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30 その後
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断罪劇の後、私とアルフ様は場所を変えて二人で話し合っていた。
「あの男はどうするつもりだ?このままずっと謹慎させておくわけにはいかないだろう?」
「それもそうですね……どうしましょうか……」
話題はディアン様の沙汰に関してだ。
ドロシー様の処刑は免れないだろうが、彼にはどう処罰を下すべきか。
(このまま元通りに夫婦生活を続けていくっていうのもなぁ……)
あんな人と夫婦に戻るだなんて死んでも嫌だった。
リアもいるし、父親がいた方が良いということは分かっているが私の心が耐えられそうになかった。
じっと頭を悩ませていると、向かいに座っていたアルフ様が口を開いた。
「――シア」
「はい」
「俺に良い考えがあるんだが」
「良い考え……?」
アルフ様はニヤッと笑った。
何か企んでいるときの顔だ。
「あの男と離縁するというのはどうだろうか?」
「離縁……本人の同意が無くても出来るのでしょうか?」
「ああ、普通の夫婦なら難しいがアイツの場合お前を蔑ろにしていた上に殺害未遂事件まで起こしているからな。証拠があるから国王陛下に提出すればあの男が拒否していたとしても離縁出来るはずだ」
「そうだったんですね……!」
目の前がパァッと明るくなった。
離縁してしまえば二度とディアン様と顔を合わせる必要も無い。
(リアが傷付くことも無いわけだし……一石二鳥だわ)
嬉しそうな私を見て、アルフ様がクスリと笑いながら言った。
「それにグクルス公爵家には既に二人も子供がいるからな。アイツがいなくても何の問題も無い」
「二人の子供……」
二人と聞いて、リア以外にももう一人グクルス公爵家の血を引く子がいることを思い出した。
(そういえば、ルヴァンはどうなるのだろう……)
母親は処刑され、父親も既にいない。
ディアン様を父親だと信じて生きてきた彼にとっては残酷なことだろうが、こればっかりは仕方が無かった。
彼はディアン様が最も憎悪するアース様の血を引いた子だったから。
(むしろディアン様をあの子に会わせるのは危険だわ……)
そんな私の悩みの種を分かっているのか、アルフ様が当然のようにこう言った。
「――ルヴァンはきっと優秀な公爵家の当主になるだろうな」
「!アルフ様……」
「あのアースの血を受け継いでいるんだ。性格さえ歪まなければそれはもう聡明な公爵になるだろう」
たしかにその通りだ。
アース様は性格こそ最悪だったが、公爵家当主としては非常に優秀な人だった。
そんな彼の息子なのだから、ルヴァンもきっと成長すれば彼のように賢い公爵になるはずだ。
「そうですね、期待出来ますわ」
「ああ」
そこまで言うと、アルフ様はソファから立ち上がった。
「愛人の方は近いうちに判決が下るはずだ。俺は見に行くが……お前はどうする?」
「……私も彼女の最期の姿を見届けようと思います」
「そうか」
すごく悩んだが、私はドロシー様の最期の姿を見に行くことにした。
私を貶めようとした女の最期を見届けたかったし、あの稀代の悪女が最期何を言うのか、反省はしているのかが気にかかったからだ。
「あの男はどうするつもりだ?このままずっと謹慎させておくわけにはいかないだろう?」
「それもそうですね……どうしましょうか……」
話題はディアン様の沙汰に関してだ。
ドロシー様の処刑は免れないだろうが、彼にはどう処罰を下すべきか。
(このまま元通りに夫婦生活を続けていくっていうのもなぁ……)
あんな人と夫婦に戻るだなんて死んでも嫌だった。
リアもいるし、父親がいた方が良いということは分かっているが私の心が耐えられそうになかった。
じっと頭を悩ませていると、向かいに座っていたアルフ様が口を開いた。
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「はい」
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「あの男と離縁するというのはどうだろうか?」
「離縁……本人の同意が無くても出来るのでしょうか?」
「ああ、普通の夫婦なら難しいがアイツの場合お前を蔑ろにしていた上に殺害未遂事件まで起こしているからな。証拠があるから国王陛下に提出すればあの男が拒否していたとしても離縁出来るはずだ」
「そうだったんですね……!」
目の前がパァッと明るくなった。
離縁してしまえば二度とディアン様と顔を合わせる必要も無い。
(リアが傷付くことも無いわけだし……一石二鳥だわ)
嬉しそうな私を見て、アルフ様がクスリと笑いながら言った。
「それにグクルス公爵家には既に二人も子供がいるからな。アイツがいなくても何の問題も無い」
「二人の子供……」
二人と聞いて、リア以外にももう一人グクルス公爵家の血を引く子がいることを思い出した。
(そういえば、ルヴァンはどうなるのだろう……)
母親は処刑され、父親も既にいない。
ディアン様を父親だと信じて生きてきた彼にとっては残酷なことだろうが、こればっかりは仕方が無かった。
彼はディアン様が最も憎悪するアース様の血を引いた子だったから。
(むしろディアン様をあの子に会わせるのは危険だわ……)
そんな私の悩みの種を分かっているのか、アルフ様が当然のようにこう言った。
「――ルヴァンはきっと優秀な公爵家の当主になるだろうな」
「!アルフ様……」
「あのアースの血を受け継いでいるんだ。性格さえ歪まなければそれはもう聡明な公爵になるだろう」
たしかにその通りだ。
アース様は性格こそ最悪だったが、公爵家当主としては非常に優秀な人だった。
そんな彼の息子なのだから、ルヴァンもきっと成長すれば彼のように賢い公爵になるはずだ。
「そうですね、期待出来ますわ」
「ああ」
そこまで言うと、アルフ様はソファから立ち上がった。
「愛人の方は近いうちに判決が下るはずだ。俺は見に行くが……お前はどうする?」
「……私も彼女の最期の姿を見届けようと思います」
「そうか」
すごく悩んだが、私はドロシー様の最期の姿を見に行くことにした。
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