ピエタ【完結】

竹比古

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POSITION・1 シチリア

POSITION・CHANGE

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 ニューヨーク――。
 あらゆる人種を受け入れ、アメリカの中の『無国籍の街』として活動する冷酷な大都会。
 その、パーク街とレキシントン街を四九から五〇丁目にかけて一ブロックを占める、ニューヨークを代表する高級ホテルの一室で、最高幹部会コンミッシューネが開かれて、いた。
 ニューヨーク暗黒街を牛耳る『ガンビーノ・ファミリー』の面々である。
 正面の大きな席に、ドン.ゴッティ。その脇にナンバー.2たる彼の息子と、反対側に相談役コンシリオーリ。両側に十四人の幹部連が七人ずつ向かい合ってズラリと並び、今日の会議を進めている。
 マフィアの揉め事はもちろん、殺人一つ行うにも、必ずこの最高幹部会コンミッシューネにかけ、その裁定に従わなければならないのだ。
 アメリカのヘロイン都市ニューヨークには、五つの大ファミリーが存在するが、その中でもガンビーノ・ファミリーは強大な勢力を持つ一家ファミリーだった。
 十九世紀末から、二〇世紀初頭にかけて、大量のイタリア移民がこの大陸に押し寄せ、彼らはニューヨークなどの大都会のスラムに固まって住み、イタリア人のまま周りに溶け込むことも出来ず、『デーゴ(イタリア系移民の蔑称)』と呼ばれ、迫害を受けながら暮らしていた。英語も出来ず、教育も受けず、老朽化し、衛生設備の悪いイースト・サイドのスラム街に――。いつからかそこはリトル・イタリーと呼ばれるようになり、その猛威を奮い始めた。
 だが、今はチャイナ・タウンに侵食され、そのリトル・イタリーもほんのわずかしか残っていない。それでも、暗黒街を牛耳るファミリーの勢力は絶大だったのだ。
「インツェリッロの若造か……」
 幹部連の報告を聞き、ドン.ゴッティは厳しい顔付きで大きな椅子の背に凭れ掛かった。
「これ以上の『諸場代タンジェンテ』は出せない、と大きな口を叩いております」
 幹部の一人が淡々と言う。
「礼儀を知らん若造だ。姻戚関係にあるとはいえ、我々コルレオーネ系ファミリーと、インツェリッロやバダラメンティ、ボンターテの『穏健派』とは反りが合わん」
「いかがいたしましょう?」
「本国へ監視を付けておけ。若造とはいえ、相手はインツェリッロだ。慎重に事を運ばんとな」
「はっ、ドン.ゴッティ」


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