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十七夜 憑き物の巣
十七夜 憑き物の巣 5
しおりを挟むどうやら、話を聞くうちに解って来たことなのだが……。
「ええと、舜、それって魔物って言うより、単なるゲーム依存症のような気が……」
真綾の話を聞き終えて、デューイは舜の耳の中で声を伝えた。発声器官のない灰の体ではあるが、鼓膜を震わせることで、言葉を伝えることが出来るのである。
「ゲーム依存症?」
舜が声に出して問い返すと、
「そんな生易しいものじゃないわ! あれはもう何かに取り憑かれているとしか思えない!」
怒りと苛立ちを増幅させて、真綾が言った。
恋人との約束もすっぽかし、朝から晩までゲームをしているなど、正気の沙汰ではないのだ、と彼女は言う。
だが、デューイに言わせれば、それはもう彼女への愛情が萎えかけているからで、ゲームよりも強い愛があれば、決してすっぽかしたりはしない、と思うのだが……。
少なくともデューイなら、舜との約束を蔑にはしない。殺されたって、這ってでも行く。
もちろん、舜は迷惑がるだろうが……。
これも愛情の(種類の)差、所以である。
「わかるでしょ? 祐樹はあのゲームをするまで、あんな風に他のことに無関心になるようなことはなかったの。普通じゃないの! 正気に戻して欲しいの!」
――そう言われても……。
「舜、これは絶対魔物じゃないよ。ゲームを壊した方が早い、ゲーム依存だって」
困り果てて、デューイは舜の耳に言葉を伝えた。
すると――。
「なんだ、壊せばいいのか。それだけで一千元なら楽勝だ」
……こういう少年なのである。
「他人のモノを壊したら、器物損壊で訴えられて弁償させられた上に、慰謝料だって取られるかも知れない。アメリカほどの訴訟大国じゃなくても、ここも法治国家なんだから、警察に被害届くらいは出されるって」
さすがに元人間だっただけあって、それくらいのことはすぐに想定できるのだが、世間の一般常識を知らない舜は、と言えば、
「オレ、この国の部外者だし、訴えられてもいいけど」
この気楽さである。
無論、舜が言うように、この国だけではなく、人間社会全体の部外者であるのだ、彼らの一族は。
「ダメだって。依頼した彼女にだって迷惑がかかるし、黄帝様だって、そんなこと……」
と、二人がコソコソと話し合っていると――と言っても、デューイの姿が見えない真綾には、舜の中国語での独り言でしかあり得ないのだが――、
「何、独りでブツブツ言ってるの? 退治してくれるの? してくれないの?」
もはや限界の心理に達していたらしい真綾は、引くつもりはないらしい。
そうなるとデューイも、
「取り敢えず、どんな状態なのか、確かめてみたらどうかな……?」
と、折衷案を持ち出すしかない。
もちろん、それが魔物の仕業でないことは、解りきっていたのだが……。
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