はぴまり~薄幸オメガは溺愛アルファのお嫁さん

藍沢真啓/庚あき

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12:成果*

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「桔梗君、後ろ解さないといけないので、壁に手をついて背中をこちらに向けてくれますか?」

 密着していた体を離しながら伝えると、桔梗はふるふると首を横に振って玲司にしがみついてくる。

「桔梗君?」
「れーじさんの、顔がみえないの……や」
「……」

 顔を胸に押し付けて駄々をこねる番が可愛すぎて辛い。

 最愛の番の小さな我が儘に崩れそうになる顔を、何とか微笑程度に押しとどめ、玲司は「ですが」と桔梗の耳に唇を寄せる。

「体勢が辛くないですか? もう、立ってるのもキツイのでは」
「へーき。……このままで、ほぐして? れいじさん」

 緩やかに首を揺らし、こちらを見上げる桔梗は、快感で濡れた大きな瞳でじっと見つめ、唾液と吐息と湯気で濡れた唇はいつもよりも赤く、扇情的だ。
 これで発情ヒートしてないというのだから、番になってからの桔梗の色気量が半端ない。
 本気で軟禁したほうがいいのかもしれない、と物騒なことを考えつつも、玲司は器用にボトルの蓋を取り、抱き締めたままの掌にトプリと落とす。
 ふわりと薔薇とイランイランの香りが湯気に溶けて広がる。
 甘くロマンチックな匂いに、桔梗の小ぶりな鼻がクンと動き、いい匂いですねとぼんやりと呟く。玲司には多少匂いがキツイと感じたが、甘く蕩ける番の感触はいいようだ。

「本当に辛かったら言ってくださいね」
「は……い」

 桔梗の背中を壁に預けるようにして、玲司はまろい桔梗の臀部を大腿から辿るようにローションを塗り広げる。敏感になっているのか、ぬめりが肌を滑る度にあえかな吐息が桔梗から零れた。ビクビクと痙攣しているのが玲司の掌にもはっきりと伝わる。

「んっ……あ、あぁん……」
「きもちいいですか?」
「う、ん……、れ、じさんの、たいおんきもちぃ」

 うっとりと見上げてくる桔梗の腰をぐっと寄せ、尻肉のあわいに沿うように指を滑らせていくと、秘めた蕾が掠めるように触れるだけでヒクリと震える。
 固く閉じた蕾を開くように、ローションの粘りを借りて円を描くように撫でていく。油断すると切なげにひくつく中心へ指が持って行かれそうになるも、少しでも桔梗に怪我がないよう慎重に絞りを解していった。
 ぬちゃぬちゃと粘った水音がシャワーで温まった浴室内に広がる。その合間に桔梗の扇情的な吐息が混じり、玲司の怒張は痛いほどに張り詰め、今にも爆発しそうだ。
 ……プライドが優先して、必死で耐えているが。

「あっ、あ、れーじさ……、もうほしいよぉ……」

 無自覚で可憐な蕾が十分にほぐれたのを知ると、まずは一本だけ侵入させる。ツプリと抵抗もなく入った腸壁は、異物の侵入を喜ぶように蠢き、玲司の指を捕らえて離さない。
 内蔵の熱さに指が溶けそうになる。これだけで軽く眩暈がするのは、桔梗の熱なのか浴室の熱さか。
 玲司は唇を噛み締め耐えながら桔梗の蜜道を広げていく。こんな細い体の隘路に、無理やり捻りこんでしまわないよう、粘膜を玲司の逸物を受け入れる程度まで引き伸ばす。
 桔梗は物足りないのか自ら腰を動かし、快感を拾おうとしている。
 刺激が足りないと、蠕動する襞が奥へ奥へと誘導し、ある一点を指先が触れた途端。

「はっ、あ、あぁ、あっ、っん!」

 ビクビクと腕の中の体が跳ね、腹に触れていた桔梗の花芯の先端からビュクと白い蜜が弾ける。温くねっとりと胸まで飛んだ白濁が合わさった肌の隙間をトロリと流れていく。
 独特な匂いが薔薇の香りをかき消す。だが、玲司は桔梗の精の匂いにクラリと脳が揺れた。

「イッちゃいましたね」

 埋めた指を二本に増やし、バラバラに動かしながら、荒い息で玲司に持たれる桔梗の頭頂へとキスを落とす。全身から溢れるフェロモンは発情期ヒートに比べると薄いものの、玲司の欲情を煽るには十分の匂いと色気だ。

 しかし、ぐったりと自立できない桔梗をこのままにしておけず、半分以上溜まったバスタブに目を向けると、「体も冷えてますし、お風呂に入りましょうか」と囁く。桔梗は言葉の意味を理解できているか怪しいが、彼はコクリと頷いた。
 いとけない様子に、玲司の心境は複雑だ。
 この不安定な姿は自分が引き出したものか、凛の物によるものか。
 それでも番の愛らしい姿に、玲司の我慢も限界間近だった。

 先に湯船に入り、桔梗の腰を支えながら対面に座らせる。ふたり分の容積が増したバスタブからは温かい湯がザブと溢れ、精緻な模様のタイルをしとどに濡らしていった。

 桔梗はまだイった余韻があるせいなのか、満たされなかったせいなのか、玲司の首筋に頭を預けたまま甘い吐息を漏らし続けている。

「桔梗君、大丈夫ですか?」
「……ぁい」

 どうやら燻ってる熱のせいで、舌足らずな言葉しかでないようだ。
 内心で「恐るべし凛のローション」と賞賛するも、正直玲司も我慢の限界まできていた。
 玲司は桔梗の腰を支えながら、怒張した先端を柔らかくなった蕾へと押し当てる。

「しんどくなったら、絶対に言うんですよ?」
「ひゃ、い」

 ゆっくりと先端で蕾をこじ開け、傘の部分を沈めていく。いくら柔らかく受け入れ体勢が整ったとはいえ、普段は排泄がメインのそこは、にゅぷんと挿った雁首をぎゅっと締めつける。

「ん……あっ」
「……っ」

 まだ先の部分しか挿入していないのに、強烈な締めつけで一瞬持って行かれそうになり、思わず息を詰める。
 本人は自覚してないだろうし、元々劣等感があるせいで否定するだろうが、桔梗のそこは紛れもなく名器と呼ばれる最高の褥だった。

 腰を揺らめかせると、ザブ、と湯が踊り溢れていく。その波さえも桔梗に刺激を与え、絶え間なく啼き声を上げていた。

 ことさらゆるりと腰を進め、奥へ奥へと雄茎が熱く柔らかでありながら淫らな肉襞が、時折ぎゅっと玲司のものを弄びながら絡まってくる。
 ぬめる襞は玲司の怒張で浮かんだ血管を舐め、愛撫してくるせいで、最奥に辿りつくまでに、何度射精しそうになったことか。
 普段でさえもこうして我慢をしいられることがあるけども、今日はローションの媚薬のせいか、体位のせいか翻弄され続けていた。

「ナカ、すごくうねって、いやらしいですよ」
「っ、やぁ……んっ、いわ、ない……で」
「ですが、物足りないんじゃ、ないですか」

 玲司は少しでも優位に立とうと、桔梗の腰を両手で挟み、自らへと引き寄せ、先端を桔梗の一番感じるしこりへ擦りつける。

「あっ! あぁんっ、そ、そこ、やぁっ!」

 トロリと自身の蜜とローションで滑りの良くなった鈴口でグリグリと桔梗の前立腺をつつく。柔くも存在感のある小粒な実が、自らしているとはいえ、蕩けそうな快感をもたらし、ふたりして熱い吐息を吐く。もしかしたら、さっき桔梗の内側に塗りつけたローションの効果が玲司にも出たのかもしれないが、あふれそうになる射精感に桔梗の中の雄茎がぶわりと膨張した。

 玲司は眼前でぷくりと主張する紅色の小粒な 実を唇で挟み、舌先で幾度も刷き、細腰を密着させ、可憐な花芯を押し潰しなが、下からガツガツと突き上げる。

 もう、そこからは無我夢中で番の体の隅々まで貪った。

「あっ! あ、あ、あっ、あ、あぁ! も、くるし……あんっ」
「分かりますか? 桔梗君のナカ、搾り取るようにうねって……くっ」

 胎内を掘削するように最奥まで何度も突き上げられ、何度も吐精され、挙げ句の果てに結腸の輪にずっぽりと嵌ったまま腰を揺らめかされると、桔梗の薄い腹部には玲司の屈強な肉茎がぽっこりと形を浮かび上がらせる。
 そこは桔梗にとっても性感帯の一部であり、玲司にグポグポと擦られる度に、番の熱杭を精嚢から絞るように、淫らに蠢いて射精へと誘導する。

 互いに朦朧としているのに、発情ヒート・ラットとは違い、朧げながらも意識は残っていたのだ。
 それでもふたりは淫欲の熱に浮かされ、求め合い続ける。

「桔梗くんっ、も、出……あぁっ!」
「あ、あっ、また、イっちゃ……うぁっ!」

 バスタブの中の湯は二人の行為で殆どが床へと流れ、残った湯にも二人の白濁ですっかり汚れてしまっていた。そしてそれ以上の玲司の子種が、桔梗の腹に注がれ、ぷっくりと緩やかに膨らんでいたのだった。

 媚薬の効果が完全に薄れたのは、浴室の窓から見える空がうっすらと白みかけた夜明け。
 我に返った玲司は、精で膨れた腹で気絶をしており、慌ててナカから掻き出した後、寝室のベッドに寝かせ、口移しで避妊薬を桔梗へと飲ませた。
 きっと今日はまともに一人で歩けないに違いない。
 
 そして、散々たる浴室をひとり掃除をしながら、もう二度と凛の実験には付き合わないし、ご飯も作らないと、固く心に刻み込んだのだった。
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