腐男子★恋愛事情

ちゅっ太郎

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58. ピコ単位の可愛さ

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「ふー、終わった。完璧!!」
「凄いよ!藤君天才!!」
「いつでもウィッグ付けれるようにベリーショートにした」
「うんうん。どう? 中田君、君すっごい変わったよ!?」

「……」

「もうさ、数百万年もの地層に埋もれていた原石のようだよ。マジ驚いたー」

「……」

「おーい。戻っておいでー?」

「……じゅる」

「口から涎でてんだけど……ところで黒木から取り上げていたけど何の本を読んでるんだ?」


「あっあっ 藤君は見ない方がいいよ。中田君はしょうがないなー。姉貴の禁断の本は刺激が強すぎたかな?  ハンカチで口元を拭いてやろう」

「っちょ、それオレのだけど!」

 なにやら騒がしいな……と、思ったら僕の口元を布で抑えて来たのは黒木だったので頭を振ったら、ふと頭が普段より軽くなった気がする!?

「……?」

 それに、視界が今まで感じていたのと違う。

「鏡あるよ、見て」

 黒木が手鏡を僕の前に差し出した時、映っていたのは信じられないくらいにデコと耳を出して、うなじも丸見えで黒髪の髪はくせ毛なのか毛先が跳ねていてまるでキュー〇ー人形のような子供が目を大きくしてソコにいた。

 ……待って、そんな子供はこの部屋には居なかったはずだ。もしや隠れていたとか……でも僕の知るところではこんな子供は学園にはいない。

「あ、あり得ないのが映ってる、キュー…人…ユーレイ……?」

「何言ってんの。中田君の素顔って結構な童顔なんだね、可愛い分類に入るよ!」

「違う、キュー〇なーユーレイだ!」

「中田君だって!」

「違う! 黒木は悪魔の使徒なのに霊感が無いのか?」

 もう一人、黒木の使徒の相棒に聞こうとしたら僕のBLレア本を震える肩で読み耽っていた。


・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・


   アレが僕だなんて!!

 まったく信じられなかった。でも鏡のキュー〇ーが唇を動かしたり変顔をしたり、鼻を摘まんだりどさくさに黒木が頬の皮を伸ばしたりして……確かに痛かったし、動きが僕そのものだった。

 一体全体、何てことをしてくれたんだ!!!


「これで女王の前に一歩出たよ。中田君!」

「僕は怒ってるんだ…けどっ」

「でね、ぎゃふんって言わせる作戦!始動だよ!!」

「聞いていいか!?こ、この破廉恥な薔薇の世界って実在するのか?!」

 誰も話を聞いてない……。




 ……アイツらのせいで一時限、サボってしまった。

 僕のような壁のような存在はいても居なくても騒ぐことなんてしないクラスだと思うけど、BLウォッチャーで時間も忘れてサボってしまったのとまったく意味合いは違うのが心が痛い。

 それで、黒木は2年生なので先輩ズラをしてか僕を教室まで送ると言って着いて来た。

 僕はというと、余りにも視界が明るし落ち着かないので袖でなるべく顔やデコを隠しながら歩いた。

 こうなったら後で何か考えなければならない。お面なんて無いので顔に紙でも貼ろうか……。

 一難はタカ先輩にどんな顔をして会えばいいんだ……こんなキュー〇ーユーレイ気味悪がる……きっと。

 一瞬にして毛が生える液体を通販で考えねばならない……!

 
「え、ウチのクラスに転校生?」

 教室に入ったら僕を転校生と呼ぶクラスメイトがいて、殆どの生徒が僕の方を一斉に振り向いた。


「!!!!!!!」


「じゃ、じゃあね~、中田君っ」

「あ、ちょ、ま……くろ」


 いや、いやだぁぁぁぁ

 こんな状況の僕を置いて、逃げないで~~~!!







 ……しょうがない。



 クラスメイトの視線を横に、なるべく平常心でひょこひょこと僕は自分の席に着く。

 どういう訳か、クラス内はめちゃくちゃ静かだ……気持ち悪いな…何がそうさせてるんだろう。

 そんなとき、視線に入ったのは葉山だった。

   頬骨がピンク色だ……新しい化粧法を編み出したのか……それより、いつも元気よくやって来る葉山が、珍しくたどたどしい足取りで近づいてきた。

「あの、あのさ、もしかして、君は、なかったクン?」

 いつもの高めの声のトーンは低くて、確認するような態度だった。

「うん僕だよ。変だろ……この通り、黒い悪魔の使いに髪を切られたんだ……」

 誤魔化すこともなく、そのまま伝えた。

「ふ、ふーん。べ、別に可愛いなんて思ってないよ。指の尖った先のピコ単位くらいだから勘違いしないでね」

「……ピコ???」

 あざと可愛い葉山が、なんだかチワワンの本領を発揮したかのように感じた。


※ピコ単位=ナノ単位の次くらい
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