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プロローグ
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これは一年前の春休み、全寮制の高校に入学が決まった時に祖父母が住んでいる中田家本家に報告がてら行ったときの事だった。
一歳下の従兄弟である誉(ほまれ)というやつが本家に居て久しぶりに会った。なんていうか…可愛い顔をしてると思うのに誰とも視線も合わさなくて壁の隅で丸まっていつも黙して読書をしてる。数年ぶりに会ってもやっぱり変わってなくて近寄るなオーラのためか苦手要素があるので遊ぶような間柄にならない。
おれは家から持って来た“大切なあの娘”を取り出すためにリュックに手を突っ込もうとしたところ「ことほぐ」と、誉から突然名前を呼ばれたので慌てて手を引っ込めた。
おれの名前は“寿”と書いて『ことほぐ』と読む。おめでたい名前だけどまったくめでたいと思ったことはない。
「な、なに?」
唐突に呼ばれたおれの名前に怯みながら同時に声が裏返ってしまった。
「全寮制の学園に入学することになったんだってな」
「え?あ、うん」
「男子校、なんだってな」
「そうだよー……」
リュックの肩掛けを弄りまわしていたおれの方に誉がゆっくり四つん這いになってやってきたのでおれは後退した。
「そのリュックの中身にはお気に入りの二次元美少女アイドル“ラビィアンヌ”のフィギュアが入居しているのだろう? 寿が二次元アイドル好きなことはリサーチ済なのだ」
「!!!!!」
ゴンッ「痛っ」
誉がぐいぐいと近づいてきて、おれは後退し過ぎてテーブルの角に肩をぶつけた。
「そんなに驚かなくてもいいじゃないか。いろいろ隠しているようだがジャージの裾から見えるピンク色のシャツに(c)ラジカルアカディミアのロゴが見えるし、靴下がうさぎ柄、リュックには数枚のうさぎラバーストラップ、あとーー」
「わ、っわかったから!なに?おれがらびぃたん好きだからって脅すの? 二次元のアイドルだって、めっちゃ可愛いんだぞっ!?」
はぁぁあ!言い切ってみた!学校や友人には隠している二次元美少女アイドルオタクのおれ。
「なんならラビィアンヌの檄レアフィギュアを差し出してもいいぞ」
「今なんて?!らびぃたんの、げ、げげ檄レア七色天使バージョンのことですかっ!!」
「それを、プレゼントするって言ってるのだ」
「嘘つくなぁぁぁ、いくらすると思ってんだよ!宝くじ3等くらいは当たらないと買えない高級品なんだぞ!?」
「自慢ではあるが僕には巨額な貯金があるからな、ただし僕の条件…いや、協力を得てくれるならってことで、どう?むふふん」
く……っ!
眉唾な話だけど、話しだけは聞いて見ても良いかな……天使らぶぃたんのフィギュアがおれの家にお迎えできるそんな奇跡を妄想したってーー。
「えっと、それで条件はなに?」
「協力と言ってるのだ!…コホン。王道学園でのBLを随時偵察報告して欲しいのだ!!ハァハァ」
……――は?
一歳下の従兄弟である誉(ほまれ)というやつが本家に居て久しぶりに会った。なんていうか…可愛い顔をしてると思うのに誰とも視線も合わさなくて壁の隅で丸まっていつも黙して読書をしてる。数年ぶりに会ってもやっぱり変わってなくて近寄るなオーラのためか苦手要素があるので遊ぶような間柄にならない。
おれは家から持って来た“大切なあの娘”を取り出すためにリュックに手を突っ込もうとしたところ「ことほぐ」と、誉から突然名前を呼ばれたので慌てて手を引っ込めた。
おれの名前は“寿”と書いて『ことほぐ』と読む。おめでたい名前だけどまったくめでたいと思ったことはない。
「な、なに?」
唐突に呼ばれたおれの名前に怯みながら同時に声が裏返ってしまった。
「全寮制の学園に入学することになったんだってな」
「え?あ、うん」
「男子校、なんだってな」
「そうだよー……」
リュックの肩掛けを弄りまわしていたおれの方に誉がゆっくり四つん這いになってやってきたのでおれは後退した。
「そのリュックの中身にはお気に入りの二次元美少女アイドル“ラビィアンヌ”のフィギュアが入居しているのだろう? 寿が二次元アイドル好きなことはリサーチ済なのだ」
「!!!!!」
ゴンッ「痛っ」
誉がぐいぐいと近づいてきて、おれは後退し過ぎてテーブルの角に肩をぶつけた。
「そんなに驚かなくてもいいじゃないか。いろいろ隠しているようだがジャージの裾から見えるピンク色のシャツに(c)ラジカルアカディミアのロゴが見えるし、靴下がうさぎ柄、リュックには数枚のうさぎラバーストラップ、あとーー」
「わ、っわかったから!なに?おれがらびぃたん好きだからって脅すの? 二次元のアイドルだって、めっちゃ可愛いんだぞっ!?」
はぁぁあ!言い切ってみた!学校や友人には隠している二次元美少女アイドルオタクのおれ。
「なんならラビィアンヌの檄レアフィギュアを差し出してもいいぞ」
「今なんて?!らびぃたんの、げ、げげ檄レア七色天使バージョンのことですかっ!!」
「それを、プレゼントするって言ってるのだ」
「嘘つくなぁぁぁ、いくらすると思ってんだよ!宝くじ3等くらいは当たらないと買えない高級品なんだぞ!?」
「自慢ではあるが僕には巨額な貯金があるからな、ただし僕の条件…いや、協力を得てくれるならってことで、どう?むふふん」
く……っ!
眉唾な話だけど、話しだけは聞いて見ても良いかな……天使らぶぃたんのフィギュアがおれの家にお迎えできるそんな奇跡を妄想したってーー。
「えっと、それで条件はなに?」
「協力と言ってるのだ!…コホン。王道学園でのBLを随時偵察報告して欲しいのだ!!ハァハァ」
……――は?
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