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24 断罪②
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「…………………な……にを……」
ディアン様の顔から一瞬にして表情が抜け落ちた。
口元は震え、顔から血の気が引いていく。
(随分ショックを受けているみたいね)
愛する人が自身が殺したいほど憎んでいる相手の元愛人だったと知ったのだから当然だろう。
しかしそれでも僅かに愛した女性を信じたい気持ちが残っていたのか、ディアン様が震える唇を動かした。
「お、おい……馬鹿なことを言うな……ドロシーとアイツには何の接点も無い……はずだ……」
「――ドロシー様が前公爵様と関係を持っていたことは公爵邸にいる使用人の多くが知っていたことですよ」
「!」
ディアン様に追い討ちをかけるようにそう言ったのはその場にいたもう一人の使用人だった。
そしてそれを機に、部屋にいた使用人たちが次々と口を開いた。
「私も知っていました。一時は前公爵が親しくしている女性の中で一番のお気に入りでしたね」
「ああ、そこからでしたよね……ドロシー様がやたらと私たちを見下すようになったの」
「昔、庭師が二人が庭園で抱き合っているところを見たとおっしゃっていましたわ!」
次々と出てくる有力な証言。
彼らが嘘をつくような人ではないというこそはディアン様だってよく分かっているはずだ。
だからこそ、余計に衝撃が大きいのだろう。
「そ、そんな……」
真実を知ったディアン様は膝から崩れ落ちた。
私はそんな彼に近付き、合計で十枚以上にもなる封筒を手渡した。
「これはドロシー様が前公爵に宛てた手紙です」
「……」
「彼女、上手い具合に公爵を誘惑してその気にさせ、平民でありながらも屋敷内で権力を得ていたようですね」
「ドロシーの筆跡……」
十年以上も前の手紙だったため、ところどころ字がかすれて紙も色あせてしまっている。
しかし、ディアン様を絶望させるには十分すぎるくらいだろう。
「私をずっと騙していたということか……」
彼は拳を握り締め、体を震わせた。
ドロシー様に対する怒りと長年騙された自らの愚かさに対する怒りの両方が混ざっているように思えた。
(でもね、残念ながら彼女の罪はこれだけではないのよ)
そう、彼女はもっと大きな罪を犯している。
それも万が一バレれば死に値するほどの。
「――ディアン様、ルヴァンの本当の父親は一体誰だと思いますか?」
「……」
そんなことを聞かれると思っていなかったのか、ディアン様が固まった。
しかし、すぐ何かに気付いたように顔を真っ青にした。
「も、もしかして……そんな……馬鹿な……」
「ええ、そうです。ルヴァンが生まれたとき、アース様は生きていらっしゃいました。そして母親のドロシー様はアース様と肉体関係を持っていた……」
「……」
彼の顔色がどんどん青くなっていく。
ちょうどそのとき、部屋の中に一人の騎士が入って来た。
(あら、良いタイミングで来たわね)
「結果が出たみたいね」
「はい、魔術師による検査の結果……………旦那様とお坊ちゃま、お二人の親子関係は完全に否定されました」
「……」
私はディアン様からよく見えるように検査結果の書かれた紙を床に落とした。
そして彼を見下ろし、冷たい声で告げた。
「貴方はずっと私の娘をアース様の子供だとおっしゃっていました。ですが本当はルヴァンこそがアース様の子供だったのです。恋に溺れた愚かな貴方はそれに気付きもせず、母親を殺した仇の血を引く子供を自分の子供として傍に置き続け愛を注いでいたのです!!!」
「うわああああああああああああああ!!!」
その言葉に堪えきれなくなったのか、ディアン様が髪をむしりながら叫び声を上げた。
憎きアース様の子供を可愛がっていたと知って正気を失ってしまったようだ。
そんな彼の様子を、ドロシー様は気まずそうに見つめていた。
自分を心の底から愛してくれた人にどれだけ酷い仕打ちをしたのか、理解しているのだろうか。
私はディアン様に深く傷付けられた被害者だが、別視点から見れば彼もまた被害者なのだ。
(可哀相だけれど、ここで全てを終わらせるのよ)
そう決意した私は再び彼を見下ろした。
「それと、もう一つ明らかにしなければならないことがあります」
「まだあるのか……」
酷く疲れ切った様子のディアン様は、聞きたくないというように顔を背けた。
私はそんな彼の様子を気にすることなく話し続けた。
「――今から約十年前に起きた事件、旦那様の母君が冤罪により処刑されてしまった事件の真相を明らかにしたいと思います」
「……!」
ドロシー様の体がビクリと震えた。
ディアン様の顔から一瞬にして表情が抜け落ちた。
口元は震え、顔から血の気が引いていく。
(随分ショックを受けているみたいね)
愛する人が自身が殺したいほど憎んでいる相手の元愛人だったと知ったのだから当然だろう。
しかしそれでも僅かに愛した女性を信じたい気持ちが残っていたのか、ディアン様が震える唇を動かした。
「お、おい……馬鹿なことを言うな……ドロシーとアイツには何の接点も無い……はずだ……」
「――ドロシー様が前公爵様と関係を持っていたことは公爵邸にいる使用人の多くが知っていたことですよ」
「!」
ディアン様に追い討ちをかけるようにそう言ったのはその場にいたもう一人の使用人だった。
そしてそれを機に、部屋にいた使用人たちが次々と口を開いた。
「私も知っていました。一時は前公爵が親しくしている女性の中で一番のお気に入りでしたね」
「ああ、そこからでしたよね……ドロシー様がやたらと私たちを見下すようになったの」
「昔、庭師が二人が庭園で抱き合っているところを見たとおっしゃっていましたわ!」
次々と出てくる有力な証言。
彼らが嘘をつくような人ではないというこそはディアン様だってよく分かっているはずだ。
だからこそ、余計に衝撃が大きいのだろう。
「そ、そんな……」
真実を知ったディアン様は膝から崩れ落ちた。
私はそんな彼に近付き、合計で十枚以上にもなる封筒を手渡した。
「これはドロシー様が前公爵に宛てた手紙です」
「……」
「彼女、上手い具合に公爵を誘惑してその気にさせ、平民でありながらも屋敷内で権力を得ていたようですね」
「ドロシーの筆跡……」
十年以上も前の手紙だったため、ところどころ字がかすれて紙も色あせてしまっている。
しかし、ディアン様を絶望させるには十分すぎるくらいだろう。
「私をずっと騙していたということか……」
彼は拳を握り締め、体を震わせた。
ドロシー様に対する怒りと長年騙された自らの愚かさに対する怒りの両方が混ざっているように思えた。
(でもね、残念ながら彼女の罪はこれだけではないのよ)
そう、彼女はもっと大きな罪を犯している。
それも万が一バレれば死に値するほどの。
「――ディアン様、ルヴァンの本当の父親は一体誰だと思いますか?」
「……」
そんなことを聞かれると思っていなかったのか、ディアン様が固まった。
しかし、すぐ何かに気付いたように顔を真っ青にした。
「も、もしかして……そんな……馬鹿な……」
「ええ、そうです。ルヴァンが生まれたとき、アース様は生きていらっしゃいました。そして母親のドロシー様はアース様と肉体関係を持っていた……」
「……」
彼の顔色がどんどん青くなっていく。
ちょうどそのとき、部屋の中に一人の騎士が入って来た。
(あら、良いタイミングで来たわね)
「結果が出たみたいね」
「はい、魔術師による検査の結果……………旦那様とお坊ちゃま、お二人の親子関係は完全に否定されました」
「……」
私はディアン様からよく見えるように検査結果の書かれた紙を床に落とした。
そして彼を見下ろし、冷たい声で告げた。
「貴方はずっと私の娘をアース様の子供だとおっしゃっていました。ですが本当はルヴァンこそがアース様の子供だったのです。恋に溺れた愚かな貴方はそれに気付きもせず、母親を殺した仇の血を引く子供を自分の子供として傍に置き続け愛を注いでいたのです!!!」
「うわああああああああああああああ!!!」
その言葉に堪えきれなくなったのか、ディアン様が髪をむしりながら叫び声を上げた。
憎きアース様の子供を可愛がっていたと知って正気を失ってしまったようだ。
そんな彼の様子を、ドロシー様は気まずそうに見つめていた。
自分を心の底から愛してくれた人にどれだけ酷い仕打ちをしたのか、理解しているのだろうか。
私はディアン様に深く傷付けられた被害者だが、別視点から見れば彼もまた被害者なのだ。
(可哀相だけれど、ここで全てを終わらせるのよ)
そう決意した私は再び彼を見下ろした。
「それと、もう一つ明らかにしなければならないことがあります」
「まだあるのか……」
酷く疲れ切った様子のディアン様は、聞きたくないというように顔を背けた。
私はそんな彼の様子を気にすることなく話し続けた。
「――今から約十年前に起きた事件、旦那様の母君が冤罪により処刑されてしまった事件の真相を明らかにしたいと思います」
「……!」
ドロシー様の体がビクリと震えた。
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