25 / 32
オズワルドの悲しき過去
しおりを挟む
昼食を終えた二人はリデルの部屋でくつろいでいた。
ソファに座ったリデルの向かい側には、シルフィーラがお茶を飲みながら腰掛けていた。
「お義母様、体は大丈夫なのですか?」
「えッ!?な、何……?体!?」
「……?ライアス様に傷付けられたりしてないかなって」
「あ、ああ、全然平気よ!」
「なら良かったです。……………お義母様、どうしてそんなに顔が赤いんですか?」
「な、何でも無いのよ!」
顔を真っ赤にしてあたふたするシルフィーラを、リデルはきょとんとした顔で見つめた。
(こんなお義母様、初めて見た……)
不思議に思いながらもテーブルの上に置かれていたお菓子を一つ口に運んだそのとき、部屋の扉がノックされた。
「奥様、お嬢様。旦那様がいらっしゃっています」
「お父様が?」
「旦那様……」
それからすぐ、部屋にオズワルドが入って来た。
「シルフィーラ、リデル」
「お父様、どうしてこちらに?」
「二人がここにいると聞いてな」
オズワルドはソファに座っていたシルフィーラの隣に腰掛けた。
彼女はそんな彼から恥ずかしそうに顔を逸らした。
(お父様……)
オズワルドが来たことを確認した侍女が、彼の前にお茶を出した。
彼は出されたお茶を一口飲んでふぅと息を吐いた。
何か用があってここへ来たというわけではなさそうである。
「お父様。お父様に聞きたいことがあったんです」
「何だ?」
「たくさんあるんですけど、全部答えてくれますか」
「……そうだな、俺が答えられるものであれば何だって答えよう」
そこでオズワルドは、部屋にいた侍女を下がらせた。
残ったのはリデルとシルフィーラ、オズワルドの三人だけだ。
侍女が部屋から出て行った後、リデルはすぐに最初の質問をした。
「ライアス様たちはどうなりますか?」
「明日、公爵家から追い出すつもりだ」
オズワルドは何の迷いも無くそう答えた。
もう彼の中では決定事項のようである。
「旦那様……」
「母上は猛反対するだろうが……たとえ王家の血が入っていようともあの三人の父親は罪人だ。その事実は変わらない」
「王家の血……?」
「あ……」
首をかしげるリデルを、シルフィーラが心配そうに見た。
オズワルドはそこでリデルに視線を向けた。
「リデル……そういえばお前、マリナたちの父親が俺では無いことを知っているようだったな」
「旦那様……申し訳ありません……私が少し前にオースウェル様について言ってしまったんです……」
「いいや、かまわない。リデルには知る権利がある」
「……」
オズワルドは視線を少し下に向けてポツポツと話し始めた。
「俺とオースウェル兄上はな、父親が違うんだ」
「え……それってつまり……異父兄弟ってことですか……?」
「あぁ、そうだ」
それから彼は少し悲しそうな表情で自身の過去について語り始めた。
「母上は元々ベルクォーツ公爵家の一人娘だった。この国では爵位を継ぐのは男性であるべきだという考えが強く根付いているから母上は公爵家の当主としては認められなかった」
「……」
(どうしてダメなんだろう……?)
何故男性は良くて女性はダメなのか。
一体男女で何が違うというのだろうか。
リデルにはどうしてもそれが理解出来なかった。
「だが、何百年にも渡って続いている王国の名門公爵家の血を途絶えさせるわけにもいかない。だから母上は婿を取ることにした」
「もしかして、それが……」
「あぁ、そうだ。母上の最初の夫がオースウェル兄上の父親――当時のヴォルシュタイン王国の第二王子殿下だ。先王陛下の弟に当たる人でもあるな」
「……!」
(第二王子殿下……!)
この国で最も高貴な身分である王族だ。
「つまり、オースウェル兄上には王家の血が入っている。もちろんライアスたち三人もだ」
「……だから、お祖母様はあれほどまでにライアス様を溺愛してたんですね」
「そうだ。ライアスは兄上にそっくりだからな。それに加えて母親の身分も申し分ない」
エリザベータは異様なまでにライアスに執着していた。
少し前まではそれを不思議に思っていたが、そういうことならライアスがやたらとエリザベータに気に入られていたのも納得だ。
きっとライアスを自分の息子であるオースウェルに重ねていたに違いない。
「しかし、兄上が生まれてすぐ父である王子殿下は出征先で戦死した。本当に突然のことで母上は深い悲しみに暮れたそうだ。それから少しして、後継者が一人では心許ないからと母上の両親――祖父母は新しく婿を取らせた」
「じゃあ、そっちの方がお父様の実父だったということですか」
「その通りだ、ヴォルシュタイン王国の侯爵令息だった人だ」
「侯爵令息……」
たしかに王族と比べると劣るが、侯爵家であれば名門ベルクォーツ公爵家とも十分家格は釣り合っている。
しかし、このオズワルドの様子からして母であるエリザベータはそのような考えを持ってはいなかったのだろう。
「実際に母上は幼い頃から俺よりも兄上を重宝していた。王家の血を引く兄上を何が何でも後継者にしたかったんだろう。だからといって別に虐げられていたわけではなかったがな。まぁ、俺にもベルクォーツ公爵家の血は間違いなく入ってるわけだし」
「お父様……」
彼は笑いながらそう言ったが、その笑みに哀惜が含まれていることにリデルは気付いた。
オズワルドとオースウェルは同じベルクォーツ公爵家の血を引く子供だったが、その待遇には明らかな格差があったようだ。
「父上は俺はもちろん、兄上のことも自分の息子のように可愛がっていた。そして母上とも良き夫婦になるために尽くしてきた。しかし、母上はそんな夫に無関心なままだった。母上にとって一番大事なのは王族の血が混じっている兄上だったから」
「そ、そんな……!」
「……そして、そんな父上は最期まで母上のことを想いながら死んでいった」
そこでオズワルドは、自身の父親の最期についてを語り始めた。
***
『父上……!逝かないでください……!』
オズワルドはもう何日も床に臥す父の手を握りながら必死で語りかけた。
今にも泣きそうな顔をしている彼に、父親は優しい口調で言った。
『オズワルド……お前ならきっと大丈夫……お前は私よりもずっと有能だからな……』
『父上!』
『…………母さんは、来ていないのか?』
横になりながら部屋の中に視線を彷徨わせた父親が、オズワルドに尋ねた。
彼は一瞬返答に困ったが、正直に答えるほかなかった。
『……はい、母上は来ていません』
『そうか……』
そう、エリザベータは自身の夫の最期にも立ち会わなかった。
しかし、それを知っても父の表情は変わらなかった。
もしかすると、こうなることを心のどこかで分かっていたのかもしれない。
『オズワルド』
『はい、父上』
『母さんを……頼んだぞ……』
『……………父上?父上ッ!!!』
ただそれだけ言い残して、彼は息を引き取った。
大声で泣き崩れるオズワルドを背後に控えていたシルフィーラが涙を流しながらもそっと支えた。
最後の最後まで報われることの無かった想い。
オズワルドの父は死の間際まで妻となったエリザベータのことを気にかけていたのだ。
***
オズワルドが話を終え、それまでずっと彼の話を聞いているだけだったシルフィーラが口を開いた。
「お義父様は本当に優しい方だったわ。いつだって家族のことを一番に考えていた」
「ああ、血の繋がりの無いオースウェル兄上ですら父上には懐いていた。執務面においては天才とまで言われていた前公爵である第二王子殿下と比べられて肩身の狭い思いをしていたはずなのにな」
「お祖父様……」
エリザベータは最後までオズワルドの実父に関心を向けることは無かった。
そのことを考えると、リデルは胸がギュッと締め付けられるような気持ちになった。
「どうして……お祖母様は……そこまでお祖父様のことを……」
「ああ、それには色々と訳があるんだが……」
オズワルドは何から話せばいいのか……とでも言いたげに言葉を詰まらせた。
「そうだな、母上が第二王子だった前夫を深く愛していたというのもあるが……」
「……」
「父上が、前夫の喪が明ける前に迎えられた夫だったというのもあるな」
「……えッ!?」
後妻や後夫を迎えることは貴族においては別に珍しいことではない。
しかし、喪が明ける前に再婚するなどという話は聞いたことが無かったリデルは衝撃を隠しきれなかった。
(そんなことをすればそれこそ社交界で良くない噂が立ってしまう……)
前夫を深く愛していたのなら、エリザベータは一体何故そのようなことをしたのだろうか。
そんなリデルの疑問を読んだのであろうオズワルドが口を開いた。
「ああ、もちろん父上はそのことに関しては無関係だ。母上もだ。それをやったのは先々代公爵夫妻――母上の両親だからな」
「先々代……お祖母様のご両親……」
「いわゆる毒親というやつだな。母上もなかなか苦労して生きてきたようだ」
「毒親……ですか……?」
「ああ、先々代の公爵夫妻は戦死した義理の息子や夫の死で悲しみに暮れている娘のことなど気にも留めなかったそうだ。そのときの彼らにとって最大の悩みは後継者が一人しかいないことだった」
「そ、そんな……!」
それを考えればエリザベータもまた被害者だったのだ。
今までエリザベータを完全な加害者だと思っていたリデルは少しだけ複雑な気持ちになった。
(お祖母様にも色々あったんだなぁ……だからといってお祖父様を蔑ろにしていいわけではないけれど……)
そして、その話を全て聞き終えたリデルはふと気になったことを尋ねた。
「お父様、お義母様。ライアス様と伯父さんはそんなに似ているんですか?」
リデルの問いに、シルフィーラとオズワルドが顔を見合わせた。
「……まぁ、見る人が見れば気付くかも?」
「……遅かれ早かれ、ライアスの出自の秘密はバレていたかもしれないな」
「……」
(そんなに似てるんだ……)
いっそ騒ぎになる前にこうなって良かったのかもしれない。
二人の反応を見たリデルは心の中でそんなことを思ったが、結局それを口に出すことはしなかった。
ソファに座ったリデルの向かい側には、シルフィーラがお茶を飲みながら腰掛けていた。
「お義母様、体は大丈夫なのですか?」
「えッ!?な、何……?体!?」
「……?ライアス様に傷付けられたりしてないかなって」
「あ、ああ、全然平気よ!」
「なら良かったです。……………お義母様、どうしてそんなに顔が赤いんですか?」
「な、何でも無いのよ!」
顔を真っ赤にしてあたふたするシルフィーラを、リデルはきょとんとした顔で見つめた。
(こんなお義母様、初めて見た……)
不思議に思いながらもテーブルの上に置かれていたお菓子を一つ口に運んだそのとき、部屋の扉がノックされた。
「奥様、お嬢様。旦那様がいらっしゃっています」
「お父様が?」
「旦那様……」
それからすぐ、部屋にオズワルドが入って来た。
「シルフィーラ、リデル」
「お父様、どうしてこちらに?」
「二人がここにいると聞いてな」
オズワルドはソファに座っていたシルフィーラの隣に腰掛けた。
彼女はそんな彼から恥ずかしそうに顔を逸らした。
(お父様……)
オズワルドが来たことを確認した侍女が、彼の前にお茶を出した。
彼は出されたお茶を一口飲んでふぅと息を吐いた。
何か用があってここへ来たというわけではなさそうである。
「お父様。お父様に聞きたいことがあったんです」
「何だ?」
「たくさんあるんですけど、全部答えてくれますか」
「……そうだな、俺が答えられるものであれば何だって答えよう」
そこでオズワルドは、部屋にいた侍女を下がらせた。
残ったのはリデルとシルフィーラ、オズワルドの三人だけだ。
侍女が部屋から出て行った後、リデルはすぐに最初の質問をした。
「ライアス様たちはどうなりますか?」
「明日、公爵家から追い出すつもりだ」
オズワルドは何の迷いも無くそう答えた。
もう彼の中では決定事項のようである。
「旦那様……」
「母上は猛反対するだろうが……たとえ王家の血が入っていようともあの三人の父親は罪人だ。その事実は変わらない」
「王家の血……?」
「あ……」
首をかしげるリデルを、シルフィーラが心配そうに見た。
オズワルドはそこでリデルに視線を向けた。
「リデル……そういえばお前、マリナたちの父親が俺では無いことを知っているようだったな」
「旦那様……申し訳ありません……私が少し前にオースウェル様について言ってしまったんです……」
「いいや、かまわない。リデルには知る権利がある」
「……」
オズワルドは視線を少し下に向けてポツポツと話し始めた。
「俺とオースウェル兄上はな、父親が違うんだ」
「え……それってつまり……異父兄弟ってことですか……?」
「あぁ、そうだ」
それから彼は少し悲しそうな表情で自身の過去について語り始めた。
「母上は元々ベルクォーツ公爵家の一人娘だった。この国では爵位を継ぐのは男性であるべきだという考えが強く根付いているから母上は公爵家の当主としては認められなかった」
「……」
(どうしてダメなんだろう……?)
何故男性は良くて女性はダメなのか。
一体男女で何が違うというのだろうか。
リデルにはどうしてもそれが理解出来なかった。
「だが、何百年にも渡って続いている王国の名門公爵家の血を途絶えさせるわけにもいかない。だから母上は婿を取ることにした」
「もしかして、それが……」
「あぁ、そうだ。母上の最初の夫がオースウェル兄上の父親――当時のヴォルシュタイン王国の第二王子殿下だ。先王陛下の弟に当たる人でもあるな」
「……!」
(第二王子殿下……!)
この国で最も高貴な身分である王族だ。
「つまり、オースウェル兄上には王家の血が入っている。もちろんライアスたち三人もだ」
「……だから、お祖母様はあれほどまでにライアス様を溺愛してたんですね」
「そうだ。ライアスは兄上にそっくりだからな。それに加えて母親の身分も申し分ない」
エリザベータは異様なまでにライアスに執着していた。
少し前まではそれを不思議に思っていたが、そういうことならライアスがやたらとエリザベータに気に入られていたのも納得だ。
きっとライアスを自分の息子であるオースウェルに重ねていたに違いない。
「しかし、兄上が生まれてすぐ父である王子殿下は出征先で戦死した。本当に突然のことで母上は深い悲しみに暮れたそうだ。それから少しして、後継者が一人では心許ないからと母上の両親――祖父母は新しく婿を取らせた」
「じゃあ、そっちの方がお父様の実父だったということですか」
「その通りだ、ヴォルシュタイン王国の侯爵令息だった人だ」
「侯爵令息……」
たしかに王族と比べると劣るが、侯爵家であれば名門ベルクォーツ公爵家とも十分家格は釣り合っている。
しかし、このオズワルドの様子からして母であるエリザベータはそのような考えを持ってはいなかったのだろう。
「実際に母上は幼い頃から俺よりも兄上を重宝していた。王家の血を引く兄上を何が何でも後継者にしたかったんだろう。だからといって別に虐げられていたわけではなかったがな。まぁ、俺にもベルクォーツ公爵家の血は間違いなく入ってるわけだし」
「お父様……」
彼は笑いながらそう言ったが、その笑みに哀惜が含まれていることにリデルは気付いた。
オズワルドとオースウェルは同じベルクォーツ公爵家の血を引く子供だったが、その待遇には明らかな格差があったようだ。
「父上は俺はもちろん、兄上のことも自分の息子のように可愛がっていた。そして母上とも良き夫婦になるために尽くしてきた。しかし、母上はそんな夫に無関心なままだった。母上にとって一番大事なのは王族の血が混じっている兄上だったから」
「そ、そんな……!」
「……そして、そんな父上は最期まで母上のことを想いながら死んでいった」
そこでオズワルドは、自身の父親の最期についてを語り始めた。
***
『父上……!逝かないでください……!』
オズワルドはもう何日も床に臥す父の手を握りながら必死で語りかけた。
今にも泣きそうな顔をしている彼に、父親は優しい口調で言った。
『オズワルド……お前ならきっと大丈夫……お前は私よりもずっと有能だからな……』
『父上!』
『…………母さんは、来ていないのか?』
横になりながら部屋の中に視線を彷徨わせた父親が、オズワルドに尋ねた。
彼は一瞬返答に困ったが、正直に答えるほかなかった。
『……はい、母上は来ていません』
『そうか……』
そう、エリザベータは自身の夫の最期にも立ち会わなかった。
しかし、それを知っても父の表情は変わらなかった。
もしかすると、こうなることを心のどこかで分かっていたのかもしれない。
『オズワルド』
『はい、父上』
『母さんを……頼んだぞ……』
『……………父上?父上ッ!!!』
ただそれだけ言い残して、彼は息を引き取った。
大声で泣き崩れるオズワルドを背後に控えていたシルフィーラが涙を流しながらもそっと支えた。
最後の最後まで報われることの無かった想い。
オズワルドの父は死の間際まで妻となったエリザベータのことを気にかけていたのだ。
***
オズワルドが話を終え、それまでずっと彼の話を聞いているだけだったシルフィーラが口を開いた。
「お義父様は本当に優しい方だったわ。いつだって家族のことを一番に考えていた」
「ああ、血の繋がりの無いオースウェル兄上ですら父上には懐いていた。執務面においては天才とまで言われていた前公爵である第二王子殿下と比べられて肩身の狭い思いをしていたはずなのにな」
「お祖父様……」
エリザベータは最後までオズワルドの実父に関心を向けることは無かった。
そのことを考えると、リデルは胸がギュッと締め付けられるような気持ちになった。
「どうして……お祖母様は……そこまでお祖父様のことを……」
「ああ、それには色々と訳があるんだが……」
オズワルドは何から話せばいいのか……とでも言いたげに言葉を詰まらせた。
「そうだな、母上が第二王子だった前夫を深く愛していたというのもあるが……」
「……」
「父上が、前夫の喪が明ける前に迎えられた夫だったというのもあるな」
「……えッ!?」
後妻や後夫を迎えることは貴族においては別に珍しいことではない。
しかし、喪が明ける前に再婚するなどという話は聞いたことが無かったリデルは衝撃を隠しきれなかった。
(そんなことをすればそれこそ社交界で良くない噂が立ってしまう……)
前夫を深く愛していたのなら、エリザベータは一体何故そのようなことをしたのだろうか。
そんなリデルの疑問を読んだのであろうオズワルドが口を開いた。
「ああ、もちろん父上はそのことに関しては無関係だ。母上もだ。それをやったのは先々代公爵夫妻――母上の両親だからな」
「先々代……お祖母様のご両親……」
「いわゆる毒親というやつだな。母上もなかなか苦労して生きてきたようだ」
「毒親……ですか……?」
「ああ、先々代の公爵夫妻は戦死した義理の息子や夫の死で悲しみに暮れている娘のことなど気にも留めなかったそうだ。そのときの彼らにとって最大の悩みは後継者が一人しかいないことだった」
「そ、そんな……!」
それを考えればエリザベータもまた被害者だったのだ。
今までエリザベータを完全な加害者だと思っていたリデルは少しだけ複雑な気持ちになった。
(お祖母様にも色々あったんだなぁ……だからといってお祖父様を蔑ろにしていいわけではないけれど……)
そして、その話を全て聞き終えたリデルはふと気になったことを尋ねた。
「お父様、お義母様。ライアス様と伯父さんはそんなに似ているんですか?」
リデルの問いに、シルフィーラとオズワルドが顔を見合わせた。
「……まぁ、見る人が見れば気付くかも?」
「……遅かれ早かれ、ライアスの出自の秘密はバレていたかもしれないな」
「……」
(そんなに似てるんだ……)
いっそ騒ぎになる前にこうなって良かったのかもしれない。
二人の反応を見たリデルは心の中でそんなことを思ったが、結局それを口に出すことはしなかった。
129
お気に入りに追加
2,108
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
【完結】野垂れ死ねと言われ家を追い出されましたが幸せです
kana
恋愛
伯爵令嬢のフローラは10歳の時に母を亡くした。
悲しむ間もなく父親が連れてきたのは後妻と義姉のエリザベスだった。
その日から虐げられ続けていたフローラは12歳で父親から野垂れ死ねと言われ邸から追い出されてしまう。
さらに死亡届まで出されて⋯⋯
邸を追い出されたフローラには会ったこともない母方の叔父だけだった。
快く受け入れてくれた叔父。
その叔父が連れてきた人が⋯⋯
※毎度のことながら設定はゆるゆるのご都合主義です。
※誤字脱字が多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる