王道☆伝播事情

ちゅっ太郎

文字の大きさ
上 下
1 / 15

プロローグ

しおりを挟む
 これは一年前の春休み、全寮制の高校に入学が決まった時に祖父母が住んでいる中田家本家に報告がてら行ったときの事だった。

 一歳下の従兄弟である誉(ほまれ)というやつが本家に居て久しぶりに会った。なんていうか…可愛い顔をしてると思うのに誰とも視線も合わさなくて壁の隅で丸まっていつも黙して読書をしてる。数年ぶりに会ってもやっぱり変わってなくて近寄るなオーラのためか苦手要素があるので遊ぶような間柄にならない。

 おれは家から持って来た“大切なあの娘”を取り出すためにリュックに手を突っ込もうとしたところ「ことほぐ」と、誉から突然名前を呼ばれたので慌てて手を引っ込めた。

 おれの名前は“寿”と書いて『ことほぐ』と読む。おめでたい名前だけどまったくめでたいと思ったことはない。

「な、なに?」

 唐突に呼ばれたおれの名前に怯みながら同時に声が裏返ってしまった。
 

「全寮制の学園に入学することになったんだってな」

「え?あ、うん」

「男子校、なんだってな」

「そうだよー……」

 リュックの肩掛けを弄りまわしていたおれの方に誉がゆっくり四つん這いになってやってきたのでおれは後退した。

「そのリュックの中身にはお気に入りの二次元美少女アイドル“ラビィアンヌ”のフィギュアが入居しているのだろう? 寿ことほぐが二次元アイドル好きなことはリサーチ済なのだ」

「!!!!!」

ゴンッ「痛っ」

 誉がぐいぐいと近づいてきて、おれは後退し過ぎてテーブルの角に肩をぶつけた。

「そんなに驚かなくてもいいじゃないか。いろいろ隠しているようだがジャージの裾から見えるピンク色のシャツに(c)ラジカルアカディミアのロゴが見えるし、靴下がうさぎ柄、リュックには数枚のうさぎラバーストラップ、あとーー」

「わ、っわかったから!なに?おれがらびぃたん好きだからって脅すの? 二次元のアイドルだって、めっちゃ可愛いんだぞっ!?」

 はぁぁあ!言い切ってみた!学校や友人には隠している二次元美少女アイドルオタクのおれ。


「なんならラビィアンヌの檄レアフィギュアを差し出してもいいぞ」

「今なんて?!らびぃたんの、げ、げげ檄レア七色天使バージョンのことですかっ!!」

「それを、プレゼントするって言ってるのだ」

「嘘つくなぁぁぁ、いくらすると思ってんだよ!宝くじ3等くらいは当たらないと買えない高級品なんだぞ!?」

「自慢ではあるが僕には巨額な貯金があるからな、ただし僕の条件…いや、協力を得てくれるならってことで、どう?むふふん」

 く……っ!

 眉唾な話だけど、話しだけは聞いて見ても良いかな……天使らぶぃたんのフィギュアがおれの家にお迎えできるそんな奇跡を妄想したってーー。

「えっと、それで条件はなに?」

「協力と言ってるのだ!…コホン。王道学園でのBLを随時偵察報告して欲しいのだ!!ハァハァ」




 ……――は?




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

処理中です...