魔窟降臨伝【完結】

竹比古

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 クスリ、と笑みが零れ落ちた。少年が零した笑みである。
「面白いだろ? 人間っていうのは、どんなに悍ましいものでも見たがるんだよ。多分、善良で美しいものより、非道で悍ましいものの方が、人間の関心を惹くんじゃないかな。道端に咲いてる花には目を向けない人間でも、繁華街での殺し合いには、興味津々に目を向ける。――あんたもその一人だろ?」
 と、大腿部からペニスの方へと、ネイルを向ける。
「ほら、見えるだろ? 赤い筋が浮かび上がって行く……。もう少し深く食い込ませると、肉がパックリと口を開く。――動いちゃダメだよ。そんなことはしたくないんだ。ゆっくり楽しめないからね。それに、ぼくは性格に問題があるから、気に入らないことがあったりすると、つい、うっかり殺してしまいかねない。さっきみたいに、ね。そんなの、つまらないだろ?」
 ネイルが、縮れた茂みの上まで、食い込んだ。
 男は体を捩るようにしながら、その苦痛に悶えている。涎を垂らし、涙を零し、叫びすらも上げられないままに。
 その様子を眺める少年の面貌の、何と狂おしいことであろう。
 銀色のネイルは、常に一定の深さと速度で、ジリジリと男の神経をいたぶっている。
「ほら、次がペニスだよ。可哀想に。こんなに小さくなってる。ぼくのなんか、今にも弾けそうなほどに、張り詰めてるのに」
 指先で先端の雫を搦め捕り、少年は、縮こまっている男のペニスへ、銀色のネイルを走らせた。
「ひっ。やめてくれ……っ! もう――」
「だめだよ。あんたはもうじき出血多量で死ぬんだから、その前に楽しめるだけ楽しんでおかなきゃならないだろ。――ほら、もう唇だって紫色に変わり始めてるじゃないか。血圧だって急激に下がってるだろうし、そのショックですぐに死ぬことは目に見えてるんだ」
 残酷な少年の指先は、鋭利な両刃のネイル・ナイフと共に、男のペニスの根元から、くびれの部分まで走っていた。
 狂っている――。そう。彼は確かに狂っている。
 だが、だからこそ美しいのだとは、言えないだろうか。
 そして、この世に正気の人間が何人いるというのだ。
 悪いことだと知りながら、表と裏の顔を使い分け、私腹を肥やしている人間は、いくらでもいるのではないか。
 ネイルはくびれの部分で動きを止め、そこから垂直に、ベッドまで刃を貫通させた。
「ひっ。うああああ――――っ!」
 形の違う激痛に、やっと声を伴った叫びが上がった。
 少年は、その叫びを楽しみながら、男のペニスの先端に向けて、突き刺したネイルを横に倒した。
 ペニスの先が、二つに割れる。
 また、男の悲鳴が上がった。
 血の泡が、裂けた口から零れている。
 少年は、さらに半分にペニスを切り裂き、四片の肉に切り分けた。
 醜く悍ましい肉の花が、赤い花びらを毒々しく、開く。
 少年が精液を放つのと、男が狂った笑いを上げるのは、ほぼ同時のことであった……。



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