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33 今世では ギルバート視点
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そして三度目。
次こそは絶対に彼女を残酷な運命から救わなければならなかった。
この忌まわしいループを終わらせるためにも、彼女は絶対に死んではいけない。
「――王妃陛下、お久しぶりです」
「……ヘンリー公爵?」
前世ではそれほど関わったことも無かったが、万一の場合を考え今回は早い段階からリーシャに近付いた。
突然距離を縮めようとした私を、リーシャはかなり警戒しているようだった。
当然だ、私は社交界ではクロエに想いを寄せている男ということになっているのだから。
クロエはリーシャからすれば敵も同然。
簡単な心を開くことは出来ないだろう。
それから私は密かに彼女の動向を見張った。
やはりリーシャはいつだって予測出来ない行動を取る。
今回の生ではクロエ、エルフレッドの両方と出来るだけ距離を置くことにしたようだ。
三度の人生において全て違う行動を取っており、リーシャに前世の記憶があるのはほぼ確定だろう。
そして私も、二度の人生を歩んできて気付いたことがある。
(前回よりも……身体の自由がきく……)
それはリーシャが一度目の人生と違う行動を取れば取るほど、私の行動範囲が広がるということだ。
もしかすると、エルフレッドも同じかもしれない。
実際に、エルフレッドも少しずつ前の世界とは違う行動を取り始めていた。
二度目の人生では、リーシャはクロエと親しくしていたが、それでも未だにエルフレッドを愛していた。
しかし、三度目は違う。
どうやら彼女は長年の想い人への愛を完全に捨て去ったようだった。
エルフレッドは傷付いていたが、賢明な判断だと言えるだろう。
そしてこの男は三度目も記憶が無いらしく、突然のリーシャの冷たい態度にただ困惑するだけだった。
(お前は反省しろ)
彼女が受けた傷を知っているからこそ、同情なんて出来ない。
あの日、舞踏会でリーシャを助けたのは自分でも驚いた。
二度と彼女が死ぬところを見たくなかった、運命を変えたかった。
その思いが自分を突き動かした。
必死で運命に抗おうとするリーシャの姿に感銘を受けたのはそのときだった。
元々他人に関心を抱いたことなんて無かったが、彼女だけは違う。
この件を経て、助けたい、救いたいという気持ちがより一層強くなった。
リーシャと関わっていくうちに、秘密がバレそうになることが何度もあった。
聡明な彼女のことだから気付くのも当然だろう。
そして、ついに言い逃れ出来ないときが来た。
「ねぇ……貴方……もしかして、前世の記憶があるの……?」
「……」
認めざるを得なかった。
彼女はほとんど確信しているようでこれ以上は誤魔化せないと思い、素直に認めた。
それを知ったリーシャに過去のことを聞かれたが、その質問には答えることが出来なかった。
過去の自分の死に血の繋がった家族たちが関与しているだなんて、そんなこと言えるわけがない。
結局その場でははぐらかしてしまった。
(全てが終わり、彼女の覚悟が決まったときに話そう……)
そうだ、今は別にやることがある。
今度こそは絶対に彼女を死なせるわけにはいかない。
――必ず、私が救ってみせる。
次こそは絶対に彼女を残酷な運命から救わなければならなかった。
この忌まわしいループを終わらせるためにも、彼女は絶対に死んではいけない。
「――王妃陛下、お久しぶりです」
「……ヘンリー公爵?」
前世ではそれほど関わったことも無かったが、万一の場合を考え今回は早い段階からリーシャに近付いた。
突然距離を縮めようとした私を、リーシャはかなり警戒しているようだった。
当然だ、私は社交界ではクロエに想いを寄せている男ということになっているのだから。
クロエはリーシャからすれば敵も同然。
簡単な心を開くことは出来ないだろう。
それから私は密かに彼女の動向を見張った。
やはりリーシャはいつだって予測出来ない行動を取る。
今回の生ではクロエ、エルフレッドの両方と出来るだけ距離を置くことにしたようだ。
三度の人生において全て違う行動を取っており、リーシャに前世の記憶があるのはほぼ確定だろう。
そして私も、二度の人生を歩んできて気付いたことがある。
(前回よりも……身体の自由がきく……)
それはリーシャが一度目の人生と違う行動を取れば取るほど、私の行動範囲が広がるということだ。
もしかすると、エルフレッドも同じかもしれない。
実際に、エルフレッドも少しずつ前の世界とは違う行動を取り始めていた。
二度目の人生では、リーシャはクロエと親しくしていたが、それでも未だにエルフレッドを愛していた。
しかし、三度目は違う。
どうやら彼女は長年の想い人への愛を完全に捨て去ったようだった。
エルフレッドは傷付いていたが、賢明な判断だと言えるだろう。
そしてこの男は三度目も記憶が無いらしく、突然のリーシャの冷たい態度にただ困惑するだけだった。
(お前は反省しろ)
彼女が受けた傷を知っているからこそ、同情なんて出来ない。
あの日、舞踏会でリーシャを助けたのは自分でも驚いた。
二度と彼女が死ぬところを見たくなかった、運命を変えたかった。
その思いが自分を突き動かした。
必死で運命に抗おうとするリーシャの姿に感銘を受けたのはそのときだった。
元々他人に関心を抱いたことなんて無かったが、彼女だけは違う。
この件を経て、助けたい、救いたいという気持ちがより一層強くなった。
リーシャと関わっていくうちに、秘密がバレそうになることが何度もあった。
聡明な彼女のことだから気付くのも当然だろう。
そして、ついに言い逃れ出来ないときが来た。
「ねぇ……貴方……もしかして、前世の記憶があるの……?」
「……」
認めざるを得なかった。
彼女はほとんど確信しているようでこれ以上は誤魔化せないと思い、素直に認めた。
それを知ったリーシャに過去のことを聞かれたが、その質問には答えることが出来なかった。
過去の自分の死に血の繋がった家族たちが関与しているだなんて、そんなこと言えるわけがない。
結局その場でははぐらかしてしまった。
(全てが終わり、彼女の覚悟が決まったときに話そう……)
そうだ、今は別にやることがある。
今度こそは絶対に彼女を死なせるわけにはいかない。
――必ず、私が救ってみせる。
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