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学園入学
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そしてやってきた、学園の入学式。
王立学園の制服に身を包んだ私は入学式に向かうための馬車へと乗り込んだ。
(いよいよやってきたのね、この日が……)
私の勝負はここから始まる。
まさに今日の学園の入学式こそ、ヒロインとヒーローが出会う日だった。
(気合入れて行くわよ!エルシア!)
小説の世界では、ヒーローとヒロインが初めて出会うのは入学式だった。
ヒロインは広大な敷地を持つ学園内で道に迷ってしまうことがきっかけである。
そんな彼女を助けるのがヒーローだった。
そこでヒーローは美しい容姿のヒロインに一目惚れし、ヒロインと関わりを持つようになる。
それなら、ヒーローとヒロインが今日出会わなければいいのでは?というのが私の考えだ。
(そうよ、あいつらが出会いさえしなければこの先の不幸は全て無くなるのよ)
そして、シャルロッテ皇女も今日留学で王国へやってくる。
このときにはもう二人の関係は冷え切っていた。
(小説の中のシャルロッテはレオンハルトのことが大好きだったから……レオンハルトさえシャルロッテに恋をしてくれれば……)
そう簡単にはいかなそうだけど、やるしかない。
王国の未来が懸かっているのだから。
私はそう決意を固めて入学式に臨んだ。
入学式の会場には、既に人がたくさんいた。
式が始まるのはまだ先である。
(よし、今から私が道に迷ってるヒロインを助けに行けばヒーローとヒロインが出会って恋に落ちることもないはず!)
そう思った私は早速行動に移した。
それから少しして――
「いた!」
小説の内容を必死で思い出し、私はようやく学園内で道に迷っているヒロインを探し当てた。
私は式場から少し離れたところで佇んでいるヒロインに近付いた。
私の足音にヒロインは振り返った。
(やっと見つけ――ッ!?)
後ろを振り返ったヒロインを見た私は、驚きを隠しきれなかった。
何故ならそこにいた人物はまさに天使だったからだ。
男の庇護欲をそそるようなふわふわな見た目をしていた。
(……こりゃヒーローも惚れるわ)
第一王子があれほど惚れ込んでしまったのもこれを見てからなら何だか分かるような気がする。
「……?」
ヒロインが私を見て首をかしげた。
(――っといけないいけない!)
ハッとなった私は、ヒロインに話しかけた。
「あ、あなた!道に迷ったんでしょう?私が案内してあげるわッ!」
「……え?あ、ありがとうございます……?」
ヒロインは突然の提案に驚きながらも、それを受け入れた。
(よし、完璧だわ!これでヒロインとヒーローの出会いを阻止したのよ!)
―っと思ったのに、なんでこうなった!?
「――エルシア嬢じゃないか」
今私とヒロインの目の前にいたのは、ヒーローであり、シャルロッテ皇女殿下の婚約者でもあるレオンハルト第一王子殿下だった。
「あ、ははは……お久しぶりです……殿下……」
(なんであんたがここにいるのよ!絶対出会わないと思ったのに!後ろにはカイル・フォースもいるし!)
レオンハルトの恋敵となる公爵令息カイルに至っては、私をゴミを見るような目で見ている。
(そうか……エルシアは殿下の婚約者候補だったから……知り合いだったとしてもおかしくないわね……レオンハルトとカイルはレイチェルが現れてから犬猿の仲になるけど元々は親友同士だったから一緒にいても不思議ではないわ……)
そう考えれば納得だ。
「あ、あなた……えっと……この人たちはね……」
そう言いながらも私はレイチェルの方を見てみる。
するとレイチェルはレオンハルトとカイルを、キラキラした眼差しで見つめていた。
その頬はうっすらと朱色に染まっている。
(何これ……完全に恋する乙女じゃない)
もしかしてこの一瞬の時間でレオンハルトに惚れ込んだというのか。
これはマズイぞ。
もしレオンハルトが小説通り彼女に一目惚れしてしまったら……。
「そちらのご令嬢は?」
レイチェルの視線を受けたレオンハルトが私に尋ねた。
「あ、この方は……」
「――あ、私!レイチェル・グレイスといいますうっ!」
その瞬間、とんでもない速さでレイチェルがレオンハルトとカイルの目の前に迫って自己紹介した。
まるで二人に媚びるかのようにぶりぶりしたレイチェルを見た私は思った。
(……ヒロインって、こんな感じだったっけ)
小説の中で見たレイチェルとかなり違うような気がするのは気のせいだろうか。
正直、今のにはちょっと……いや、かなり引いた。
そして、そう思ったのは何と私だけではなかった。
「「……」」
(待って……ちょっと二人も何か引いてない?)
原作ではレイチェルに惚れるはずのレオンハルトとカイルは、目の前にいる彼女を見て完全に引いたような顔をしていた。
「……レオンハルト、そろそろ入学式が始まるぞ」
「あぁ、そうだな」
そう言ってレオンハルトとカイルはレイチェルを無視して去って行った。
「あっ……ちょっ……」
あからさまに無視をされ、レイチェルは悲しそうな顔をして俯いた。
(うーん……さすがにちょっと不憫だわ……!)
そして、私とレイチェルも入学式の会場へと向かった。
王立学園の制服に身を包んだ私は入学式に向かうための馬車へと乗り込んだ。
(いよいよやってきたのね、この日が……)
私の勝負はここから始まる。
まさに今日の学園の入学式こそ、ヒロインとヒーローが出会う日だった。
(気合入れて行くわよ!エルシア!)
小説の世界では、ヒーローとヒロインが初めて出会うのは入学式だった。
ヒロインは広大な敷地を持つ学園内で道に迷ってしまうことがきっかけである。
そんな彼女を助けるのがヒーローだった。
そこでヒーローは美しい容姿のヒロインに一目惚れし、ヒロインと関わりを持つようになる。
それなら、ヒーローとヒロインが今日出会わなければいいのでは?というのが私の考えだ。
(そうよ、あいつらが出会いさえしなければこの先の不幸は全て無くなるのよ)
そして、シャルロッテ皇女も今日留学で王国へやってくる。
このときにはもう二人の関係は冷え切っていた。
(小説の中のシャルロッテはレオンハルトのことが大好きだったから……レオンハルトさえシャルロッテに恋をしてくれれば……)
そう簡単にはいかなそうだけど、やるしかない。
王国の未来が懸かっているのだから。
私はそう決意を固めて入学式に臨んだ。
入学式の会場には、既に人がたくさんいた。
式が始まるのはまだ先である。
(よし、今から私が道に迷ってるヒロインを助けに行けばヒーローとヒロインが出会って恋に落ちることもないはず!)
そう思った私は早速行動に移した。
それから少しして――
「いた!」
小説の内容を必死で思い出し、私はようやく学園内で道に迷っているヒロインを探し当てた。
私は式場から少し離れたところで佇んでいるヒロインに近付いた。
私の足音にヒロインは振り返った。
(やっと見つけ――ッ!?)
後ろを振り返ったヒロインを見た私は、驚きを隠しきれなかった。
何故ならそこにいた人物はまさに天使だったからだ。
男の庇護欲をそそるようなふわふわな見た目をしていた。
(……こりゃヒーローも惚れるわ)
第一王子があれほど惚れ込んでしまったのもこれを見てからなら何だか分かるような気がする。
「……?」
ヒロインが私を見て首をかしげた。
(――っといけないいけない!)
ハッとなった私は、ヒロインに話しかけた。
「あ、あなた!道に迷ったんでしょう?私が案内してあげるわッ!」
「……え?あ、ありがとうございます……?」
ヒロインは突然の提案に驚きながらも、それを受け入れた。
(よし、完璧だわ!これでヒロインとヒーローの出会いを阻止したのよ!)
―っと思ったのに、なんでこうなった!?
「――エルシア嬢じゃないか」
今私とヒロインの目の前にいたのは、ヒーローであり、シャルロッテ皇女殿下の婚約者でもあるレオンハルト第一王子殿下だった。
「あ、ははは……お久しぶりです……殿下……」
(なんであんたがここにいるのよ!絶対出会わないと思ったのに!後ろにはカイル・フォースもいるし!)
レオンハルトの恋敵となる公爵令息カイルに至っては、私をゴミを見るような目で見ている。
(そうか……エルシアは殿下の婚約者候補だったから……知り合いだったとしてもおかしくないわね……レオンハルトとカイルはレイチェルが現れてから犬猿の仲になるけど元々は親友同士だったから一緒にいても不思議ではないわ……)
そう考えれば納得だ。
「あ、あなた……えっと……この人たちはね……」
そう言いながらも私はレイチェルの方を見てみる。
するとレイチェルはレオンハルトとカイルを、キラキラした眼差しで見つめていた。
その頬はうっすらと朱色に染まっている。
(何これ……完全に恋する乙女じゃない)
もしかしてこの一瞬の時間でレオンハルトに惚れ込んだというのか。
これはマズイぞ。
もしレオンハルトが小説通り彼女に一目惚れしてしまったら……。
「そちらのご令嬢は?」
レイチェルの視線を受けたレオンハルトが私に尋ねた。
「あ、この方は……」
「――あ、私!レイチェル・グレイスといいますうっ!」
その瞬間、とんでもない速さでレイチェルがレオンハルトとカイルの目の前に迫って自己紹介した。
まるで二人に媚びるかのようにぶりぶりしたレイチェルを見た私は思った。
(……ヒロインって、こんな感じだったっけ)
小説の中で見たレイチェルとかなり違うような気がするのは気のせいだろうか。
正直、今のにはちょっと……いや、かなり引いた。
そして、そう思ったのは何と私だけではなかった。
「「……」」
(待って……ちょっと二人も何か引いてない?)
原作ではレイチェルに惚れるはずのレオンハルトとカイルは、目の前にいる彼女を見て完全に引いたような顔をしていた。
「……レオンハルト、そろそろ入学式が始まるぞ」
「あぁ、そうだな」
そう言ってレオンハルトとカイルはレイチェルを無視して去って行った。
「あっ……ちょっ……」
あからさまに無視をされ、レイチェルは悲しそうな顔をして俯いた。
(うーん……さすがにちょっと不憫だわ……!)
そして、私とレイチェルも入学式の会場へと向かった。
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