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Karte.7 吸血鬼の可不可-血
吸血鬼の可不可-血 2
しおりを挟む「今日は、あの日本人だけで充分だな」
勝手に日本人と決めつけ、上機嫌でシャワーを浴びていると、バス・ルームのドアが、カチャ、っと開いた。――いや、開いたが、シャワーの音が跳ね返る中、少年の耳には届かなかった。もちろん、青年が入って来る気配にも、気づかなかった。
一歩一歩、足音が近づき、鏡の前で、ピタリ、と止まる。
洗面台の上には、カミソリが、あった。
青年の瞳が見つめているのも、鏡ではなく、そのカミソリの方であっただろうか。
その時やっと、少年は青年の存在に気がついた。――いや、正確には、洗面台の上の石鹸を取ろうとした時、気がついた。
もちろん、そこで青年の姿を見つけても、驚きはしない。一緒に風呂に入って、体を撫で回したがる『客』は、多いのだ。
驚いた、とすれば、青年の体躯の見事さの方であっただろう。バス・ルームでは当然のことだが、青年は全裸になっている。溜め息が零れるほどに鍛え抜かれた肉体である。厚い胸板も、引き締まった足腰も、ショー・モデルのような繊細さを残しながら、日本人のイメージとは掛け離れた体格を形成している。
「随分、鍛えてるんだな……。まあ、ビールっ腹のしけた野郎と比べる積もりはないけどさ。――オレ、洗ってやってもいいぜ。金、たくさんもらったし」
少年は、逞しい肉体に見惚れながら、熱く言った。
青年の手が、少年の腕をつかんで、引き寄せる。
そのまま、唇が重なった。
「ん……っ」
舌が巧みに絡み付き、疼く体をさらに昂める。
少年は、その舌の動きに、身を任せた。入り込んで来る舌に吸い付き、口の中を犯されながら、青年の見事な体躯に指を這わせる。
腰から下肢の狭間に指を伸ばすと、逞しいモノに行き当たった。それを手に取り、指と動きで硬く育てる。
青年の指も、少年の官能を熱く昂めた。前後に扱き立てては、敏感な先端の滴を搦める。
激しい波が、体の一点に集中した。
「く……っ。も……ムリ……。我慢できな……」
長い指が、官能を果てへと導いた。
「ああ――っ!」
シャワーの飛沫が降り注ぐ中、少年は、白い喉を大きく反らした。
青年の双眸が、その細く美しい喉に、釘付けに、なる。
大きく脈打ち、荒い呼吸を繰り返す少年の喉に、青年は、舌を立てて愛撫を注いだ。舌先を滑らせ、朱い華を咲かせるように、反り返る喉に、強く、吸い付く。
「あ……う……」
まだ苦しげな、それでも甘い吐息が、零れ、落ちる。
青年は、少年の呼吸が収まるのを待ち、それから、自らの逞しさを、少年の後ろの蕾に突き立てた。
「くぅ……っ。あ、あ……っ!」
腰を動かす度に、少年の唇から、熱い喘ぎが、洩れて、零れる。まだ線の細い少年らしい肢体が、美しい桜色に染まって行く。
「きれいな色だ……」
その肌を愛でるように、青年は言った。
「あ……はあ……っ。もっと……もっと、責め……う、あっ……!」
絶え間なく押し寄せる官能の波に、少年の肌は、一層、美しい色に染まっていた。
青年は、闇夜のような黒い瞳を薄く細め、洗面台へと手を伸ばした。
「君の美しさは、私の欲望をこれ以上はなくかき立てる……。熱い血を巡らせる白い肌も、官能に酔う淫らな肉体も……。君の血は、きっと私を満足させてくれるだろう……」
刹那、銀色の一線が閃いた。
少年の瞳が、凍りつく。
それは、ウィンディ・シティの異名に相応しい、酷寒のシカゴを見るような瞳であった……。
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参考文献
ナルシズム 中西信男著 講談社刊 自閉症 玉井収介著 講談社刊 異常の構造 木村敏著 講談社刊 心理テスト 岡堂 哲雄著 精神病理から見る現代思想 小林敏明著
ナルシズム 中西信男著 講談社刊 自閉症 玉井収介著 講談社刊 異常の構造 木村敏著 講談社刊 心理テスト 岡堂 哲雄著 精神病理から見る現代思想 小林敏明著
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