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POSITION・4 ヴィラ
ヴィラ 1
しおりを挟む骨を蝕む激しい痛みが、続いて、いた。
体の隅々まで痛め付けるその苦痛は、叫びを上げるのも厭わなくなるほどに、絶え間無い激痛と、恐怖をもたらした。
「……サルヴァトーレ……は?」
フィンは、その人物だけを探して回り、通りかかった使用人の一人を、引き留めた。
シシリーに建つ邸宅とは違い、ローマに建つこの別宅は、まだ、ここの主がどこにいるか、フィンに教えてはくれないのだ。
「旦那様はお出掛けになりましたが」
「……出掛けた?」
その使用人の言葉に、フィンは碧い瞳を見開いた。
「はい。夕食までにはお戻りになると伺っております」
夕食……。まだ随分と時間が、ある。それまで、この苦しみに耐えていることが出来る、というのだろうか。
「――フィン様?」
黙り込むフィンの様子に、使用人が首を傾げた。
「クス……リ……」
「あの――」
使用人の声は、フィンの耳には届かなかった。
凍えるように背中を丸め、広い廊下を歩き出す。
苦痛が体を駆け巡っていた。
額には汗が吹き出している。
それでも、その苦しさを押さえ付け、フィンは、半ば壁に身を擦り付けるようにして、廊下を、進んだ。
その先に、ダーク・スーツに身を包む男が、姿を見せた。サルヴァトーレの部下の一人である。
フィンは、その男の元へと足を向けた。
「彼は――サルヴァトーレは……! 彼も帰って来たのか……っ!」
と、すがりつくようにして、喉を開く。
「――フィン様?」
男は、そのフィンの様子を見て、首を傾げた。
「彼は……」
「まだお戻りではありませんが」
戻って、いない……。
この屋敷に、薬をくれる人間はいないのだ。――いや、本当にそうなのだろうか。薬を持っている人間なら、この屋敷にも、何人も、いる、のではないか。
「薬……。薬が欲しいんだ……。持ってるだろ? 君も薬を――っ」
フィンは男の上着を握り締め、壊れそうな瞳を持ち上げた。
「フィン様――」
「くれよ……。預かってるだろ……? 彼から薬を……」
「いえ。あなたのことには干渉しないように言われておりますので」
「……」
「では、私はこれで」
男はそう言って、廊下の先へと翻って行った。
それを見過ごしてしまえば良かった、というのだろうか。
この狂いそうになる激痛に、じっと耐えていれば良かったのだと。
「くれたら……薬をくれたら……何でもする……。何をしても構わない……」
「――」
フィンの言葉に、男の足が、ピタリ、と止まった。
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