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一夜 聚首歓宴(しゅうしゅかんえん)の盃
一夜 聚首歓宴の盃 16
しおりを挟む喉が張り付くほどに、凄まじい血臭が漂っている。
黒曜石の床は、余すところなく血の清めを受け、仄かに灯る蝋燭の明かりの下、一人の青年が横たわっている。
全裸である。
栗色の髪も血を含み、床に大きく広がっている。軽くウェーブを描くその髪は、赤い波のようにも、見えた。
ピチャ、と血の上を歩くような音が、した。
青年がうっすらと、瞳を開く。
「貴妃様……」
果たしてその言葉は、声になっていたであろうか。
それは、青年の言葉であった。
首筋には二つの傷痕が、ある。縁が盛り上がった、ほぼ丸い形の、小さな傷だ。
部屋は、広い。広いが、何も置かれてはいない。
「異国の若者よ。そなたは殺さぬ。まだ何か使い道があるやも知れぬからな」
貴妃の赤く淫らな舌が、青年の胸から腰へと滑り降りた。
ホテルで舜に気絶させられた青年、デューイである。
舌先が、彼の一番敏感な部分を、舐め上げる。
腰が跳ね、萎えていた欲望の中心が、育ち始めた。
赤い唇が、それを、含む。喉の奥へと飲み込み、吸い付きながら、引き戻す。
また、さっきよりも、大きくなった。硬くもなっている。
その裏側を、舌が、責める。
「く……っ」
声が、零れた。その声を楽しむように、張り詰めた先端を、舌が輪を描いて、なぞって行く。
「あ……う……」
それは、どれほどの快楽だったのであろうか。数秒としない内に、デューイは短く呻いて、達していた。
白い喉が、ゴクリ、と動き、迸る精液を嚥下する。
デューイの体は、その余韻に脈打っていた。
「……そなたに解るか、この喉の渇きが。どれほど潤しても、すぐに渇いていくこの苦しみが……。その昔、わらわを憫れんだ男がいた。そして、わらわを眠りにつかせた。だが、目醒めたのじゃ。黄色い大地の底にまで流れ込んで来た血の匂いに、血の力に……。そして、見つけた。わらわと同じように封印されていた偉大なる帝王を……。その帝王を目醒めさせることが出来た今、あと必要なのは、尽きることのない血……。三五〇年前、ほんの一足違いで持ち去られてしまった、あの盃。そして、作り方も解らぬ《朱珠の実》……。それがもうじき手に入るのじゃ。――我がしもべ、デューイよ。伝令となれ、導となれ、我と、帝王のために……」
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