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番外編 プレップスクール編
プレップスクール 4
しおりを挟むパーティが終わっても、アンドルゥはすぐに部屋へ戻れたわけではなく、しばらくウォリック伯の一服に付き合い、アルコールも入れ、今日の顔触れの話しをしながら、やっと夜中近くに開放された。
部屋には、先にパーティを後にして、シャワーを済ませた司がいる。――いや、司の他に、もう一人。
「何でいるんだ、アレックス?」
アンドルゥは途端に不機嫌に顔を変え、司と二人で部屋にいる、兄のアレックスを睨みつけた。兄といっても、グレヴィルの家で育ったアンドルゥと、ソアーの家で育ったアレックスとでは、兄弟というほどの付き合いもなく、親しく話をするのも、まだ二度目だ。それなのに、シャワーを終えたばかりの司と部屋にいるなど……。
もちろん、司は、アンドルゥのものではないのだが。
「随分な言われようだな。エリックももう寝ているし、わざわざ起こして連れ帰るのもなんだから、今日は泊めてもらうことにしたんだ」
肩を竦めて、アレックスは言った。
「なら、客室を使え。ここは僕の部屋だ」
要するに、司と二人でいることが気に入らないのである。パーティの間中、アンドルゥはウォリック伯と共に客人の相手を務め、司と一緒にいる時間もなかったのだから。
「ぼくが入ってもいいって言ったんだよ。君が戻って来るまでに寝てしまいそうだったから、話し相手に」
司が言った。
その言葉通り、二人はただ座って、ウイスキーを手に、話をしているだけだった。
「寝ていても良かったんだ。疲れているんだから……」
アンドルゥは、アレックスに対する態度とは正反対に、慈しむように、司の湿った髪に口づけて、その華奢な肩を抱きしめた。
「えーと、僕もいるんだけど」
居心地悪そうに、アレックスは言った。
「まだいたのか」
無愛想な言葉が返って来る。
そういう奴なのだ。
「アンディ――」
少し咎めるような言葉の後に、
「階とエリックを見てくれば良かったんだ。二人で仲良く寝ていた。遊び相手が出来て、楽しかったんだろう」
司が言うと、
「二人で、って――。あの二人は兄弟じゃなく従兄弟で、結婚も出来る立場なのに、一緒に? そんなことを許すなんて――」
「かたいことばっかり言うなよ。まだ五つと七つの子供だ。桂もいるし、何をするって言うんだ?」
「……。司、階は――」
「いいじゃないか、階がそうしたいのなら、そうすれば。エリックは優しそうないい子だし、将来そうなっても――。ああ、そういえば、エリックと馬に乗りたいと言っていたから、そうすればいい、と言っておいた」
「司――っ! 階が怪我をしたら、一体どうするつもりで――」
「君がいるだろ。子供なんだから、少しぐらい怪我をするさ」
「……」
二人の会話は、教育方針の違う夫婦の会話のようで、アレックスには、なぜ二人が結婚してしまわないのかの方が、疑問だった。
もちろん、それには理由があり、司が階の好きにさせようとするのも、司自身が階と同じ〈XX〉であるためであり、アンドルゥも二人の性を知っているから、必要以上につい心配をしてしまうのだ。もちろん、そんな事情を知らないアレックスには、いつまで経っても解けない疑問でもあったのだが。
確かに、オックスフォードの経営経済学部を卒業して、医学部に入り直したアンドルゥはまだ学生で、そんな立場で結婚できない、とでも言われれば、納得するしかないのだろうが。
「馬なら、僕も君も子供の頃から乗ってたんだし、心配するなよ。エリックの馬はまだ小さくて、気性もいい」
アレックスは、その場の雰囲気を取りなすように、二人の会話に口を挟んだ。
「――実際に目で見てからだ」
そう言っても、馬場に行ってしまえば、もう許したも同じことになってしまうだろう。馬を目の前にして、乗らずに見ているだけで済むとは思えないのだから。
アンドルゥは、アレックスを睨みつけるようにして、司の隣に腰を下ろした。
「イヴに三人で飲むなんて……」
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