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吸血鬼との邂逅(テオフィールside)

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「ほんと何度来ても薄気味悪いところだな」

 あれからたったの3日で準備を終えた俺たちは"魔の森"に来ていた。

「確かに、森の真ん中に光が射していますね。団長、総員準備できたようですよ」
「そうか。魔道具を起動しろ。戦闘は極力回避。速度重視でいく」
「聞きましたね。行きますよ」

 俺とヒューを先頭に第一騎士団の精鋭30人は森へ入っていった。

          ※

「団長、ここから先100メートルの地点に小屋があります。誰かが生活しているようです」
「わかった。お前は下がって休め」
「はっ」

 森へ入ってからすでに6時間。戦闘はたったの3回におさえ、俺たちは問題になっている森の中心地にたどり着いた。この場所に死者を出さずたどり着いたのは恐らく人間のなかではじめてだろう。

「モンスター侵入防止の結界が張ってあるようですね」
「あぁ。かなり高度な魔法の使い手がいるようだ。小屋というからには数はそんなにいないだろう」
「えぇ、私もそう思います」

 小屋とは……。もしや魔王じゃないのか?さすがに小屋は魔王の住む場所じゃないだろう。

「俺が小屋に入ろう。お前たちは俺の合図があるまで結界の近くで待機していろ」
「了解しました」

 にしても、畑に小屋とは"魔の森"にいることを忘れそうな光景だな。誰もこの小屋にいないことを願おう。ドアをノックする。

「はい。どちら様でしょうか。」

 そう言って出てきたのはロングスカートのメイド服を着た金髪の女。かなり整った顔立ちをしている。ただ、瞳の色は深紅ワインレッドだった。

吸血鬼ヴァンパイアか!」

 特S級の魔族"吸血鬼ヴァンパイア"。爵位クラスの低い個体でも中都市を壊滅させられる危険度の高いモンスターだ。俺は獲物の"破壊の大剣ディストラクション・ソード"を吸血鬼に打ち下ろした。
 当たったかと思った、俺の打ち下ろした攻撃は何かに阻まれた。なんだ?結界でも張ってるのか?俺が疑問に感じた直後、女が蹴りを放ってきた。剣を盾にして後ろへ下がる。

「団長!加勢しますか?」
「いや、いい。ヒューはともかく他は足手まといになる。」

 俺とヒューがそんな会話をしていると

「貴方たちはユエン皇国の騎士団ですね。こんな場所にどんなご用で?」
「ここの調査に来てな。この場所に新しく魔王が生まれたんじゃないかって問題になったもんで」
「そうですか。しかし、お引き取りを。魔王については何も私は知りませんが、我が主はこの場所に永住をお望みです。人間の脅威にはならないでしょう」

 ずいぶんと綺麗な言葉遣いだな。魔族ってもんはもっと野蛮かと思っていた。

「悪いな。お前さんが吸血鬼ってだけで危険だ。主さんってのと一緒に討伐させてもらう」

 再び剣を打ち下ろすが短剣で弾かれる。こりゃ相当高い爵位クラスの個体だな。俺がいくら打ち込んでも弾かれる。
 ありがたいのは後ろの奴らに手を出さないことだな。さすがに他の奴らを庇いながらはきつい。

「仕方ありません。排除します」

 そう言って今までよりもさらに過激に攻撃を重ねる吸血鬼。めんどくさい。ここら一帯魔法で吹き飛ばすか。俺がそんなことを本気で考え始めたとき……

「ヴィント様!ユエン皇国の騎士団です!」

 女が叫んだ。小屋からまた誰かが出てきたらしい。くそ、そっちをみる余裕がねぇ。ヒューだけで他の奴らを守れるか?

「ヴィント様!この者達が攻撃してきたうえに畑を踏み荒らしました!いかがなさいますか?」

 てことは、この吸血鬼の主ってやつか。弱いといいんだが……

「"狼の鎖ウルフケッテ"」
「刈りなさい」

 そう言って聞こえてきたのは幼さの残る少女の声。同時に、鎖がなる音と部下の悲鳴が聞こえてきた。くそっ!

「おい、貴様はどうする。僕の畑を踏み荒らしやがって。死にたい?」

 部下の相手がもう終わったらしい。ヒューもやられたのだろうか。くっ、こんなことになるんだったら先に転移石で戻らせとくべきだった……

「……はぅ」

 ……はぅ?
 またずいぶんと可愛らしい声だが、なんかあったのか?
 俺と女が再び剣を打ち合っていると…

「ミリアンヌ下がって!」

 とまた少女の声がした。またあの鎖の音がなる。女が下がり、俺がヤバイと思ったその時には体に衝撃を感じて吹っ飛んでいた。

 まずい、こいつら強すぎる。部下だけは生かして帰してほしいんだが……。そう言葉にする前に俺の意識は落ちていった。
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