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26. 放課後の生徒会室 (side:貴弥)
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――放課後。時間を少し遡って生徒会室。
前期生徒会長だった俺は、神谷彼方を後釜に推薦した事で彼の相談役と言う呈の良い雑用係をしている。売り言葉に買い言葉で体の弱いカナを表舞台に出してしまった。
自分で蒔いた種ではあるんだが早く自立してほしいものだよ、まったく。
そして最近、珍しく翔も生徒会室に顔を出してはカナと俺ーーいや生徒会役員の邪魔をしている。
「お前は風紀委員長だろう。戻って仕事せい、仕事!」
風紀副委員長に任せっきりでいつもサボってるのは知っている。
根っからのめんどくさがりの翔が風紀委員長なんて不安だったが、就任してすぐにこの有様だ。
俺は一つ二つ溜息を吐いて、それでもカナの不器用ながらも真面目に書類に取り組んでいる姿を眺めながら、差し入れされた草加せんべいを頬張っているんだけどな。硬いが旨いわ、これ。
二人は初等部からの幼馴染で今では酸いも甘いも共に知っている悪友兼友人だ。
しかしやって来たことは滅茶苦茶ばかりだったが、泣き虫の癖に負けず嫌いのカナによって(半分は報復だな)、生徒会長の俺、風紀委員長の翔、まさしく肩の荷が重い役職を嵌めさせられたわけだが、俺は十分に任を全うしたと思うぞ?
早く相談役を解任して一生徒に戻りたいのが本音だ。自由きかねぇし……。
「ほい。仕事ご苦労さん」
ドンッと机に置かれた水滴が飛んだ煎茶。翔が珍しく気を使うと思ったらこれだ。
「もっと静かに置けよ……零れてるだろ」
「俺はボランティアで茶汲みしてんの。文句言うな爺ぃ」
「爺じゃねぇよ!お前もう巣に戻れ」
「ああ?」
「うるさい!!二人とも、出て行っていいよ」
その場で一瞬にして気圧が低く感じた。そろそろカナも独り立ちが近そうだな。
俺が生徒会長になった頃、慣れない仕事に外で喫煙しに一服なんてザラだったが、今は息抜きの散歩で少し室外に出ようかと思う程度になっている。
アイツがどこかでおかしな事をやらかして巻き込まれないか見回るのもちょっとした日課になってるんだが……。
アイツの話を横で歩く翔に持っていくと――
「今日の昼、やっと紹介はしてもらったが食っただけだったな。特製牛ステーキ旨かったわ。ごっそーさん」
「あれで十分だろ?」
「彼方をジーっと見てたぞ。もっと紹介してやれば良かったのに」
「お前が余計に絡んでただろうが」
「フフ。それでどうするの、タカのこと覚えてないようだけど?」
「まぁな、八つくらいのガキの頃だから覚えてないのもしょうがねぇかって思ってる」
「そりゃそうだよ。タカだけだわ、そんなガキの頃から一途に思ってるなんてさ? 別荘地だっけ、知り合ったのって」
「ああ……別に、傍で顔を見れるだけで良かったんだ、最初は……」
俺の一方的な好意を受け入れてくれる嬉しさから結構好き勝手に誉に絡んでいったが、実際はその行為の意味さえも分かっていないのかもしれない。そう思う時はある。
それでも、愛おしさが溢れる。
ゆっくり俺を知ってもらって、誉のスピードで育てていきたいと思った想い。
そろそろ、言うべきか?
あの時、お前が俺をどんなに救ってくれたのかを。
あれから殆ど会う事がなかったが、父親の会社名簿を偶然に見て……お前を発見した。
俺は、一度だって誉を忘れたことはなかった。だから……。
「ヤベぇ、おれのファンがいる」
翔は大勢のファンが群がるのを嫌い、よく逃げて来る。風紀委員長の行動としては問題じゃないかと思うが……気持ちは分かるので追及はしていない。
1年前から比べると今は親衛隊から縮小してファンクラブになったが、やはりまだ油断しちゃいけねぇと思ってる。潰すことはないけど、誉には関わってほしくない本音では。
翔が見つけたらしい先に生徒が数人廊下に集まっているのが見えた。
「なにか、騒がしいな」
くるっと引き返そうとする翔を捕まえてその方向、風紀委員会室に足を向けた。その前に誰かが叫んだ。
「大原さん!!た、大変ですぅ!!」
「風紀委員長さまぁぁ!? い、いらっしゃった!」
「なに、、」嫌な予感がするにはナンだ。
「さ、刺されてるようなんです!! 1年生のコがっ!!」
「意識不明のようですっ」
俺は出入り口で野次馬になってる風紀委員会室に体を押し込むと、風紀の副委員長に抑えられて暴れている生徒と、床に血が数滴付着しているその傍で他の生徒に抱えられてる誉の姿を目に焼きつけた。
誉の腕から血液が流れていて、顔色は白く気を失っているようだった。
俺は即座に駆けつけ、とにかく誉を抱き寄せて抱きかかえた。
「どけっ!!」
煩わしい野次馬を怒鳴り廊下に出て保健室のある棟へ先を急いだ。
翔はすかさず風紀委員長の顔になり、俺に目線だけで知らせその場を仕切ることに専念してくれそうだ。
前期生徒会長だった俺は、神谷彼方を後釜に推薦した事で彼の相談役と言う呈の良い雑用係をしている。売り言葉に買い言葉で体の弱いカナを表舞台に出してしまった。
自分で蒔いた種ではあるんだが早く自立してほしいものだよ、まったく。
そして最近、珍しく翔も生徒会室に顔を出してはカナと俺ーーいや生徒会役員の邪魔をしている。
「お前は風紀委員長だろう。戻って仕事せい、仕事!」
風紀副委員長に任せっきりでいつもサボってるのは知っている。
根っからのめんどくさがりの翔が風紀委員長なんて不安だったが、就任してすぐにこの有様だ。
俺は一つ二つ溜息を吐いて、それでもカナの不器用ながらも真面目に書類に取り組んでいる姿を眺めながら、差し入れされた草加せんべいを頬張っているんだけどな。硬いが旨いわ、これ。
二人は初等部からの幼馴染で今では酸いも甘いも共に知っている悪友兼友人だ。
しかしやって来たことは滅茶苦茶ばかりだったが、泣き虫の癖に負けず嫌いのカナによって(半分は報復だな)、生徒会長の俺、風紀委員長の翔、まさしく肩の荷が重い役職を嵌めさせられたわけだが、俺は十分に任を全うしたと思うぞ?
早く相談役を解任して一生徒に戻りたいのが本音だ。自由きかねぇし……。
「ほい。仕事ご苦労さん」
ドンッと机に置かれた水滴が飛んだ煎茶。翔が珍しく気を使うと思ったらこれだ。
「もっと静かに置けよ……零れてるだろ」
「俺はボランティアで茶汲みしてんの。文句言うな爺ぃ」
「爺じゃねぇよ!お前もう巣に戻れ」
「ああ?」
「うるさい!!二人とも、出て行っていいよ」
その場で一瞬にして気圧が低く感じた。そろそろカナも独り立ちが近そうだな。
俺が生徒会長になった頃、慣れない仕事に外で喫煙しに一服なんてザラだったが、今は息抜きの散歩で少し室外に出ようかと思う程度になっている。
アイツがどこかでおかしな事をやらかして巻き込まれないか見回るのもちょっとした日課になってるんだが……。
アイツの話を横で歩く翔に持っていくと――
「今日の昼、やっと紹介はしてもらったが食っただけだったな。特製牛ステーキ旨かったわ。ごっそーさん」
「あれで十分だろ?」
「彼方をジーっと見てたぞ。もっと紹介してやれば良かったのに」
「お前が余計に絡んでただろうが」
「フフ。それでどうするの、タカのこと覚えてないようだけど?」
「まぁな、八つくらいのガキの頃だから覚えてないのもしょうがねぇかって思ってる」
「そりゃそうだよ。タカだけだわ、そんなガキの頃から一途に思ってるなんてさ? 別荘地だっけ、知り合ったのって」
「ああ……別に、傍で顔を見れるだけで良かったんだ、最初は……」
俺の一方的な好意を受け入れてくれる嬉しさから結構好き勝手に誉に絡んでいったが、実際はその行為の意味さえも分かっていないのかもしれない。そう思う時はある。
それでも、愛おしさが溢れる。
ゆっくり俺を知ってもらって、誉のスピードで育てていきたいと思った想い。
そろそろ、言うべきか?
あの時、お前が俺をどんなに救ってくれたのかを。
あれから殆ど会う事がなかったが、父親の会社名簿を偶然に見て……お前を発見した。
俺は、一度だって誉を忘れたことはなかった。だから……。
「ヤベぇ、おれのファンがいる」
翔は大勢のファンが群がるのを嫌い、よく逃げて来る。風紀委員長の行動としては問題じゃないかと思うが……気持ちは分かるので追及はしていない。
1年前から比べると今は親衛隊から縮小してファンクラブになったが、やはりまだ油断しちゃいけねぇと思ってる。潰すことはないけど、誉には関わってほしくない本音では。
翔が見つけたらしい先に生徒が数人廊下に集まっているのが見えた。
「なにか、騒がしいな」
くるっと引き返そうとする翔を捕まえてその方向、風紀委員会室に足を向けた。その前に誰かが叫んだ。
「大原さん!!た、大変ですぅ!!」
「風紀委員長さまぁぁ!? い、いらっしゃった!」
「なに、、」嫌な予感がするにはナンだ。
「さ、刺されてるようなんです!! 1年生のコがっ!!」
「意識不明のようですっ」
俺は出入り口で野次馬になってる風紀委員会室に体を押し込むと、風紀の副委員長に抑えられて暴れている生徒と、床に血が数滴付着しているその傍で他の生徒に抱えられてる誉の姿を目に焼きつけた。
誉の腕から血液が流れていて、顔色は白く気を失っているようだった。
俺は即座に駆けつけ、とにかく誉を抱き寄せて抱きかかえた。
「どけっ!!」
煩わしい野次馬を怒鳴り廊下に出て保健室のある棟へ先を急いだ。
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