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44 反撃
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「一つ、貴方に言いたいことがあるのだけれど」
「……何でしょうか?」
騎士が不快そうに眉をピクリとさせた。
相変わらず無礼な男だ。
ここまで言っても私への態度を改める気は無いらしい。
「少し疑問に感じたことがあって」
「疑問……?」
「貴方は……しっかりと側妃の護衛騎士としての役割を果たしていたのかしら?」
「なッ……何を……!」
心外だとでも言うかのように彼の顔がしわくちゃに歪んだ。
「そんなの当然ではありませんか!私が仕事をせずに遊び呆けていると、そう言いたいのですか!?」
「その通りよ」
「な……!」
怒りで顔を真っ赤にした彼が声を上げた。
この男にとっては最高の侮辱だろう。
「私はいつだって側妃様のお傍をお守りしています!誓って一時も離れてはおりません!」
「フフッ……一時も傍を離れていない?本当に?」
「当然です!!!」
彼の必死な叫びに、思わず笑いが出そうになった。
おかしくて仕方が無い。
「……何が言いたいんですか」
「いつも傍にいるというのに、毒殺も未然に防げない騎士だなんて……」
「な……何を……」
騎士の顔が見事に固まった。
「側妃が毒で倒れたのは貴方の責任もあるのではなくって?」
「そ、そんなことは……!私はいつも側妃様をお守りするために最善を尽くしておりました!」
「最善を尽くした?その結果がこれだなんてね、笑っちゃうわ」
「ッ……」
少し問い詰めると、彼の顔がみるみるうちに青くなっていった。
愛する人を守れなかったという自責の念が彼を追い詰めているようだった。
(フフフ……私を糾弾したのだからこの程度では済まさないわよ……)
当然、これで終わらせるつもりなどない。
本当の地獄はここからだ。
「まぁ、その顔を見る限り、貴方はたしかに彼女を守るために最善を尽くしたんでしょう」
「……当然です」
しばらく俯いて黙り込んでいた彼が、その言葉に顔を上げた。
鋭い眼光で私を見つめている。
「そんなに側妃のことが大事かしら?自分の全てを捧げられるほどに?」
「……私にとって側妃様は世界で一番大切な方です。あの方のためなら命を懸けられます」
「そう……すごく立派な愛ね。だけど……」
一度言葉を切った私は、この場にいる全員に聞こえるように彼を地獄に堕とす一言を放った。
「――貴方たしか、結婚してたわよね?」
その言葉で、場の空気が一変した。
信じられないと口元を押さえる侍女たち。
彼の同僚であろう騎士たちも絶句している。
「おい、冗談だろう……?お前、側妃様にそんな感情を抱いていたのか……?」
「既婚者でありながら国王陛下の側室に横恋慕するだなんて何と不埒な……」
「ありえないわ、あの人……」
周囲の人々の目が侮蔑を含んだものへと変化するのは時間の問題だった。
「ち、違う……これは……違うんだ……」
必死で首を横に振る彼の顔は先ほどよりもずっと青くなっている。
(未婚なら美談になっていたかもしれないけれど……)
既婚者であれば純愛ではなくただの不倫。
それも相手は王の側室だ。
そんな感情を抱いていること自体が罪。
バレればただでは済まないだろう。
そんな重大な秘密を自分からカミングアウトするとは、愚かにもほどがある。
「貴方さっきずっと側妃の傍にいるって言ってたけど、妻の元へは帰っていないのかしら?」
「そ、それは……」
「まだ幼い子供がいると聞いたけれど、妻子ほったらかして他の女に現を抜かしているということで良いかしら?」
「いや、それは違う……」
「でもさっき一時も傍を離れていないって言ってたじゃない」
「う……」
とうとう騎士は何も言えなくなったようで、膝を着いて座り込んでしまった。
そんな彼を、部屋にいる全員が呆れた目で見ている。
(うふふ、私の勝ちみたいね)
「……何でしょうか?」
騎士が不快そうに眉をピクリとさせた。
相変わらず無礼な男だ。
ここまで言っても私への態度を改める気は無いらしい。
「少し疑問に感じたことがあって」
「疑問……?」
「貴方は……しっかりと側妃の護衛騎士としての役割を果たしていたのかしら?」
「なッ……何を……!」
心外だとでも言うかのように彼の顔がしわくちゃに歪んだ。
「そんなの当然ではありませんか!私が仕事をせずに遊び呆けていると、そう言いたいのですか!?」
「その通りよ」
「な……!」
怒りで顔を真っ赤にした彼が声を上げた。
この男にとっては最高の侮辱だろう。
「私はいつだって側妃様のお傍をお守りしています!誓って一時も離れてはおりません!」
「フフッ……一時も傍を離れていない?本当に?」
「当然です!!!」
彼の必死な叫びに、思わず笑いが出そうになった。
おかしくて仕方が無い。
「……何が言いたいんですか」
「いつも傍にいるというのに、毒殺も未然に防げない騎士だなんて……」
「な……何を……」
騎士の顔が見事に固まった。
「側妃が毒で倒れたのは貴方の責任もあるのではなくって?」
「そ、そんなことは……!私はいつも側妃様をお守りするために最善を尽くしておりました!」
「最善を尽くした?その結果がこれだなんてね、笑っちゃうわ」
「ッ……」
少し問い詰めると、彼の顔がみるみるうちに青くなっていった。
愛する人を守れなかったという自責の念が彼を追い詰めているようだった。
(フフフ……私を糾弾したのだからこの程度では済まさないわよ……)
当然、これで終わらせるつもりなどない。
本当の地獄はここからだ。
「まぁ、その顔を見る限り、貴方はたしかに彼女を守るために最善を尽くしたんでしょう」
「……当然です」
しばらく俯いて黙り込んでいた彼が、その言葉に顔を上げた。
鋭い眼光で私を見つめている。
「そんなに側妃のことが大事かしら?自分の全てを捧げられるほどに?」
「……私にとって側妃様は世界で一番大切な方です。あの方のためなら命を懸けられます」
「そう……すごく立派な愛ね。だけど……」
一度言葉を切った私は、この場にいる全員に聞こえるように彼を地獄に堕とす一言を放った。
「――貴方たしか、結婚してたわよね?」
その言葉で、場の空気が一変した。
信じられないと口元を押さえる侍女たち。
彼の同僚であろう騎士たちも絶句している。
「おい、冗談だろう……?お前、側妃様にそんな感情を抱いていたのか……?」
「既婚者でありながら国王陛下の側室に横恋慕するだなんて何と不埒な……」
「ありえないわ、あの人……」
周囲の人々の目が侮蔑を含んだものへと変化するのは時間の問題だった。
「ち、違う……これは……違うんだ……」
必死で首を横に振る彼の顔は先ほどよりもずっと青くなっている。
(未婚なら美談になっていたかもしれないけれど……)
既婚者であれば純愛ではなくただの不倫。
それも相手は王の側室だ。
そんな感情を抱いていること自体が罪。
バレればただでは済まないだろう。
そんな重大な秘密を自分からカミングアウトするとは、愚かにもほどがある。
「貴方さっきずっと側妃の傍にいるって言ってたけど、妻の元へは帰っていないのかしら?」
「そ、それは……」
「まだ幼い子供がいると聞いたけれど、妻子ほったらかして他の女に現を抜かしているということで良いかしら?」
「いや、それは違う……」
「でもさっき一時も傍を離れていないって言ってたじゃない」
「う……」
とうとう騎士は何も言えなくなったようで、膝を着いて座り込んでしまった。
そんな彼を、部屋にいる全員が呆れた目で見ている。
(うふふ、私の勝ちみたいね)
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