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4 側妃との茶会
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側妃クロエが王宮へ上がってから一ヶ月が経過した。
彼女がここへ来てからというもの、エルフレッドが私の部屋へ訪れることはほとんど無くなった。
側妃を迎える前までは週に一度お茶会をしていたが、それすらも今では無くなってしまった。
時々来たかと思えば、クロエに贈るプレゼントを代わりに選ばされたり、恋の悩みを聞かされたりした。
そんな目的で来たとしても、私は嬉々として彼を迎えていた。
――どのような理由だろうと、愛する彼が私の元へ来てくれたのはとても嬉しいことだったから。
側妃のクロエ様とは割と良い関係を築けていると思う。
今日もいつものように、彼女のお茶会に招待された。
「王妃様!来てくださってありがとうございます!」
「ごきげんよう、クロエ様。こちらこそ、招待してくださってありがとうございます」
彼女はいつだって嬉しそうに私を迎えてくれる。
彼女のことを好きでは無いが、彼の愛する人だから私も大事にしなければいけない。
「王宮での暮らしには慣れましたか?」
「はい、エルフレッド様のおかげでだいぶ慣れてきました」
「……そうですか」
「エルフレッド様は本当に優しい方なんです。この宝石も彼がプレゼントしてくださって……」
「……」
クロエ様は私にエルフレッドの話をたくさんしてくれた。
私も彼の妻であるということを忘れているかのように、毎日のように彼に愛されているのだということを話した。
「今日はエルフレッド様と一緒に庭園を散歩して、その後にお茶をして、この後も彼と会う約束をしているんです」
「それは良かったですね」
一ヶ月経ってもまるで礼儀作法が身に着いていないことを疑問に思っていたが、彼女の話を聞いて全て理解した。
どうやら陛下は彼女を好きなように遊ばせているらしい。
目の前にいる彼女は一ヶ月前から何も変わっていない。
貴族令嬢とは思えないほどにマナーがなっていないのだ。
しかし、エルフレッドはそんな彼女を愛している。
(私が頑張ってきたことなんて何の意味も無かったのね……)
自分がこれまで必死になってやってきたことを否定されたようで悲しくなる。
「自分が陛下に相手にされていないからって側妃様に取り入ろうとしているんだわ」
「まぁ、何て哀れな女……」
傍を通りかかった貴族夫人たちの声が耳に入った。
今現在、王宮、社交界に私の味方はほとんどいない。
理由は明白だ。
側妃が次期国王を産むかもしれないのだ。
いくら彼女が正妻ではないとはいえ、子を産むことの出来ない王妃よりかはずっと価値がある。
権力に目が無い貴族たちは当然、そちらにつくだろう。
元々私の味方なんてほとんどいなかったから仕方が無いのかもしれない。
エルフレッドですら今は私に背を向けている状態なのだから。
「王妃様、今度私とエルフレッド様の三人でお茶をしませんか?」
「え、陛下をここに呼ぶのですか……?」
(どうして陛下まで……)
彼女は一体何を考えているのだろうか。
私がいたら邪魔になるだけだろう。
エルフレッドだってクロエ様と二人きりが良いに決まっている。
「はい、だって私たちは……」
クロエ様は嬉しそうにクスッと笑った。
「――家族なのですから」
「……………………………え?」
彼女がここへ来てからというもの、エルフレッドが私の部屋へ訪れることはほとんど無くなった。
側妃を迎える前までは週に一度お茶会をしていたが、それすらも今では無くなってしまった。
時々来たかと思えば、クロエに贈るプレゼントを代わりに選ばされたり、恋の悩みを聞かされたりした。
そんな目的で来たとしても、私は嬉々として彼を迎えていた。
――どのような理由だろうと、愛する彼が私の元へ来てくれたのはとても嬉しいことだったから。
側妃のクロエ様とは割と良い関係を築けていると思う。
今日もいつものように、彼女のお茶会に招待された。
「王妃様!来てくださってありがとうございます!」
「ごきげんよう、クロエ様。こちらこそ、招待してくださってありがとうございます」
彼女はいつだって嬉しそうに私を迎えてくれる。
彼女のことを好きでは無いが、彼の愛する人だから私も大事にしなければいけない。
「王宮での暮らしには慣れましたか?」
「はい、エルフレッド様のおかげでだいぶ慣れてきました」
「……そうですか」
「エルフレッド様は本当に優しい方なんです。この宝石も彼がプレゼントしてくださって……」
「……」
クロエ様は私にエルフレッドの話をたくさんしてくれた。
私も彼の妻であるということを忘れているかのように、毎日のように彼に愛されているのだということを話した。
「今日はエルフレッド様と一緒に庭園を散歩して、その後にお茶をして、この後も彼と会う約束をしているんです」
「それは良かったですね」
一ヶ月経ってもまるで礼儀作法が身に着いていないことを疑問に思っていたが、彼女の話を聞いて全て理解した。
どうやら陛下は彼女を好きなように遊ばせているらしい。
目の前にいる彼女は一ヶ月前から何も変わっていない。
貴族令嬢とは思えないほどにマナーがなっていないのだ。
しかし、エルフレッドはそんな彼女を愛している。
(私が頑張ってきたことなんて何の意味も無かったのね……)
自分がこれまで必死になってやってきたことを否定されたようで悲しくなる。
「自分が陛下に相手にされていないからって側妃様に取り入ろうとしているんだわ」
「まぁ、何て哀れな女……」
傍を通りかかった貴族夫人たちの声が耳に入った。
今現在、王宮、社交界に私の味方はほとんどいない。
理由は明白だ。
側妃が次期国王を産むかもしれないのだ。
いくら彼女が正妻ではないとはいえ、子を産むことの出来ない王妃よりかはずっと価値がある。
権力に目が無い貴族たちは当然、そちらにつくだろう。
元々私の味方なんてほとんどいなかったから仕方が無いのかもしれない。
エルフレッドですら今は私に背を向けている状態なのだから。
「王妃様、今度私とエルフレッド様の三人でお茶をしませんか?」
「え、陛下をここに呼ぶのですか……?」
(どうして陛下まで……)
彼女は一体何を考えているのだろうか。
私がいたら邪魔になるだけだろう。
エルフレッドだってクロエ様と二人きりが良いに決まっている。
「はい、だって私たちは……」
クロエ様は嬉しそうにクスッと笑った。
「――家族なのですから」
「……………………………え?」
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