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20 運命 側妃クロエ視点

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「どうして!!!どうしてこうも思い通りにいかないのよ!!!」


舞踏会が終わり、部屋に戻った私は苛立ちを隠しきれずにいた。


「そ、側妃様……!」
「うるさいわね!!!黙ってなさいよ!!!」
「キャアッ!」


怒り任せに宥めようとした侍女を突き飛ばした。
尻もちをついて怯えたように私を見上げる。


(そうよ、ああなったのも全部この女のせいよ)


リーシャ、エルフレッド、ギルバート、私を嘲笑う貴族たち。
誰に怒りの矛先を向ければいいのか分からなくなった私は、たまたま部屋にいた侍女に全てをぶつけた。


「アンタ……よくもあのドレスで私を行かせたわね……」
「え……あれは側妃様が王妃様のドレスを調べてそれと似た物を用意するようにとおっしゃったから……」
「嘲笑されることが分かっていたら着たりしなかったわ!どうして止めなかったのよ!」
「そ、そんな……側妃様だって満足していたではありませんか!」
「うるさい!」


(どうしてなのよ……どうして……)


原作にはこんな展開は無かった。
クロエが側妃になってから三ヶ月が経った頃に開かれる舞踏会で、リーシャは悪役王妃としてクロエの前に立ちはだかる。
このシーンでの彼女は、エルフレッドからプレゼントされた青色のドレスが自分のドレスと似ていることに腹を立て、ワインをかけるのだ。


愛する人から貰ったドレスが汚れてしまったことでクロエは涙し、エルフレッドはリーシャを糾弾する。
それを機に、リーシャは社交界での信頼を失うこととなる。


(最初から変だったのよ……エルフレッドからドレスの贈り物も無ければ、あの女が原作とは全く違う黄色いドレスを着てくることも……)


舞踏会が開かれる何日も前からエルフレッドからドレスが贈られることを心待ちにしていたというのに、いつまで経っても彼から贈り物が届くことは無かった。
そこで私は急遽計画を変更し、あの女が着るドレスを侍女に調べさせ、似た物を選んだのだ。
そうすれば原作通り物語は進むと、信じて疑わなかった。


しかし、結果は全く違うものとなった。
私を庇い、リーシャを糾弾するはずのエルフレッドは彼女の味方をした。
それだけではない、ギルバートまでもがリーシャの肩を持ったのだ。


(変だわ……だって彼は私を好きになる運命のはず……)


私を愛してやまないギルバートが何故私の敵であるリーシャの味方をするのか。
そもそもあの二人に接点なんてあったのか。
どれだけ考えても分からなかった。


きっとあの悪役王妃がギルバートを誘惑したに違いない。
そうでなければ彼があの女の味方をするはずが無いから。


「フフ……アハハ……アハハハ!!!」


突然大声で笑い出す私を、侍女は奇異の目で見た。


(フフフ……アイツ……自ら死神と関わるだなんてバッカみたい……)


――だってギルバートは、最終的にはあの女を殺す運命にあるんだから。



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