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恐怖 シルフィーラside
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(あれ……?ここは……?)
シルフィーラは夜遅く、見知らぬ小屋の中で目を覚ました。
(私……何でこんなところに……)
声を出そうにも口元を布で縛られていて声が出すことが出来ない。
しかもそれだけではなく、シルフィーラは手足の自由までもを奪われていた。
(あれ……何があったのかまるで思い出せないわ……)
自分が何故ここにいるのか、何故このような状況になっているのかを思い出そうとしたが、全く見当が付かなかった。
たしかに少し前まで公爵邸にいたはずだ。
シルフィーラは必死で記憶を辿った。
この日はリデルがオズワルドと出掛けていて不在だったため、一人自室で過ごしていた。
やることも何も無かったから本を読みに書庫へ行こうとしたときのことだ。
突然背後から誰かに殴られたのである。
鈍い痛みと共にシルフィーラは気を失った。
(そうだ……私……公爵邸で突然気を失って……)
しかし、シルフィーラにその先の記憶は無い。
頭には何者かによって包帯が巻かれていて、殴られたであろう箇所がズキズキと痛んだ。
(もしかして私、拉致されたの……?だとしたら一体誰が……?)
自身が何者かによって攫われたということを知ってもシルフィーラは至って冷静だった。
まずは自分が今いる場所を確認しようと考え、小屋の中を見渡してみる。
「……」
暗くてよく見えなかったが、人が住んでいる形跡は無く長らく使われていない小屋だということが一目で分かった。
そして小屋には窓が一つ取り付けられていて、そこから外の景色を見ることが出来た。
(……ここはどこなの?)
しかし、シルフィーラは自身がいるこの場所にまるで見覚えが無かった。
(……早くここから出ないと)
後ろ手に縛られた両手を無我夢中で動かしてみるが、キツく縛られた縄はビクともしなかった。
(こんなことしてる場合じゃないのに……)
こんなことをしているうちにも誘拐犯が戻って来るかもしれない。
その可能性を考えたシルフィーラは諦めずに縄を解こうとした。
(ダメね……)
しかし、やはり自力で縄を解くことは不可能だった。
(何か切れるものは……)
どうにかして縄を解こうと画策していたその瞬間、ギィと音を立てて小屋の扉が開いた。
「……!」
シルフィーラはビクリとなって、扉の方に視線を向けた。
開いた扉から現れたのは――
(え……ライアス様……?)
――ライアス・ベルクォーツ
ベルクォーツ公爵家の三人目の愛人の子供であり、シルフィーラの養子でもある人物だった。
ライアスは小屋の中に入ってくるなり、倒れているシルフィーラの元へゆっくりと歩み寄った。
(どうしてライアス様がここに……?)
シルフィーラの前でしゃがみ込むと、彼は口元の縄を解いた。
これにより、シルフィーラは声を出すことが出来るようになった。
「ラ、ライアス様!どうしてあなたが……!」
「……」
その問いに彼が答えることは無かった。
それどころか気味の悪い笑みを浮かべながら、無言でシルフィーラの頬に手を伸ばした。
「嫌ッ!」
もちろんシルフィーラは抵抗しようとした。
しかし、両手両足を縛られているせいで上手く動けない。
「……くくっ」
ライアスはそんなシルフィーラの反応を楽しんでいるかのように口の端を上げた。
その笑みの意味が分からなくて、ただただ困惑した。
そして彼はシルフィーラの頬をするりと撫でた。
(嫌ッ……やめて……)
その妙に優しい手つきが恐ろしくて仕方が無い。
シルフィーラが恐怖で震え上がっていたそのとき、開いたままの小屋の扉から一人の人物が中へ入って来た。
「――ちょっと、ライアス」
「……?」
声のした方に、シルフィーラは目を向けた。
その先にいたのは――
「……ああ、シャティか」
「え…………リベリス嬢!?」
不機嫌そうな顔をして小屋へ入って来たのは、少し前にライアスと共にいたシャティ・リベリス嬢だった。
リベリス嬢は座り込むシルフィーラをチラリと一瞥すると、すぐに興味の無さそうに壁にもたれかかった。
どうやら彼らは共犯のようだ。
(まさか、私に対する恨みで……!?)
ライアスは明らかにシルフィーラを嫌っていた。
そして彼女もまた、シルフィーラを小馬鹿にするような態度を取っていた。
「どうしてこんなことをしたんですか……」
「何故って?」
ライアスはシルフィーラの問いに、少し間を空けて答えた。
この後彼が放った言葉に、シルフィーラは未だかつてないほどの衝撃を受けることとなる。
「――お前のことが好きだったからだ」
「え……?」
シルフィーラは驚愕に目を瞠った。
「じょ、冗談を……」
「冗談じゃない」
「……」
ライアスの断固とした答えに、シルフィーラは絶句した。
何故なら彼女と彼は親子ほどの年の差があったから。
驚いて声も出せないシルフィーラに、ライアスはどこか悲しげな表情で口を開いた。
「……お前は、俺が初めて公爵邸に来たときのことを覚えているか」
「は、はい……」
***
ライアスがベルクォーツ公爵家の養子となり、公爵邸に来たのは今から約十年前。
彼がまだ十歳の頃だった。
彼は愛人の子として公爵家に迎えられたため、屋敷の使用人たちは最初からライアスに対してあまり好意的ではなかった。
それに加えて、ライアスは当時から横柄な性格をしていた。
我儘を言っては使用人たちを困らせている彼の周りには、次第に誰もいなくなってしまった。
『――ライアスって言うの?私はシルフィーラよ。よろしくね!』
そんなときに、優しく微笑みながら手を差し伸べてくれたのがまさにシルフィーラだった。
ライアスはその瞬間、彼女に恋に落ちた。
紛れも無い彼の初恋だった。
『ライアス、ここはね……』
それからライアスはシルフィーラと交流を持つようになった。
その間にも、実母であるセレナにもここまで優しくされたことは無かった彼のシルフィーラへの思いは募るばかりだった。
しかし、ライアスはある日を境にシルフィーラのことを避け始めた。
シルフィーラは自分のことが嫌いになったのかもしれないと思ってショックを受けたが、自分を嫌っているならと無理に関わろうとはしなかった。
しかし、実際は違った。
ライアスはシルフィーラをどうしても女性として意識してしまったため、距離を置くことにしたのだ。
シルフィーラは父の正妻。ライアスにとっては絶対に好きになってはいけない人だった。
年齢を重ねていくにつれてこの気持ちも薄れていくかと思ったライアスだったが、シルフィーラへの想いは募るばかり。
そこでライアスは他の女を好きになろうとして、色んな女に手を出したが誰一人として愛することは出来なかった。
そして、成人したライアスはついに己の欲望を抑えきれなくなりシルフィーラを自身の女にしようとするが、シルフィーラは自分を蔑ろにするオズワルドを未だに愛していた。
そのとき、ライアスはオズワルドに激しい嫉妬を覚えた。
何故、自分を放置して愛人にかまけている最低な夫を一途に想っているのかと。
ライアスは元々シルフィーラの夫であるオズワルドのことが嫌いだった。
彼がシルフィーラを見下すような発言を繰り返していたのは、周囲にシルフィーラを想っていることをバレないようにするためだった。
***
「その日、心に決めたんだ。何が何でもお前を手に入れてやろうと」
過去を語り終えたその瞬間、ライアスの青い瞳が鋭い眼光を放った。
「……ッ!」
シルフィーラはそんなライアスが恐ろしくて思わず後ずさった。
すぐ傍にいたリベリス嬢が彼を見てハァとため息をついた。
「……愛人を囲うのは構わないけど、次期当主は私が産んだ子供にしてよね」
「当然だ、最初からそういう約束だっただろう」
シルフィーラはライアスとリベリス嬢のそんなやり取りを見てさらに驚いた。
リベリス嬢はライアスを愛していたのでは無かったのか。
「……ッ、こんなことしてただで済むと思っているのですか!」
「俺の犯行がバレることは無い、愚かな父上は俺がお前を誘拐したことに気付かないだろう」
「……そんなことは!」
ライアスはそこでシルフィーラを拘束していた縄を解いたかと思うと、突然シルフィーラの肩を強い力で掴んだ。
「痛ッ!」
そしてそのまま、床に押し付ける。
シルフィーラは暴れるが、今や成人したライアスの力には到底敵わなかった。
リベリス嬢もその光景を呆れたような顔で見ているだけで、彼の行動を止めようとはしなかった。
(嫌ッ!やめてッ!助けて!――――旦那様ッ!)
そのときのシルフィーラの脳裏に浮かんだのは、若き日のオズワルドとの思い出の数々だった。
『シルフィーラ、愛してるよ』
まだ二人の間に亀裂が入っておらず、お互いの世界にお互いしか存在していなかったあの頃。
彼が優しい瞳で自身への愛を囁いてくれる、そんな日々。
思えばあの頃が一番幸せだったような気がする。
(旦那様……ッ)
今ここで、おとぎ話に出てくる王子のようにオズワルドがシルフィーラを助けに来てくれたらどれほど良かっただろうか。
しかし、そんなものはただの妄想に過ぎない。
こうしている間にもシルフィーラはライアスに体の自由を奪われていく。
ライアスがシルフィーラの両手を掴んで床に押し付けたとき、一筋の涙が彼女の頬を伝った。
あまりの恐ろしさに目を瞑った、そのときだった――
「―――シルフィーラ!!!」
突如、けたたましい音と共に小屋の中に月明かりが差し込んだ。
「え……?」
「なッ……!?」
涙で滲むシルフィーラの視界に、ある人物が映った。
「旦那様………………!」
小屋の入り口で月明かりに照らされていたのは、ハァハァと息を切らしているオズワルドだった。
シルフィーラは夜遅く、見知らぬ小屋の中で目を覚ました。
(私……何でこんなところに……)
声を出そうにも口元を布で縛られていて声が出すことが出来ない。
しかもそれだけではなく、シルフィーラは手足の自由までもを奪われていた。
(あれ……何があったのかまるで思い出せないわ……)
自分が何故ここにいるのか、何故このような状況になっているのかを思い出そうとしたが、全く見当が付かなかった。
たしかに少し前まで公爵邸にいたはずだ。
シルフィーラは必死で記憶を辿った。
この日はリデルがオズワルドと出掛けていて不在だったため、一人自室で過ごしていた。
やることも何も無かったから本を読みに書庫へ行こうとしたときのことだ。
突然背後から誰かに殴られたのである。
鈍い痛みと共にシルフィーラは気を失った。
(そうだ……私……公爵邸で突然気を失って……)
しかし、シルフィーラにその先の記憶は無い。
頭には何者かによって包帯が巻かれていて、殴られたであろう箇所がズキズキと痛んだ。
(もしかして私、拉致されたの……?だとしたら一体誰が……?)
自身が何者かによって攫われたということを知ってもシルフィーラは至って冷静だった。
まずは自分が今いる場所を確認しようと考え、小屋の中を見渡してみる。
「……」
暗くてよく見えなかったが、人が住んでいる形跡は無く長らく使われていない小屋だということが一目で分かった。
そして小屋には窓が一つ取り付けられていて、そこから外の景色を見ることが出来た。
(……ここはどこなの?)
しかし、シルフィーラは自身がいるこの場所にまるで見覚えが無かった。
(……早くここから出ないと)
後ろ手に縛られた両手を無我夢中で動かしてみるが、キツく縛られた縄はビクともしなかった。
(こんなことしてる場合じゃないのに……)
こんなことをしているうちにも誘拐犯が戻って来るかもしれない。
その可能性を考えたシルフィーラは諦めずに縄を解こうとした。
(ダメね……)
しかし、やはり自力で縄を解くことは不可能だった。
(何か切れるものは……)
どうにかして縄を解こうと画策していたその瞬間、ギィと音を立てて小屋の扉が開いた。
「……!」
シルフィーラはビクリとなって、扉の方に視線を向けた。
開いた扉から現れたのは――
(え……ライアス様……?)
――ライアス・ベルクォーツ
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ライアスは小屋の中に入ってくるなり、倒れているシルフィーラの元へゆっくりと歩み寄った。
(どうしてライアス様がここに……?)
シルフィーラの前でしゃがみ込むと、彼は口元の縄を解いた。
これにより、シルフィーラは声を出すことが出来るようになった。
「ラ、ライアス様!どうしてあなたが……!」
「……」
その問いに彼が答えることは無かった。
それどころか気味の悪い笑みを浮かべながら、無言でシルフィーラの頬に手を伸ばした。
「嫌ッ!」
もちろんシルフィーラは抵抗しようとした。
しかし、両手両足を縛られているせいで上手く動けない。
「……くくっ」
ライアスはそんなシルフィーラの反応を楽しんでいるかのように口の端を上げた。
その笑みの意味が分からなくて、ただただ困惑した。
そして彼はシルフィーラの頬をするりと撫でた。
(嫌ッ……やめて……)
その妙に優しい手つきが恐ろしくて仕方が無い。
シルフィーラが恐怖で震え上がっていたそのとき、開いたままの小屋の扉から一人の人物が中へ入って来た。
「――ちょっと、ライアス」
「……?」
声のした方に、シルフィーラは目を向けた。
その先にいたのは――
「……ああ、シャティか」
「え…………リベリス嬢!?」
不機嫌そうな顔をして小屋へ入って来たのは、少し前にライアスと共にいたシャティ・リベリス嬢だった。
リベリス嬢は座り込むシルフィーラをチラリと一瞥すると、すぐに興味の無さそうに壁にもたれかかった。
どうやら彼らは共犯のようだ。
(まさか、私に対する恨みで……!?)
ライアスは明らかにシルフィーラを嫌っていた。
そして彼女もまた、シルフィーラを小馬鹿にするような態度を取っていた。
「どうしてこんなことをしたんですか……」
「何故って?」
ライアスはシルフィーラの問いに、少し間を空けて答えた。
この後彼が放った言葉に、シルフィーラは未だかつてないほどの衝撃を受けることとなる。
「――お前のことが好きだったからだ」
「え……?」
シルフィーラは驚愕に目を瞠った。
「じょ、冗談を……」
「冗談じゃない」
「……」
ライアスの断固とした答えに、シルフィーラは絶句した。
何故なら彼女と彼は親子ほどの年の差があったから。
驚いて声も出せないシルフィーラに、ライアスはどこか悲しげな表情で口を開いた。
「……お前は、俺が初めて公爵邸に来たときのことを覚えているか」
「は、はい……」
***
ライアスがベルクォーツ公爵家の養子となり、公爵邸に来たのは今から約十年前。
彼がまだ十歳の頃だった。
彼は愛人の子として公爵家に迎えられたため、屋敷の使用人たちは最初からライアスに対してあまり好意的ではなかった。
それに加えて、ライアスは当時から横柄な性格をしていた。
我儘を言っては使用人たちを困らせている彼の周りには、次第に誰もいなくなってしまった。
『――ライアスって言うの?私はシルフィーラよ。よろしくね!』
そんなときに、優しく微笑みながら手を差し伸べてくれたのがまさにシルフィーラだった。
ライアスはその瞬間、彼女に恋に落ちた。
紛れも無い彼の初恋だった。
『ライアス、ここはね……』
それからライアスはシルフィーラと交流を持つようになった。
その間にも、実母であるセレナにもここまで優しくされたことは無かった彼のシルフィーラへの思いは募るばかりだった。
しかし、ライアスはある日を境にシルフィーラのことを避け始めた。
シルフィーラは自分のことが嫌いになったのかもしれないと思ってショックを受けたが、自分を嫌っているならと無理に関わろうとはしなかった。
しかし、実際は違った。
ライアスはシルフィーラをどうしても女性として意識してしまったため、距離を置くことにしたのだ。
シルフィーラは父の正妻。ライアスにとっては絶対に好きになってはいけない人だった。
年齢を重ねていくにつれてこの気持ちも薄れていくかと思ったライアスだったが、シルフィーラへの想いは募るばかり。
そこでライアスは他の女を好きになろうとして、色んな女に手を出したが誰一人として愛することは出来なかった。
そして、成人したライアスはついに己の欲望を抑えきれなくなりシルフィーラを自身の女にしようとするが、シルフィーラは自分を蔑ろにするオズワルドを未だに愛していた。
そのとき、ライアスはオズワルドに激しい嫉妬を覚えた。
何故、自分を放置して愛人にかまけている最低な夫を一途に想っているのかと。
ライアスは元々シルフィーラの夫であるオズワルドのことが嫌いだった。
彼がシルフィーラを見下すような発言を繰り返していたのは、周囲にシルフィーラを想っていることをバレないようにするためだった。
***
「その日、心に決めたんだ。何が何でもお前を手に入れてやろうと」
過去を語り終えたその瞬間、ライアスの青い瞳が鋭い眼光を放った。
「……ッ!」
シルフィーラはそんなライアスが恐ろしくて思わず後ずさった。
すぐ傍にいたリベリス嬢が彼を見てハァとため息をついた。
「……愛人を囲うのは構わないけど、次期当主は私が産んだ子供にしてよね」
「当然だ、最初からそういう約束だっただろう」
シルフィーラはライアスとリベリス嬢のそんなやり取りを見てさらに驚いた。
リベリス嬢はライアスを愛していたのでは無かったのか。
「……ッ、こんなことしてただで済むと思っているのですか!」
「俺の犯行がバレることは無い、愚かな父上は俺がお前を誘拐したことに気付かないだろう」
「……そんなことは!」
ライアスはそこでシルフィーラを拘束していた縄を解いたかと思うと、突然シルフィーラの肩を強い力で掴んだ。
「痛ッ!」
そしてそのまま、床に押し付ける。
シルフィーラは暴れるが、今や成人したライアスの力には到底敵わなかった。
リベリス嬢もその光景を呆れたような顔で見ているだけで、彼の行動を止めようとはしなかった。
(嫌ッ!やめてッ!助けて!――――旦那様ッ!)
そのときのシルフィーラの脳裏に浮かんだのは、若き日のオズワルドとの思い出の数々だった。
『シルフィーラ、愛してるよ』
まだ二人の間に亀裂が入っておらず、お互いの世界にお互いしか存在していなかったあの頃。
彼が優しい瞳で自身への愛を囁いてくれる、そんな日々。
思えばあの頃が一番幸せだったような気がする。
(旦那様……ッ)
今ここで、おとぎ話に出てくる王子のようにオズワルドがシルフィーラを助けに来てくれたらどれほど良かっただろうか。
しかし、そんなものはただの妄想に過ぎない。
こうしている間にもシルフィーラはライアスに体の自由を奪われていく。
ライアスがシルフィーラの両手を掴んで床に押し付けたとき、一筋の涙が彼女の頬を伝った。
あまりの恐ろしさに目を瞑った、そのときだった――
「―――シルフィーラ!!!」
突如、けたたましい音と共に小屋の中に月明かりが差し込んだ。
「え……?」
「なッ……!?」
涙で滲むシルフィーラの視界に、ある人物が映った。
「旦那様………………!」
小屋の入り口で月明かりに照らされていたのは、ハァハァと息を切らしているオズワルドだった。
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