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救済計画

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悩みに悩んだ私はひとまず、小説の登場人物や細かいストーリーを思い出し、ノートに書き出すことにした。





『王子と男爵令嬢は永遠の愛を誓う』


<主要人物>


◇主人公

レイチェル・グレイス

グレイス男爵家の庶子。本妻ではなく男爵と愛人との間に生まれた娘で愛人だった母が亡くなった後男爵に引き取られる。男爵をはじめとした他の家族は愛人の子であるレイチェルに無関心。十五歳になったレイチェルは学園に入学してヒーローと出会い、恋に落ちる。ヒーローに婚約者がいることはお構いなしに彼との仲を深めていく。一言で言うと頭の中お花畑。ふわふわのピンク髪に大きな茶色の瞳。



◇ヒーロー

レオンハルト・アクアマリン

アクアマリン王国の第一王子。王家にはレオンハルトしか子供がいない。母である王妃と父である国王から生まれる。文武両道で優秀。十歳の時にタンザナイト帝国の皇女シャルロッテとの婚約が決まる。誰もが認める品行方正な王子様だったのにもかかわらず、レイチェルと関わってから色々な面で残念王子になる。サラサラした金髪に碧眼。THE・王子様。



◇悪役令嬢

シャルロッテ・タンザナイト

タンザナイト帝国の第一皇女。仲睦まじい両親の間に生まれ、兄2人に溺愛されている。気が弱く、臆病な性格。レオンハルトのことは本気で愛していた。悪役令嬢らしいことは一切していないが何故か悪役令嬢ポジ。塔に幽閉されるという小説内に出てくるキャラで最も悲惨な最期を迎える悲劇の皇女。ゆるくウェーブがかかった銀髪に黄金色の瞳。


◇恋のライバル令息

カイル・フォース

ハワンズ公爵家と並ぶほどの名門フォース公爵家の令息でレイチェルに恋をし、レオンハルトとヒロインであるレイチェルを奪い合う。元々はレオンハルトと親友同士だったが決闘で負け、泣く泣くレイチェルを諦める。その後レオンハルトとレイチェルが起こした戦争にて最前線で戦い、帝国軍にやられて戦死する。燃えるような赤髪に黒い瞳。


(小説の展開に深く関わるメインキャラはこんなものかな…………次はっと……)


<その他の登場人物>


◇リリア・アクアマリン

レオンハルトの母であり、王妃。穏やかな性格をしている。レオンハルトが起こした婚約破棄騒動に心を痛め、床に臥してしまい、そのまま儚くなる。


◇オーガスト・アクアマリン

レオンハルトの父であり、国王。唯一の妻であるリリアだけを一途に愛している。王妃リリアが亡くなった後、息子が起こした騒動の責任を取る形で自決。


◇フィリップ・タンザナイト

タンザナイト帝国の皇帝。シャルロッテの父。妻である皇后とは仲が良い。アクアマリン王国との戦争において戦死する。


◇イザベル・タンザナイト

タンザナイト帝国の皇后。政略結婚ではあるものの、夫と愛し合っている。戦争後は床に臥し、その後亡くなる。


◇レイノルド・タンザナイト

タンザナイト帝国の第一皇子であり、皇太子。シャルロッテの兄。妹を溺愛している。父親の死後、皇帝に即位するが何者かに暗殺される。


◇ルースファルト・タンザナイト

タンザナイト帝国の第二皇子。シャルロッテの二番目の兄。レイノルドと同じく妹を溺愛している。アクアマリン王国との戦争において戦死する。




そこで私はペンを置いた。


「す、す、救いようが無いッ!!!」


(何だこの物語は!幸せになったのヒーローとヒロインだけじゃん!)


これ以上書くのが嫌になった私は、ノートをパタリと閉じた。





私は頭を抱えた。
何故ならもう学園の入学まであと一年もなかったからだ。


このままいけばヒロインのレイチェルとヒーローのレオンハルトは学園で出会い、恋に落ちることとなる。
そうすれば間違いなく彼ら以外の人間は不幸になる。


この世界に来てまだ日は浅いものの、両親やメイドたちにはかなり良くしてもらっている。
彼らが悲惨な結末を辿ることになるのだけはどうしても耐えられなかった。


そこで私は、あることを決断して椅子から立ち上がった。




(……決めたわ!この小説で死ぬ予定の全ての人間を救済するのよ!!!)


そこから私の救済計画がスタートした。


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