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23 断罪①
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「おい、これは一体どういうことだ」
ドロシー様と暗殺者の男はこれから始まることを察して顔が真っ青になっているのに対し、ディアン様は未だに状況が分かっていないらしい。
(これから貴方は地獄の底に落ちるのよ)
「ディアン様、私が今日貴方をここへ呼んだのには理由があります」
「理由?一体何だというんだ?」
「――放火事件の真犯人が分かりました」
「……何だと?」
ディアン様が驚いたように目を見開いた。
そしてドロシー様と男はさらに顔が青くなっていく。
魔法でこの部屋の扉や窓を開けられないようにしてあるため、逃げることすら出来ないのだ。
「結論から申し上げますと、放火を計画したのはドロシー様で実行犯はそこにいる男です」
「なッ……!?」
ディアン様はすぐにドロシー様を見たが、彼女は俯いて答えようとしない。
私は彼女が火事を計画したという証拠を彼に突き付けた。
「ドロシーがそのようなことを……何かの冗談だろう……?」
「……違う、私は……」
証拠は揃っているのだから素直に認めればいいものを、彼女は悪あがきを続けた。
「私はやってないわ!全部その男が一人で勝手にやったことよ!!!」
「なッ……お前が指示したことだろうが!あのボロ家から出て行きたいから家を燃やしてくれって俺に依頼したんだろ!」
「うるさいわね、私はただ家が燃え尽きさえすればそれで良かったの!五人も死なせたのはアンタのせいよ!」
「死者が出てもかまわないって言ったのはお前だろ!」
ドロシー様は倒れている男と醜く言い争いを始めた。
この期に及んで罪を擦り付け合っているようだ。
そのやり取りをディアン様は衝撃を受けたような顔でじっと見つめていた。
「ドロシー……」
「!こ、これは……」
慌てて否定しようとするも既に遅かった。
彼女は自ら放火犯が自分だということを認めたも同然なのだ。
弁解の余地も無い。
「君がやったんだな……全て……」
ディアン様は酷くショックを受けたようで、額を手で押さえた。
「だ、だってあの家ボロくて幽霊まで出るし……耐えられなかったのよ!」
「だからといって燃やすことは無いだろう……あそこには母上と過ごした大切な思い出が詰まっていたのだ……君がそこまで望むのなら新しい家を用意するつもりだった……それなのに……」
「……何よそれ」
ディアン様の呟きに、ドロシー様が激しい怒りを露わにした。
「元はと言えば、貴方が私の要望を叶えないのが悪いんでしょ!!!何が思い出よ!いつまでも過去にしがみついて、情けない男ね!!!私はあの家を燃やしたことを別に後悔していないわ!!!」
「ドロシー……」
声を荒らげるその姿は見るに耐えず、ディアン様を失望させるには十分だった。
そんな彼女を見た彼がポツリと呟いた。
「君は何故……そこまで変わってしまったんだ……」
「……」
(あら、愚かなディアン様はドロシー様が”変わった”と思っているみたいね)
そんなことは無い。
彼女は貴方と出会った当初からこういう性格だった。
ただ単に、貴方がこれまで気付かなかっただけで。
それをしっかりと分からせるために貴方をここに呼んだ。
「――ドロシー様が犯した罪はこれだけではありません」
「……何?」
まだ何かあるのかとディアン様が眉をピクリとさせた。
「彼女は放火を計画する前から大罪を犯しています」
「大罪……?」
「やめて!!!あんたいい加減に――」
私に飛びかかろうとしたドロシー様の口を騎士が塞いだ。
(邪魔してもらっちゃ困るわ)
騎士に押さえつけられてもなおもがく彼女を一瞥し、私はある一人の証人を呼び寄せた。
「全て言えるかしら?」
私が呼んだ証人とは、公爵家で長く働いている侍女だった。
彼女は全てを知っている。
だからこそ今回この断罪の場に招いたのだ。
「はい、ドロシー様は……」
侍女は言いにくそうにしながらも、観念したかのようにゆっくりと口を開いた。
「――前公爵様と関係を持っていました」
ドロシー様と暗殺者の男はこれから始まることを察して顔が真っ青になっているのに対し、ディアン様は未だに状況が分かっていないらしい。
(これから貴方は地獄の底に落ちるのよ)
「ディアン様、私が今日貴方をここへ呼んだのには理由があります」
「理由?一体何だというんだ?」
「――放火事件の真犯人が分かりました」
「……何だと?」
ディアン様が驚いたように目を見開いた。
そしてドロシー様と男はさらに顔が青くなっていく。
魔法でこの部屋の扉や窓を開けられないようにしてあるため、逃げることすら出来ないのだ。
「結論から申し上げますと、放火を計画したのはドロシー様で実行犯はそこにいる男です」
「なッ……!?」
ディアン様はすぐにドロシー様を見たが、彼女は俯いて答えようとしない。
私は彼女が火事を計画したという証拠を彼に突き付けた。
「ドロシーがそのようなことを……何かの冗談だろう……?」
「……違う、私は……」
証拠は揃っているのだから素直に認めればいいものを、彼女は悪あがきを続けた。
「私はやってないわ!全部その男が一人で勝手にやったことよ!!!」
「なッ……お前が指示したことだろうが!あのボロ家から出て行きたいから家を燃やしてくれって俺に依頼したんだろ!」
「うるさいわね、私はただ家が燃え尽きさえすればそれで良かったの!五人も死なせたのはアンタのせいよ!」
「死者が出てもかまわないって言ったのはお前だろ!」
ドロシー様は倒れている男と醜く言い争いを始めた。
この期に及んで罪を擦り付け合っているようだ。
そのやり取りをディアン様は衝撃を受けたような顔でじっと見つめていた。
「ドロシー……」
「!こ、これは……」
慌てて否定しようとするも既に遅かった。
彼女は自ら放火犯が自分だということを認めたも同然なのだ。
弁解の余地も無い。
「君がやったんだな……全て……」
ディアン様は酷くショックを受けたようで、額を手で押さえた。
「だ、だってあの家ボロくて幽霊まで出るし……耐えられなかったのよ!」
「だからといって燃やすことは無いだろう……あそこには母上と過ごした大切な思い出が詰まっていたのだ……君がそこまで望むのなら新しい家を用意するつもりだった……それなのに……」
「……何よそれ」
ディアン様の呟きに、ドロシー様が激しい怒りを露わにした。
「元はと言えば、貴方が私の要望を叶えないのが悪いんでしょ!!!何が思い出よ!いつまでも過去にしがみついて、情けない男ね!!!私はあの家を燃やしたことを別に後悔していないわ!!!」
「ドロシー……」
声を荒らげるその姿は見るに耐えず、ディアン様を失望させるには十分だった。
そんな彼女を見た彼がポツリと呟いた。
「君は何故……そこまで変わってしまったんだ……」
「……」
(あら、愚かなディアン様はドロシー様が”変わった”と思っているみたいね)
そんなことは無い。
彼女は貴方と出会った当初からこういう性格だった。
ただ単に、貴方がこれまで気付かなかっただけで。
それをしっかりと分からせるために貴方をここに呼んだ。
「――ドロシー様が犯した罪はこれだけではありません」
「……何?」
まだ何かあるのかとディアン様が眉をピクリとさせた。
「彼女は放火を計画する前から大罪を犯しています」
「大罪……?」
「やめて!!!あんたいい加減に――」
私に飛びかかろうとしたドロシー様の口を騎士が塞いだ。
(邪魔してもらっちゃ困るわ)
騎士に押さえつけられてもなおもがく彼女を一瞥し、私はある一人の証人を呼び寄せた。
「全て言えるかしら?」
私が呼んだ証人とは、公爵家で長く働いている侍女だった。
彼女は全てを知っている。
だからこそ今回この断罪の場に招いたのだ。
「はい、ドロシー様は……」
侍女は言いにくそうにしながらも、観念したかのようにゆっくりと口を開いた。
「――前公爵様と関係を持っていました」
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