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43 糾弾
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「あれほど自信満々に証拠があると言っていたのに……まさかそれがアイラの証言だけとはね」
「な……十分でしょう!」
馬鹿にされたと感じたのか、騎士が声を荒らげた。
「十分ですって?知らないの?アイラは昔から嘘つきなのよ。そんな子の証言を信じるだなんて……」
「この期に及んで……嘘をついているのは貴方の方でしょう?」
「そう思うなら同年代の貴族令嬢たちに聞いてみればいいわ。アイラの虚言には彼女たちもかなり困っていたみたいだから」
「……」
アイラが虚言癖で周囲に迷惑をかけていたのは有名な話だ。
マナー面を少し注意をされただけで苛められたと泣き喚くのだ。
両親はそんな馬鹿な妹を庇い続け、代わりに姉である私が何度頭を下げたか。
そのため、少し調べれば証言が山のように出てくるだろう。
後ろに控えていた騎士たちが顔を見合わせてヒソヒソと話し始めた。
先頭に立って私を糾弾していた騎士が悔しそうにギュッと拳を握り締める。
(だいぶ追い詰められているようね)
このまま引き下がるかと思ったが、どうやら彼はまだ諦めていないようだった。
「……しかし、それは貴方が側妃様を毒殺していないという証拠にはなりません」
「……」
自白以外に証拠が無いのならさっさと引いて再調査をすればいいものを。
(何が貴方をそこまで突き動かしているというの……?)
わけが分からず騎士と睨み合っていた私は、しばらくしてあることに気が付いた。
(あら……そういえばこの騎士……クロエの護衛騎士だわ……!)
そう、彼はいつも側妃の傍から離れない護衛騎士の男だった。
そして私は一度目の人生のときから彼の感情に気付いていた。
クロエのことを見つめる彼の瞳は、明らかに熱を帯びていたから。
真相に気付いて呆れて笑いそうになった。
(そういうこと……どうやら何が何でも私を犯人にしたいようね……)
貴方がそのつもりなら、私だって手加減はしない。
徹底的に叩きのめすだけだ。
「陛下には側妃様を毒殺するのに十分な動機があります!貴方以外にはありえません!」
「動機って一体何のことかしら?」
きょとんと首をかしげてそう尋ねると、騎士は我慢の限界とでもいうように怒声を上げた。
「私は知っているんです!王妃陛下が国王陛下の寵愛を一身に受ける側妃様を疎ましく思っていたこと!それを理由に嫌がらせを繰り返していたことも全て!」
「……嫌がらせ?」
そういえば、二度目の人生でも何故かそんな噂が流れていたような気がする。
私がクロエに嫌がらせをしていたのは一度目だけで、それ以外は全てただの噂に過ぎなかったが。
もちろん過去に自分がしていたことを正当化するつもりは無いが、今は何の関係も無いことだ。
(そんなくだらない話を信じているのね)
恋は盲目、とはまさに彼のような人のことを言うのだろう。
「何のことかしら?」
「とぼけないでください!側妃様のお茶会を断ったり、公衆の面前で着ているドレスを馬鹿にしたり!」
「……」
王妃である私の方が立場が上なためお茶会を断ることは大した問題では無いし、あの舞踏会で先にドレスを馬鹿にしたのはクロエの方だ。
愛するクロエの言い分だけを鵜呑みにしているのだろう。
(前世の誰かさんより酷いわね……)
「ちょっと……冗談でしょう……?」
「ありえないって……」
「おいおい、嘘だろ……」
私の後ろにいた侍女たち、彼の後ろにいた騎士たちが絶句の声を上げた。
この場にいる全員に引かれていることに彼は気付いているだろうか。
いや、きっと気にしてもいないのだろう。
クロエさえ良ければどうだって良いのかもしれない。
(その一途な愛は素晴らしいけれど……喧嘩を売る相手を間違えたわね)
公衆の面前で私を馬鹿にしたのだ。
当然、このまま終わらせるわけにはいかない。
ここからさらに反撃開始だ。
「な……十分でしょう!」
馬鹿にされたと感じたのか、騎士が声を荒らげた。
「十分ですって?知らないの?アイラは昔から嘘つきなのよ。そんな子の証言を信じるだなんて……」
「この期に及んで……嘘をついているのは貴方の方でしょう?」
「そう思うなら同年代の貴族令嬢たちに聞いてみればいいわ。アイラの虚言には彼女たちもかなり困っていたみたいだから」
「……」
アイラが虚言癖で周囲に迷惑をかけていたのは有名な話だ。
マナー面を少し注意をされただけで苛められたと泣き喚くのだ。
両親はそんな馬鹿な妹を庇い続け、代わりに姉である私が何度頭を下げたか。
そのため、少し調べれば証言が山のように出てくるだろう。
後ろに控えていた騎士たちが顔を見合わせてヒソヒソと話し始めた。
先頭に立って私を糾弾していた騎士が悔しそうにギュッと拳を握り締める。
(だいぶ追い詰められているようね)
このまま引き下がるかと思ったが、どうやら彼はまだ諦めていないようだった。
「……しかし、それは貴方が側妃様を毒殺していないという証拠にはなりません」
「……」
自白以外に証拠が無いのならさっさと引いて再調査をすればいいものを。
(何が貴方をそこまで突き動かしているというの……?)
わけが分からず騎士と睨み合っていた私は、しばらくしてあることに気が付いた。
(あら……そういえばこの騎士……クロエの護衛騎士だわ……!)
そう、彼はいつも側妃の傍から離れない護衛騎士の男だった。
そして私は一度目の人生のときから彼の感情に気付いていた。
クロエのことを見つめる彼の瞳は、明らかに熱を帯びていたから。
真相に気付いて呆れて笑いそうになった。
(そういうこと……どうやら何が何でも私を犯人にしたいようね……)
貴方がそのつもりなら、私だって手加減はしない。
徹底的に叩きのめすだけだ。
「陛下には側妃様を毒殺するのに十分な動機があります!貴方以外にはありえません!」
「動機って一体何のことかしら?」
きょとんと首をかしげてそう尋ねると、騎士は我慢の限界とでもいうように怒声を上げた。
「私は知っているんです!王妃陛下が国王陛下の寵愛を一身に受ける側妃様を疎ましく思っていたこと!それを理由に嫌がらせを繰り返していたことも全て!」
「……嫌がらせ?」
そういえば、二度目の人生でも何故かそんな噂が流れていたような気がする。
私がクロエに嫌がらせをしていたのは一度目だけで、それ以外は全てただの噂に過ぎなかったが。
もちろん過去に自分がしていたことを正当化するつもりは無いが、今は何の関係も無いことだ。
(そんなくだらない話を信じているのね)
恋は盲目、とはまさに彼のような人のことを言うのだろう。
「何のことかしら?」
「とぼけないでください!側妃様のお茶会を断ったり、公衆の面前で着ているドレスを馬鹿にしたり!」
「……」
王妃である私の方が立場が上なためお茶会を断ることは大した問題では無いし、あの舞踏会で先にドレスを馬鹿にしたのはクロエの方だ。
愛するクロエの言い分だけを鵜呑みにしているのだろう。
(前世の誰かさんより酷いわね……)
「ちょっと……冗談でしょう……?」
「ありえないって……」
「おいおい、嘘だろ……」
私の後ろにいた侍女たち、彼の後ろにいた騎士たちが絶句の声を上げた。
この場にいる全員に引かれていることに彼は気付いているだろうか。
いや、きっと気にしてもいないのだろう。
クロエさえ良ければどうだって良いのかもしれない。
(その一途な愛は素晴らしいけれど……喧嘩を売る相手を間違えたわね)
公衆の面前で私を馬鹿にしたのだ。
当然、このまま終わらせるわけにはいかない。
ここからさらに反撃開始だ。
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