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24話 北欧ハーフの貴公子
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あれから、綾野先輩が小虎を手伝いしたいって迎えに来ていた。役員補佐の垣根を越えて二人は先輩後輩、もしくは友達のような親しさでちょっぴりジェラシーも感じてはいても、小虎は良い人の補佐になって良かったって思ってる。
オレも一緒にって事で3人で最上階にある役職専用の5階フロアに来て、小虎とは本当に向かい(ドアは左右逆のようだけど)の部屋で、気楽に「またね」と言ってお互いの部屋に足を向けた。
『小椋』という名前のプレートのある部屋。
「はぁ……」
2階にあった部屋からは様子も雰囲気も違う役職専用のフロア。めちゃくちゃ静寂なのでため息交じりに息を呑み込む音さえも響きそう。
遠慮気味にノックをしたけど数秒待っても何の音さたもない。ふとインタ―ホンがあるのに気づいて押した。
やや暫くして、カチャっとロックを外す音がして明るい木目調のドアが開いた。
「遠野です、失礼しま……!?」
「フフ、ようこそ」
どう見ても、あの “顔” じゃない人が出てきた。
「あ、の……オレは……」
「生徒会長の新補佐の子だね、聞いてるよ。どうぞ」
「はぁ…えっと…お邪魔、します?」
プレートには確かに会長の名前だったけど、疑問形で聞きそうになる。
見下ろされてるので身長はオレより少し高くて、中性的でハーフのようなキレイな顔のイケメンの人が何故かオレを迎え入れてくれてるんだけど、小椋会長はどうしたんだろう。
もしかして苦手だからって言ったので他の人に任せたのかな……いや……意味ないしそういうことをする人じゃない気がする、あの小椋会長って。
「朔和、補佐くんだけどこっちの部屋に案内していいの?」
小椋会長は何をしているんだと思ったら、玄関から数歩……広いリビングが広がっていて左の窓側の机に座って何かをしているのが背後で見えた。
「ああ。ライの勝手で案内してくれ」
「ってことだから、じゃ右側をどうぞってことで」
“ライ”と呼ばれた人は、右の壁側にドアがあってカチャっとドアノブを開けると、オレを促した。
開いたドアからは、ベッドとスモールデスク、クローゼットが見えた。
オレは小椋会長に挨拶のタイミングを逃したので、個室に入る前に声を掛けて「よろしくお願いします」と短いけど挨拶をした。
小椋会長は顔だけをオレの方に振り向くと、「ああ。お互いプライベートは干渉しない様にしような。あとは……まぁおいおい伝えるとするとして、俺は割と部屋に仕事を持ってくるのでその時は呼ぶから」
「あ、はい……」
そう言うと、小椋会長は仕事をしていたのか前を向いてオレには一切、声を掛けて来なかった。
なんだか緊張の糸がスルっと解けたけど……なんかもやもやってする。
小椋会長が問答無用で同室にさせたのにな……そっけないって言うのか何か道理に合わなくない?
それに、この人は誰なんだろう……。
もしかして……オレの性癖と一緒にするのは失礼かと思うけど、小椋会長の恋人……パートナーとか?
だ、だったとしても、別に、まったく別に小椋会長の個人的な事なんて気にはならないけど……!
「何か言いそうな顔してるけど……そう言えば君は外部生だってね。それじゃ、おれの事まだ知らなかったんだ」
彼の言葉に首を傾けたけど、きっと名前を言われても何処の誰かは知らないだろうな。
「おれはライ・リングダール。これでも北欧ハーフね。役職は……んー後でわかると思うので。実は納得してないんだけど、生徒会長に一歩届かなくてね」
「生徒会長候補、だったんですか……」
「そう。朔和とはライバルだったんだ、まぁ今でもだよ? ……仲が良いのは秘密だから」
シッと人差し指で唇に当てる。まるで子供に言い聞かせるように。
「大丈夫ですよ、オレはプライベートは厳守しますから。あ、オレは遠野向糸と言います……聞いていると思いますが」
「朔和の説明とちょっと違って遠野くんは……平凡な容姿ではあるけど何処となく憂いがあって艶やかさも備えてるね。この学園は男子でも気を付けたらいいよ。特に肌なんて気楽に見せない様に!」
「!!」
そんな意味深な事を言われ、「朔和の補佐なんて人使いが荒くて大変かもしれないけど、頑張って。じゃあ、おれはこれで失礼するよ」
「あ、あの、ありがとうございますっ……!」
「うん。実はおれが遠野くんを見たかったんだ。君ならきっと……朔和の頑なな心を和ませてくれるかなって」
よろしくね。なんてことまで言われてーーーそしてその貴公子然とした凛とした笑顔にドキッとする前に、ちょっと頭を捻ったらなんでオレが小椋会長の心を和ませなくちゃいけないのだと、ふと思った。
オレも一緒にって事で3人で最上階にある役職専用の5階フロアに来て、小虎とは本当に向かい(ドアは左右逆のようだけど)の部屋で、気楽に「またね」と言ってお互いの部屋に足を向けた。
『小椋』という名前のプレートのある部屋。
「はぁ……」
2階にあった部屋からは様子も雰囲気も違う役職専用のフロア。めちゃくちゃ静寂なのでため息交じりに息を呑み込む音さえも響きそう。
遠慮気味にノックをしたけど数秒待っても何の音さたもない。ふとインタ―ホンがあるのに気づいて押した。
やや暫くして、カチャっとロックを外す音がして明るい木目調のドアが開いた。
「遠野です、失礼しま……!?」
「フフ、ようこそ」
どう見ても、あの “顔” じゃない人が出てきた。
「あ、の……オレは……」
「生徒会長の新補佐の子だね、聞いてるよ。どうぞ」
「はぁ…えっと…お邪魔、します?」
プレートには確かに会長の名前だったけど、疑問形で聞きそうになる。
見下ろされてるので身長はオレより少し高くて、中性的でハーフのようなキレイな顔のイケメンの人が何故かオレを迎え入れてくれてるんだけど、小椋会長はどうしたんだろう。
もしかして苦手だからって言ったので他の人に任せたのかな……いや……意味ないしそういうことをする人じゃない気がする、あの小椋会長って。
「朔和、補佐くんだけどこっちの部屋に案内していいの?」
小椋会長は何をしているんだと思ったら、玄関から数歩……広いリビングが広がっていて左の窓側の机に座って何かをしているのが背後で見えた。
「ああ。ライの勝手で案内してくれ」
「ってことだから、じゃ右側をどうぞってことで」
“ライ”と呼ばれた人は、右の壁側にドアがあってカチャっとドアノブを開けると、オレを促した。
開いたドアからは、ベッドとスモールデスク、クローゼットが見えた。
オレは小椋会長に挨拶のタイミングを逃したので、個室に入る前に声を掛けて「よろしくお願いします」と短いけど挨拶をした。
小椋会長は顔だけをオレの方に振り向くと、「ああ。お互いプライベートは干渉しない様にしような。あとは……まぁおいおい伝えるとするとして、俺は割と部屋に仕事を持ってくるのでその時は呼ぶから」
「あ、はい……」
そう言うと、小椋会長は仕事をしていたのか前を向いてオレには一切、声を掛けて来なかった。
なんだか緊張の糸がスルっと解けたけど……なんかもやもやってする。
小椋会長が問答無用で同室にさせたのにな……そっけないって言うのか何か道理に合わなくない?
それに、この人は誰なんだろう……。
もしかして……オレの性癖と一緒にするのは失礼かと思うけど、小椋会長の恋人……パートナーとか?
だ、だったとしても、別に、まったく別に小椋会長の個人的な事なんて気にはならないけど……!
「何か言いそうな顔してるけど……そう言えば君は外部生だってね。それじゃ、おれの事まだ知らなかったんだ」
彼の言葉に首を傾けたけど、きっと名前を言われても何処の誰かは知らないだろうな。
「おれはライ・リングダール。これでも北欧ハーフね。役職は……んー後でわかると思うので。実は納得してないんだけど、生徒会長に一歩届かなくてね」
「生徒会長候補、だったんですか……」
「そう。朔和とはライバルだったんだ、まぁ今でもだよ? ……仲が良いのは秘密だから」
シッと人差し指で唇に当てる。まるで子供に言い聞かせるように。
「大丈夫ですよ、オレはプライベートは厳守しますから。あ、オレは遠野向糸と言います……聞いていると思いますが」
「朔和の説明とちょっと違って遠野くんは……平凡な容姿ではあるけど何処となく憂いがあって艶やかさも備えてるね。この学園は男子でも気を付けたらいいよ。特に肌なんて気楽に見せない様に!」
「!!」
そんな意味深な事を言われ、「朔和の補佐なんて人使いが荒くて大変かもしれないけど、頑張って。じゃあ、おれはこれで失礼するよ」
「あ、あの、ありがとうございますっ……!」
「うん。実はおれが遠野くんを見たかったんだ。君ならきっと……朔和の頑なな心を和ませてくれるかなって」
よろしくね。なんてことまで言われてーーーそしてその貴公子然とした凛とした笑顔にドキッとする前に、ちょっと頭を捻ったらなんでオレが小椋会長の心を和ませなくちゃいけないのだと、ふと思った。
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