったが、人の目があったため私は大人しく彼について行った。
私はモーク伯爵令息と共に学園内の庭を歩いた。
ちなみにここはカイルとレイチェルが出会った場所でもある。
(まさか完全モブの私がこの場所を男性と歩くことになるだなんてね……)
そう思いながらも私は隣を歩く伯爵令息の横顔を見上げた。
小説では彼は出てこない。
私と同じで完全なるモブである。
(それにしては外見良すぎじゃない?エルシアもだけど)
モーク伯爵令息の横顔を凝視していると、彼がこちらを振り向いた。
「……!」
目が合うと同時にクスッと笑われて顔が赤くなる。
(恋愛経験ない私にはダメよ!)
「ハワンズ公爵令嬢は本当に可愛らしい方ですね」
「えっ、そ、そうですかね……?」
突然何を言い出すのだろうか。
「はい、公爵令嬢はもう少し自分に自信を持たれてもよろしいのでは?」
「そうでしょうか……」
たしかに前世での私は、自分に自信の無い女だった。
もしかするとそのせいで社交界の華とまで謳われるエルシアとなった今も自分に自信が無いままなのかもしれない。
(どうして分かったんだろう……)
そんな私の疑問を読んだのか、モーク伯爵令息がクスクス笑いながら言った。
「普段から公爵令嬢のことをよく見ているから……ですかね」
「えっ?」
「ああ、何でもありません。今のは忘れてください」
伯爵令息は照れ臭そうに視線を逸らした。
(な、何だろう……)
こんなにも心を乱されるのは初めてかもしれない。
私にこれほど優しくしてくれる男性は彼が初めてだったから。
(カイルとは大違いね……)
気付けば私は、彼のことが気になり始めていた。
庭を歩いてからしばらく経ち、こうして二人きりで会話をするのにもだいぶ慣れた。
「お花……綺麗ですね」
「公爵令嬢の方が綺麗ですよ」
「えっ、そ、そんな……冗談ですよね?」
「本気です。私からしたら公爵令嬢の方が何倍も美しく見えます」
よくそんな言葉を平然と言えるなと思ったが、言われて悪い気はしなかった。
(モーク伯爵令息……悪い人じゃないみたい……)
自分でも薄々気付き始めていた。
これはもしかすると、初恋というやつなのかもしれない。
ある一人の男性と出会ったのは。
「ハワンズ公爵令嬢」
「……?」
学園の廊下を歩いていたとき、突然話しかけられた。
振り返ると、私と同じくらいの年齢の貴族子息が立っていた。
カイルやレオンハルトにも負けないくらいの美貌である。
(……誰だろう?多分、私と同じ学年の人だよね?)
しかし、私は愚かにも彼の名前を知らなかった。
「失礼ですが、どなたですか?」
「これは失礼しました。モーク伯爵家の次男、リオンと申します」
「まぁ、モーク伯爵家の方でしたか」
どうやら伯爵家の令息だったようだ。
そんな人の名前も知らなかっただなんて、何だか恥ずかしい。
(ちゃんと貴族たちの名前覚えておかないとな……)
穴があったら入りたい、とはこのことを言うのだろう。
「何か御用でしょうか」
「いえ、用は無いのですが……少し散歩でもしませんか?」
「え、散歩ですか……?」
突然の提案に驚いた。
それと同時に、私はモーク伯爵令息に対する警戒を強めた。
(もしかしたらこの人も……私の地位が目当てかもしれない)
私はあの日から、数多くの貴族令息に言い寄られる日々を送っていた。
ハワンズ公爵家は一人娘なので、唯一の後継者である私の結婚相手が次期公爵となる。
私は自分の地位にしか興味の無い男など死んでも御免だった。
「いけなかったでしょうか?」
「……分かりました、少し歩きましょう」
本当は断りたかったが、人の目があったため私は大人しく彼について行った。
私はモーク伯爵令息と共に学園内の庭を歩いた。
ちなみにここはカイルとレイチェルが出会った場所でもある。
(まさか完全モブの私がこの場所を男性と歩くことになるだなんてね……)
そう思いながらも私は隣を歩く伯爵令息の横顔を見上げた。
小説では彼は出てこない。
私と同じで完全なるモブである。
(それにしては外見良すぎじゃない?エルシアもだけど)
モーク伯爵令息の横顔を凝視していると、彼がこちらを振り向いた。
「……!」
目が合うと同時にクスッと笑われて顔が赤くなる。
(恋愛経験ない私にはダメよ!)
「ハワンズ公爵令嬢は本当に可愛らしい方ですね」
「えっ、そ、そうですかね……?」
突然何を言い出すのだろうか。
「はい、公爵令嬢はもう少し自分に自信を持たれてもよろしいのでは?」
「そうでしょうか……」
たしかに前世での私は、自分に自信の無い女だった。
もしかするとそのせいで社交界の華とまで謳われるエルシアとなった今も自分に自信が無いままなのかもしれない。
(どうして分かったんだろう……)
そんな私の疑問を読んだのか、モーク伯爵令息がクスクス笑いながら言った。
「普段から公爵令嬢のことをよく見ているから……ですかね」
「えっ?」
「ああ、何でもありません。今のは忘れてください」
伯爵令息は照れ臭そうに視線を逸らした。
(な、何だろう……)
こんなにも心を乱されるのは初めてかもしれない。
私にこれほど優しくしてくれる男性は彼が初めてだったから。
(カイルとは大違いね……)
気付けば私は、彼のことが気になり始めていた。
庭を歩いてからしばらく経ち、こうして二人きりで会話をするのにもだいぶ慣れた。
「お花……綺麗ですね」
「公爵令嬢の方が綺麗ですよ」
「えっ、そ、そんな……冗談ですよね?」
「本気です。私からしたら公爵令嬢の方が何倍も美しく見えます」
よくそんな言葉を平然と言えるなと思ったが、言われて悪い気はしなかった。
(モーク伯爵令息……悪い人じゃないみたい……)
自分でも薄々気付き始めていた。
これはもしかすると、初恋というやつなのかもしれない。
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