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28 終焉

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ドロシー様の過去話に、部屋が静寂に包まれた。
彼女の過去の犯罪経歴に、皆が驚きを隠せないようだった。


「そう、それが貴方の本当の姿だったというわけね」
「……」


ドロシー様が犯してきた罪は私の想像以上に重いもののようだった。


(全てに呆れ返るわ)


欲に溺れ、あらゆる悪事に手を染めてきたドロシー様も、彼女の本性に気付かず溺愛していたディアン様も。
全員愚か者だ。


「これだけの罪を犯しておいて、ただで済むとは思っていないわよね?」
「……アンタの好きにすればいいじゃない。こうなったら処刑でも何でも受け入れてやるわよ」


既に生への執着はないのか、どこか諦めたような表情でそう言った。


「理解が早くて助かるわ。騎士、この女を今すぐ地下牢に――」


そう言いかけたそのとき、突然部屋中に狂ったような大声が響いた。


「ハハッ……ハハハッ……ハハハハハハハハハッ!!!!!」
「ディアン様……!?」


慌てて彼を見ると、先ほどまで絶望で膝を着いていた彼がいつの間にか立ち上がっていた。
そして、手で額を押さえながらゆっくりと歩き始めた。


(ディアン様、一体何をする気なの!?)


それから彼は突然猛スピードでドロシー様に突進したかと思うと、彼女の脇腹を斬り付けた。


「うっ……!」


辺り一面に鮮血が飛び散った。
わざと急所を外したのだろう。


「お前……よくも……よくも……!」


そう叫んだディアン様の目は狂気に満ちていた。
今すぐにでもドロシー様を殺してしまいそうだ。


焦った私は騎士たちに命令を下した。


「騎士!旦那様を取り押さえなさい!」
「はい!」


ディアン様はドロシー様に再び飛び掛かろうとしたが、あえなく屈強な騎士たちに取り押さえられてしまった。


「クッ……!」
「アハハッ、良い気味ね!」


騎士たちに押さえつけられたディアン様を見たドロシー様が血を流しながら壊れたように笑った。
かつて深く愛し合っていた二人の姿は見る影も無かった。


私は二人を取り押さえている騎士たちに向かって命令を下した。


「旦那様はしばらくの間自室で謹慎していてください。その女は犯した罪が多すぎるから地下牢に入れた後、王宮の法廷へ送ることにするわ」
「はい、公爵夫人」


騎士たちが二人を連れて部屋を出て行く。


「おい、放せ!私を誰だと思っているんだ!!!今すぐ放せ、その女を殺すんだ……!」
「嫌よ、汚い手で触らないで!」


最後の最後まで醜く喚いていた二人だったが、しばらくすると音は完全に聞こえなくなった。


(ふぅ……)


人を断罪するのは初めてだったが、何とか無事に終えることが出来たようだった。


「――終わったようだな」
「アルフ様……」


二人がいなくなってから、断罪劇の間ずっと傍観していたアルフ様が声をかけた。


「さっきのお前、なかなかかっこよかったぞ」
「そ、そうでしょうか……?」
「まだ幼いと思っていたのに、大人になったんだな」


そう言って笑いながらアルフ様は私の頭をガシガシと撫でた。


「ア、アルフ様……」


最近の彼の行動に、何だか昔の感情が蘇ってきたようだ。







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