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バレンタイン・キス⑦ *

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 グチュッ、プチュ、と涼さんの指が肉襞を確かめるように掻き回す。その不起律に動く指を奥へと誘うように襞が蠢き、入口はギュッと指を締め付ける。

「今、二本指が入ってますよ。ナカがオレの指を美味しいってしゃぶってますね」
「ん、はっ、ぃやぁっ」
「ナカもすっかりトロトロのふわふわになって。早く健一さんのナカで堪能したいです」

 ベッドヘッドに上半身を凭れさせ、相変わらず俺を対面座位にさせた涼さんは、うっとりとした目と声で感想を漏らす。
 俺も涼さんの首に腕を回して首筋に顔を押し付けてるせいか、陶然とした吐息が耳に触れる度にビクビクと体を震わせてしまう。

 浴室の熱と湿気で湯あたりを起こしてる間に、涼さんの手によって洗浄された俺は、横抱きにされて最初に見たベッドルームへと連れてこられた。
 涼さんの口から温くなった水を与えられながらも、増えた指で受け入れる為の準備をされるものだから、ぼんやりとした頭の状態が続いている。

「ああ、そうだ。ここも可愛がらないと」
「ひぃ、うっ」

 そう言った涼さんがパクリと右の乳首に吸い付き、左の乳首を指で挟み込む。
 突然与えられた敏感な場所の刺激に、俺は首筋に埋めていた顔を跳ね上げ、喉を反らした。
 吸引しながら、舌で先端の粒を舐めたり擽ったり捏ねたり、綺麗な歯列で甘噛みしたり。
 指で挟んで、こよりのように捻ったり指の腹で先端を擦ったり、押しつぶして揉んだり。
 その間もナカを侵略する指の本数は二本から三本へと増え、ローションと腸液が混じったねばつく音が室内に広がっていく。

 あぁ、こんなに同時に刺激されて、俺のモノがすっかり勃っている。先端からトロトロと先走りが涙を流し、涼さんの見事な腹筋のくぼみに押し付けて汚す。

「気持ちいいんですね。さっきから腰が動いて、オレのお腹で自慰してますもんね」
「んっ、きもち、ぃ。でも、たりないっ、もっと……んっ、おなかのおく、うずいて、つらいっ」
「……はっ、健一さん、オレを煽ってるんですか?」

 そんなつもりはない、と反論したかったけど刺激で蕩けた頭では言葉が上手く出ず、ただ首を振って否定するしかできない。

「首ぷるぷる振ってる健一さん可愛い。あー、でもこのまま挿れちゃうと、健一さん久々だろうから負担ありますよねぇ」

 困ったなぁ、と言いながらも、俺の屹立に触れる涼さんの怒張は赤黒くそそり立ち、茎を這う血管がドクドクと脈打っている。
 涼さんが同性である俺に発情して、勃起してくれるのが嬉しくて、感動を示すように彼の首をぎゅっと抱きしめた。

「りょーさん、だいすき」

 幽かな声での告白に、涼さんのソレはビクンと歓喜して震える。

「あー、もうっ。健一さん、明日仕事だから、手加減しようと思ったのに!」

 涼さんはそう苛立つように声を放ち、俺の背中をベッドに押し付けた。料理人って結構鍛えてるんだな、と詮無きことが浮かぶ。

「抱き潰されても、文句言わないでくださいね」
「ひどくしても、いたくしてもいい。りょーさんがくれるもの、ぜんぶうれしい、から」
「オレを調子に乗らせたらダメですよ。もう、健一さん、どこまでオレを煽ったら気が済むんですか」

 怒ってるような困ってるような複雑な顔で涼さんが頭を掻きむしっている。
 普段は穏やかな彼の素なのだと。それを俺に見せてくれてるのだと、歓喜に胸が満ちていった。

 気がせいてるのか、乱暴な手つきで自身に避妊具を装着し、ベッドチェストに置いてあったローションをぶちまけている。そんなに掛けなくてもローション自体は避妊具にも塗布されてるのに。
 だけどもその行為が、俺の負担を軽くしようとする涼さんの心遣いなのも知っているから、俺は無言で彼の頬に手を添えて微笑んだ。

 今の緑川には申し訳ないけど、初めて緑川とした時は苦痛しかなかった。
 適当にほぐされた孔を剛直でこじ開けられ、痛いと言っても聞き入れてくれず、ただひたすらにナカを擦られ続けただけだった。今にして思えば、直感的に俺がネコだと気づいて、オナホがわりに抱いたのだろうと感じる。
 その後は多少愛撫やこちらの感度を高める努力はしたようだけど、結局は自身の性欲の解消の為に使われたのだと、こうして涼さんに抱かれて知ることができた。
 まあ、友人関係をやめるつもりはないが、雪乃君が手ひどく扱われてない事を祈るばかりだ。

「健一さん?」

 眉をひそめ怪訝そうに問う涼さん。俺が黙ったまま沈黙したのを不安だと感じたのだろうか。

「ううん。りょーさんが、きもちくしてくれるの、うれしいなって」

 率直な気持ちを蕩かされて舌足らずな口で伝える。

 こんなに思考すらトロトロになっちゃう位、気持ちいいセックスがあるなんて知らなかった。緑川に玩具のように扱われてそれでも依存して、結局捨てられた俺は多分、次に誰かに抱かれる事が怖かったのかもしれない。
 だからこそ人と距離をとったり、自分のほうへと戻らないように緑川と雪乃君の恋を応援したのだと、今更ながらに気づかされた。
 そんな頑なになった俺の心に自然と入り込み、温かいご飯と優しさで包んだ涼さんが癒してくれた。

「いぞんしたらどうしよ……りょーさんこまるよね?」
「まだまだ足りない位ですから。もっと沢山オレに依存して? 何も考えられない程にオレに愛されて、オレから離れようなんて気持ちもおきない位に執着してくれたら、オレも幸せですよ」
「じゃあ、りょーさんもおれにいぞんしていいよ? おれもきっとしあわせになれる」

 オレをこれ以上喜ばさないで、と顔や口にキスの雨を贈る涼さんの腰へと足をすりと絡ませる。心は満たされるばかりだけど、体は埋められないもどかしさに疼くばかりだ。

 甘いキスも魅力的だけど、ふたりでもっと気持ちよくなりたい。

「りょーさん、きて。おれの、なかに」

 グッと足で涼さんの腰を引き寄せ、臀部に先端を押し付けながら懇願する。涼さんは俺の両足を開いて、ヒクつく蕾へと避妊具に包まれローションで濡れた先端を。ひたりとあてがった。

「結構ほぐしたから大丈夫だと思いますけど、もしキツかったり痛くなったら絶対言ってくださいね?」
「うん……はやくぅ」

 上からチッという舌打ちが聞こえたけど、俺はただ満たされたいばかりで、どうでもいいと頭から追いやった。

 ツプリと皺が涼さんのモノに広げられていく感覚。指とは違う質量に、俺は自然と息を吐いて無自覚に力が入るのを逃す。

 ああ、今、涼さんのアレが俺のナカを少しずつ挿っていくのが分かる。
 チラリと涼さんを窺うと、眉間に深い皺を刻んで苦悶した顔で額に汗を滲ませている。
 やはり排泄孔に挿れるのに抵抗でもあるのだろうか。思わず口を開きかけると「うっ」と息を詰まらせた音が降ってくる。そして、まだ亀頭も入っていないナカで熱いものが精液だまりを膨らませてるのを感じていた。

 え……もしかしてイっちゃった?
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