努力の方向性

鈴ノ本 正秋

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【第一章】 中学サッカー部編

【第一章】 第十三話

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息が整わない。脹脛の筋肉が痙攣している。視界が歪む。
俺たちは最初の七分以外の二十三分間、試合再開の時以外のほとんどでボールに触れることができなかった。確かに俺たちは急造のチームで、相手の先輩たちは何カ月も一緒に練習を重ねている。だが、ここまで差が出るか?

頭にかけていたタオルの隙間から先輩たちの方を見た。軽く汗をかいている程度で涼しい顔でドリンクを飲んでいる。まるでランニングを軽くしただけのようであった。
反対に俺たち一年生は肩を落とし、脇腹を抑え、息が乱れている。
同じサッカーコートで紅白戦をしていたとは思えない。それほどの違いだった。

「さぁて、どう攻略するかー」

渡辺は息を整え、体を逸らした後、そう言った。
その目はキラキラと自信に満ち溢れ、どう点数を取るかを考えている。まるでサッカー始めたての子どものように。

そして、渡辺は俺の方をちらりと向き、顎に手を当てた。

「先輩たちの攻撃は若林が止めてくれるだろうし、あとはどう攻めるかだよな」

どうしてだよ。俺は紅白戦前にあれだけ息まいておいて、先輩に三点も許したんだぞ。それなのに何で俺がまだ止められると思っているんだよ。
まだ俺たちは力不足で、このハーフタイムの短い時間の中で解決できるわけじゃない。
それなのにどうして、俺が先輩を止められる前提なんだよ。

思ったことを全て渡辺にぶつけたかったが、言葉にはしなかった。
ここで全てを吐き出したら、本当に負けたことになってしまう。

「間中はどう攻めれば良いと思う?」

「……僕?」

少し嫌な顔をした間中が、少し考えた後、答えた。

「…………攻撃と守備関係なく全体を通して思ったのが、両サイドハーフの亮と小西君が大きく開きすぎているじゃないかなって。だから、中央にスペースができて、簡単に中央突破されていたと思う」

「瑞希、俺そんな開いていたか?」

「うん。亮はおそらくこの前の一年生同士の紅白戦で、サイドに開いてアシストしたという結果を残せたせいで、そのイメージが脳裏に焼き付いてしまったんだと思う。あの時のことは一切忘れるべきだと思う」

「かなり重い正論パンチ……だ」

と、波多野は腹を抑えつつ、死んだふりをした・
だが、間中はそれを無視して、話を続ける。

「それで両サイドの二人をなるべく広がらずにスペースを消して、中央突破をされることだけは避けるようにしよう。そうしたら、おそらく先輩たちは体格を生かした空中戦を挑んでくると思う」

「空中戦はどうする?俺が下がった方がいいか?そうしたら守備の平均身長も少しは上がるだろ」

渡辺の提案に間中は首を横に振った。

「渡辺君が下がったところで眉唾だと思う。だから…………」

そこから間中が思いついた戦術が語られていった。常識に囚われないような斬新な戦術であったが、一方で合理性もしっかりあった。
だが、その戦術をしっかりと聞いていたが、本来ならその立場は俺がやりたかった。悔しい思いを奥歯で噛みしめた。
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